「何もない」を武器に、鳥取の山奥で県人口を超える村づくりに挑む

「何もない」を武器に、鳥取の山奥で県人口を超える村づくりに挑む

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/01/16
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日本一人口の少ない県に、県外どころか海外からも客が詰めかける観光施設があるのをご存じだろうか。マクアケ創業者・中山亮太郎の好評連載第14回。

盛り上がっている地域には、必ずと言ってよいほど、強いゴールゲッターとなる企業や団体が存在する。今回は、地元外から多くの人に来てもらいたいと思っている地域の方々への模範例として、鳥取県八頭郡八頭町にある「大江ノ郷自然牧場」を取り上げ、そこから地域活性のヒントを考えたいと思う。

大江ノ郷自然牧場は、山中にあるにもかかわらず、(新型コロナ禍前の数字ではあるが)年間30万人が来場する人気スポットである。鳥取県の人口が約55万人であることを考えると、一つの施設の集客としては突出した数字だろう。

創業者の小原利一郎は、もともとは養鶏業一本で事業を始めた。広大な自然を生かした平飼い養鶏を実践し、都会にはない卵の魅力を打ち出し、徐々に事業を伸ばしていく。そのなかで、「田舎であることはむしろ強みになる」と気づいたという。

日本一人口の少ない県かもしれないが、自分の故郷の町に県内外の人を呼び込み、田舎のよさを体験してもらいたいという強い思いを抱いていた小原氏。里山の自然を舞台に、人が来たくなる取り組みを開始した。

いくつものトライアンドエラーの末に行き着いたのが、パンケーキだ。ちょうど日本でパンケーキブームが勃興し、一大市場になる予感があった。加えてそのころ、里山や田園地帯のレストランにわざわざ出かける人が増えていた。こうした世の中のトレンドを感じとり、自社で培ってきた鶏卵技術と自然あふれるロケーションは武器になる、と捉えたのだ。

超田舎にあるモダンなレストラン施設と、超田舎で取れるとっておきの卵を原料にした、インスタグラムにもとても映えるパンケーキは大いに話題となり、気がつけば人気スポットになっていたという。

そこに至るまで、順風満帆だったわけではない。鶏と触れ合うサービスなども実施したが、その矢先に国内で鳥インフルエンザ問題が起きるなど、抗えない事情による頓挫も経験してきた。ただ、成功に向けての普遍の要素がそこにはあった。私が感じたのは「リスク余力は満額使う」という姿勢だ。

思考停止せずに打席数を増やす
基盤となる鶏卵業が成長しても思考停止することなく、しっかりと世の中のトレンドも分析しながら、投資余力が出れば新しいことに投資をし、バッターボックスでの打席数を増やした。当然ながら失敗もある。だが、そのなかで見事、ヒットにつながる道を見つけている。事業はひとつうまくいくと、ついつい現状に甘んじ停滞してしまう。知らずにゆでガエルのごとく衰退に陥るということは、地方も都会も同様に往々にしてあることだが、しっかりスイングをし続けたという話には私も感銘を受けた。

また、小原氏の地元に対するビジョンが、同じ思いを抱く周りの人をワクワクさせたことも大きいだろう。「大江ノ郷自然牧場を、県の人口を超える人数が訪れる場にしたい。そうすれば、この町が地域活性の大きなハブになる」と目の前で目標を語ってくれたが、このビジョンに魅力を感じる人は多い。小原氏は、行政や民間企業も巻き込んで味方を増やし、廃校をホテルに改装するなど自社だけでは難しい総合的な体験構築を仕掛けることにも成功している。

日本中至る所で、地域を盛り上げたいという動きがある。どの地域もヒットコンテンツを模索しており、なかでも「自然を活かす」という発想は多くの地域で耳にする。最初は小さくても取れるリスク余力を満額使い続け、ビジョンを諦めずに発信し、応援者を見つける大江ノ郷自然牧場の姿勢は、全国の地方を勇気づける事例だと思う。

なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。

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