「私にも問題があるから強くは言えない」......“セクハラホイホイ女子”の悲痛な日常

「私にも問題があるから強くは言えない」......“セクハラホイホイ女子”の悲痛な日常

  • よみタイ
  • 更新日:2022/01/15
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「私にも問題があるから強くは言えない」……“セクハラホイホイ女子”の悲痛な日常

セフレ、二股、ヒモ、ホス狂い……「ダメ恋」をやめられないのは、私に男を見る目がないから!?
『私たちは生きづらさを抱えている』『発達障害グレーゾーン』などの著書があるライターの姫野桂さんが、発達障害女性たちの恋愛事情に迫るルポ連載。
前回は、風俗嬢として働くカナコさん(仮名)のお話を伺いました。
今回は、行く先行く先でセクハラに遭ってしまうマユミさん(仮名)が登場します。

パートナーの男性に付き添われるよう、約束の時間よりも30分ほど遅れてやって来たのはマユミさん(31歳・仮名)。「イレギュラーなことが起こると、こうやって遅刻しちゃうんです」と申し訳なさそうに遅刻を謝罪してきた。
マユミさんは目鼻立ちがしっかりとした華やかな顔立ちで、一般的には美人と言われるタイプのはずだが、話し方や目線の動かし方などに、どこか自信のなさが漂っている。この自信のなさそうな雰囲気は、以前、とある占い師さんからじーっと見つめられ「この自信のなさはどこから来るんだろう」と首を傾げられた私自身と重なった。私の場合はスクールカースト底辺であったことや、過干渉な親に「次は何を言われるんだろう」という不安から自己肯定感が下がり、自信をなくしてしまったと分析しているのだが、マユミさんの自信のなさはどこから来ているのかが気になった。
マユミさんが発達障害の診断を受けたのは、新卒で入社した企業で働き始めてしばらく経った頃。うつ病になってしまい休職し、クリニックで調べてもらったところ、発達障害の一種であるADHDとASDが見つかった。しかし、幼少期から就職するまで、特に発達障害の特性を自覚したことはなかったという。

「小さい頃から忘れ物や遅刻はよくしていましたが、成績が良かったので何も言われなかったんです。ただ、忘れ物をして教室の後ろに立たされているとき、他に忘れ物をして立っているのは家庭環境に何かしら問題がある子が多く、そんな中、特に家庭環境には問題のない私が立っているのは不思議な感覚がしました。小中高と、発達障害の特性は隠れてきたのですが、大学に入って一人暮らしを始めたら、授業に出られない日が続いて1年留年してしまいました。このときは、一人暮らしの解放感からのただの怠慢だと思っていましたが、今思うと、このときすでにうつ病の兆候が出ていたのかもしれません」

忘れ物や遅刻が多いのに成績は良かったという当事者に以前何人か会ったことがある。そのうちの一人はそのときの授業内容が面白くなくて、より難しい教科書の先のページを読んだり、居眠りしていたところ、生活態度が悪いのに成績が良いことが担任の先生からすると面白くなく、そっけない態度を取られていたそうだ。私も小学5年生の頃、宿題をやったのに学校に持って行くのを忘れることがたびたびあり、いわゆる「勉強ができない子たち」と一緒に床に正座をさせられたり、げんこつをくらったりしていた。マユミさんの場合、担任から理不尽な扱いを受けることはなかったが、そのせいで特性に気づくのが遅れてしまった。
「大人の発達障害」が注目されるようになった理由の一つに、学生時代は親と同居しており、遅刻や忘れ物などの日常生活の困りごとをサポートしてもらえる環境にあり、勉強ができてさえいれば、あまり親や先生が問題視しないということがあげられる。就職してから初めて、親のサポートのない状態で暮らしたり、仕事を行うことになり、そこで発達障害の問題点が顕在化するというパターンが多いのだ。
マユミさんは仕事内容についてはあまり触れなかった。よくよく聞いてみると、新卒で入った会社はブラック企業で長時間勤務が当たり前だったため、仕事の効率自体は良くなかったものの、残業を重ねればこなせたので、特に自分だけができないとは思わなかったそうだ。しかし、やはり長時間勤務は体に堪える。この長時間勤務とセクハラが重なり、うつ病を発症してしまった。もともと苦手だった事務作業が、うつ病になってから最初にできなくなった。

「セクハラホイホイ」の私

大人になってからのマユミさんの困りごとは、どこで働いてもセクハラを受けることだという。

「アパレルショップでアルバイトをしていたことがあるのですが、私だけ社長に呼び出されてお茶のお供をさせられたり、容姿を褒められたり、ぎゅっと手を握られたりしていました。当時は、他のみんなも呼び出されてお茶を飲んでいるのかなとか、アパレル業だから容姿や身に付けているものを褒められるのかなと思っていましたが、最終的には夜道で抱きつかれてしまいました……。ここで初めて自分だけがセクハラを受けていることに気づいたんです」

抱きつかれるまでセクハラに気づかなかったマユミさん。他にも彼女のセクハラエピソードはてんこ盛りだった。現在は英会話講師とホステスで生計を立てているマユミさんだが、新卒で入った会社でも今の職場でもセクハラとパワハラに遭っていた。

「新卒で入った会社は学歴不問で基本、顔採用のベンチャー企業でした。私は高学歴が武器だったのですが、それが通用しなくて……。他の同期には元モデルの綺麗な人や中卒の人もいました。そんな中で私はいじられキャラになってしまい、飲み会でもいじられて盛り上げる役割になっていました。そしてある日の飲み会で、いじられキャラの男性社員を指差しながら社長が『君、この男性社員と温泉旅行に行くならいくらで行ける? 10万? 100万?』と聞かれ、困りながら『100万……?』と答えたら、その男性社員から『お前はそんなに高い女なのかよ!』と言われて……その翌日に休職届を出して、そのまま会社を辞めました。まぁ、私と一緒にいじられていた男性社員もかわいそうなのですが」

あまりにも無茶苦茶な扱いに絶句してしまった。これだけセクハラに遭っていれば「次はどんな目に遭うのだろう」とおどおどしてしまってもおかしくない。これは私の体験談からの推測だが、セクハラやモラハラをする人は、反撃しなさそうな人を選んでやっている。ちょっと強気そうな女性や「それ、セクハラですよ」とはっきり言う女性には絶対に手を出さない。マユミさんは、そうした男性から目をつけられているとしか思えない。

今働いている職場でのパワハラ・セクハラについても話してくれた。

「今働いている英会話教室で、上司から授業風景をじーっと見られて、授業後ねちねちと英語に関する知識を一時間半くらい説教されたことがありました。あと、別の上司から目をつけられて、向こうは恋愛しているつもりのようだったんですが、私にとってはセクハラだったんです。喫煙室に呼び出されて抱きつかれたり、退勤後『一緒に帰ろう』と言われて帰ったら駅のホームで抱きしめられたり。拒否できなかった私も悪いと思うのですが、この上司がシフトを入れてくれるので、断ったら授業を減らされてしまうかもと思って……。私は今の仕事にやりがいとか熱意を持っているので、辞めさせられたくなくて……。それで、私がこの人のセフレになれば仕事を失わないで済むと思い、一緒にホテルに行ってしまいました」

結局、上司と性的関係になってしまったことはマユミさんが別の上司に相談したことからおおごととなって本部に伝わった。上司は謹慎処分となったが、マユミさんのシフトが減らされることはなかった。マユミさんは「私も悪いと思うのですが…」と前置きしていたが、自分のシフトが減らされる可能性のある相手から関係を持ちかけられるのは明らかにセクハラであり、マユミさんは悪くない。「私が応じれば済む」と相手の要求を受け入れてしまうことも、発達障害女子の「私が間違っている」「私が悪いから」という歪んだ自己評価が生んでしまう間違った対応だ。

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イラスト:にくまん子

肉を切らせて骨を断つ「セクハラ封じ戦法」

マユミさんは英会話教室と掛け持ちでクラブでホステスをやっているが、イメージとしてはこちらのほうがセクハラに遭いそうな気がする。しかし、マユミさんは「これはテクニックなんですが」と、客に触られそうになったときの対応を教えてくれた。

「こういうお店に来るお客さんってちょっと怒られたい願望がある人が多いんです。だから、セクハラされたら『触るんだったらもう席についてあげないよ!』と言うと喜ぶしやめてくれます。あと、胸や太ももを触られそうになったら、お客さんの手をがっちり掴んじゃって触らせないようにします。逆に太ももはいいけど胸を触られたくない場合はお客さんの手を握って太ももに置いちゃいます」

そう説明されると、お金を払って夜のお店に行く男性よりも、職場などで出会う男性からのセクハラのほうが悪質に思えてきた。
発達障害の女性は言語でのコミュニケーションが苦手で水商売を避ける傾向にあるが、マユミさんの場合は、言語能力が長けていることで他のことを補ってこられたという。

これらの壮絶なセクハラ体験がもととなり、今はうつ病の治療5年目に突入しているマユミさんは、悲しそうに「もう週5の8時間は働けない」と語る。決まったルーティンをこなすのがやりやすいとのことで、英会話教室はシフト通りで働く服装も決まっている。ホステスも服装やメイクが決まっているので、発達障害の特性があっても働けているのだという。
このような話をする彼女を、隣に座った現在のパートナーである男性が、温かい目で見守っていた。

(後編へ続く)

セクハラで悩んできたマユミさんを支えている現在のパートナー。彼に出会うまでの驚きの恋愛遍歴とは……? 次回は2月5日(土)公開予定です。

姫野桂

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