「親日か否か」が大統領選の争点、これが韓国のお寒い選挙実態

「親日か否か」が大統領選の争点、これが韓国のお寒い選挙実態

  • JBpress
  • 更新日:2021/11/29
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11月12日、外国メディアとの会見に臨んだ「国民の力」の大統領候補・尹錫悦前検事総長。この会見での発言も「親日派」レッテル貼りの口実に使われた(写真:AP/アフロ)

来年3月の大統領選挙を控え、韓国の政権与党「共に民主党」が、伝家の宝刀「反日vs.親日」構図を持ち出した。共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補サイドは、「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)候補本人だけでなく、その父親までを「親日派」であるとレッテル貼りし“反日扇動”に血道をあげているのだ。というのも李在明候補の支持率が思うように上がらず、またもや韓国国民の反日感情に訴えるしか手がない状況に追い込まれているからだ。

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大庄洞疑惑で追い詰められた李在明氏がすがる「あいつは親日」作戦

大統領選挙を約110日後に控えた11月19日に調査会社ギャラップが発表した世論調査の結果によれば、李在明氏の支持率は31%、尹錫悦氏の支持率は42%で、尹氏が大きくリードしている。11月5日に「国民の力」候補に確定した尹錫悦氏は、19日までに公表された計30の世論調査ですべて李在明氏をリードしている。このような尹氏の優勢が2週間以上続いたところで、李氏側の危機意識は一気に高まった。

李在明氏の支持率が伸び悩んでいる理由は、自らが「自分の最高の功績」と誇っていた大庄洞都市開発プロジェクトが、実は不正に塗れた大型詐欺事件であった実態が明らかになってきているためだ。

李在明氏が京畿道の城南市長時代に官民合同で施行した大庄洞開発プロジェクトは、最初から正体不明の民間企業「火天大有(ファチョンデユ)」に数千億ウォンの収益を与えるための各種の便法が動員されていたのだ。このプロジェクトを総指揮したユ・ドンギュ城南都市開発公社本部長(当時)は李在明氏の最側近だ。さらにプロジェクトの最終承認者が李在明氏である。その点をもって、李氏もこの不正事件に関わっているという見解が多い。

しかし、文在寅政権の“検察改革”によって、政権寄りの人物で埋め尽くされた検察は、一貫して捜査に消極的な態度で、李氏に対する捜査は全く行われていない。そのためメディアや世論から検察に非難が集中しており、大庄洞事件に対する特検捜査(検察とは別に政府から独立した立場にある特別検察官による捜査)を求める国民世論が60~70%まで高まっている。

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与党「共に民主党」の大統領候補・李在明前京畿道知事(写真:AP/アフロ)

大庄洞疑惑の泥沼から脱するために李在明氏は有権者の歓心を買うような公約を掲げたが、その中途半端な内容はかえって「副作用」を招くだけだった。飲食店の過当競争を防ぐために開業免許を200万~300万ウォン(20万~30万円)で取引するようにする「飲食店許可総量制」を主張していたが、メディアによる厳しい非難に晒され、「アイデアのレベルだった」と撤回した。また全国民に50万ウォン(以降25万ウォンまで金額が下がるが)のコロナ支援金を支給するという主張も、世論の反対意見が高まるや否や撤回するなど、右往左往ぶりを見せている。

挙句の果てには、失策の連発に「選挙のスローガンの『李在明はやります!』が『李在明は撤回します!』に変わった」などと皮肉られる始末だ。こうした情勢悪化に頭を悩ませている李氏サイドが乗り出したのが、尹錫悦氏に対するネガティブキャンペーンであり、その核心が「親日フレーム」なのだ。

李陣営総出で「尹候補は親日」キャンペーン

12日、尹錫悦氏が外信記者懇談会やSNSなどを通じて、日韓関係を破壊した文在寅政権の責任を相次いで指摘するや、共に民主党と李氏陣営は猛烈な「親日攻勢」を仕掛け始めた。

李氏陣営の選挙対策委員会の朴賛大(パク・チャンデ)首席スポークスマンは、記者ブリーフィングを通じて「尹候補が日本の右翼を代弁している」と非難した。

「日本の右傾化をかばい、その責任を韓国に転嫁する衝撃的な対日歴史観を露にした親日本色を表した尹候補の対日認識に驚愕する」

「日本の右翼勢力の代弁者を自任する振る舞いは遺憾だ。尹錫悦候補は日本の総裁選に出たわけではない」

共に民主党の外交通省委議員らは、「尹錫悦・国民の力大統領選候補の亡国的歴史認識と無知な外交認識を国民は憂慮している」「日本の植民地と朝鮮戦争後の困難な状況でも今日の大韓民国を作り出し、平和のための努力に力を合わせてきた全国民に頭を下げて謝罪せよ」と要求した。

李氏の選挙キャンプも、「韓日関係の悪化について韓国側にだけ問題があるように言うことは偏った見方であり、親日的韓日観だと疑わざるを得ない」という批判を提起した。

李在明氏本人もフェイスブックで「日本が笑っている。日本メディアが尹錫悦候補について『(右傾化した日本を)隣国として認めた』と、歓迎するほどだ」と皮肉ってみせた。

親に日本留学経験まで持ち出して「親日認定」

中でも尹錫悦氏に対する親日フレーム設定の先頭に立っているのが、李在明氏選挙キャンプの選挙対策本部長を務める宋永吉(ソン・ヨンギル)共に民主党代表だ。宋代表は、尹氏の父親のユン・ギジュン=延世大学名誉教授を「親日」と罵倒することで尹氏を攻撃した。

11月8日、国民の力の候補に確定した尹氏が公式選挙運動の第一歩を踏み出した瞬間、宋代表は共に民主党本部で尹候補を「日本の後援を受けた教授の息子に生まれた既得権の象徴」と痛烈に非難したのだ。

少し説明が必要だろう。これは、ユン・ギジュン教授が1960年代に日本の国費留学生に選ばれ留学したという事実を指摘したもので、過去に韓国の国民的作家チョ・ジョンレ氏が「日本留学経験のある人はすべて親日派」と発言したのと酷似した低級な思考と言える。

さらに宋代表は、19日、尹氏の幼い頃の写真について言及し、再び親日論議を刺激した。宋代表は、民平連(経済民主化と統一のための国民連盟)の早期総会の席で、尹氏が公開した自分の1歳の誕生日のお祝いの写真の中に、日本の紙幣が写っていると主張した。

韓国には、1歳の誕生日にテーブルに様々な物を並べ、子どもが何をつかむかによって将来を占う風習がある。尹氏の1歳の誕生日の写真にも、各種の果物や品物とともに紙幣が載せられていた。

宋代表はその紙幣についてこう述べた。

「尹錫悦氏の父親ユン・ギジュン氏は私が通った延世大学の教授でした。(尹教授は)裕福に日本文部省の奨学金を受けて一橋大学を卒業し、学術院の支援を受けて産業部に入りました。(息子の)1歳の誕生日会では韓国のお金の代わりに日本の紙幣がお祝いのテーブルの上に置かれたほどで、日本と近い裕福な延世大学教授・・・」

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尹錫悦氏が公開した自身の1歳の誕生祝の時の写真。右手前に写っている紙幣は果たして日本円なのか?

虚偽の事実交えてまで攻撃

ところが、赤ん坊の尹氏と一緒に写真に写っている紙幣は、1960年代に韓国銀行が発行した旧紙幣だった。これを日本の紙幣と勘違いした李氏の支持者たちが民主党側に情報提供し、宋代表が確認もせずに尹候補を非難する材料に使ったというお粗末ぶりだった。収まらないのは虚偽の内容で「親日派」と名指しされた尹氏サイドだ。尹氏側が「虚偽事実の流布で告訴する」との意思をほのめかすと、数日後、宋代表は「遺憾」を表明してみせたが、おそらく尹氏に対する「親日追及」は今後も続くものとみられる。

早くから李在明氏の支持者たちは、尹錫悦氏がオフの時によく着るユニクロ・ダウンジャケットを問題視し、尹氏を「親日派」と罵倒してきた。学術院会員の尹氏の父親が学術院から支援金を受けることについても、「日本の右翼団体から後援金を受けている」という歪曲した認識を拡散することを躊躇しない。

秋美愛(チュ・ミエ)前法務長官が検事総長だった尹氏に対して停職2カ月の懲戒処分を下したことは正当だったという裁判所の判決が言い渡されると、李在明氏は「検事総長が権力を乱用した事実が確認された」「親日派が身分を偽装して独立軍に成りすましている」という本件とまるで関係のない比喩を用いて批判するなど、事あるごとに尹氏を「親日」と印象付ける工作を続けている。

今のところまだ効果は薄いが、この攻撃が続けば、いつの間にか「尹錫悦=親日派」という印象が国民に植え付けられてしまうかもしれない。実は過去にもそのようなケースはいくつもあった。例えば「国民の力」の羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)元議員の事例だ。

「独島主語活動」に励んでも「親日」のレッテル貼られたら致命傷になる韓国社会

羅氏は初当選議員時代にソウルで開かれた自衛隊の行事に参加したことを機に、「親日派」というレッテルを貼られてしまった。それ以後、何をしても「親日議員」という“汚名”を返上できなかった。国会独島訪問団の団長を務めるなど独島守護に熱心に活動したにもかかわらず、「ナベ(羅卿ウォン+安倍)」という悪意に満ちたニックネームまでつけられた。「選挙は韓日戦」というフレームで行われた2020年4月の総選挙では、親日派だという攻撃に崩れ、選挙区を共に民主党の新人議員に奪われる屈辱を受けた。

「親日攻撃」は進歩系だけの武器ではない。今年4月のソウル市長選挙では、共に民主党の朴映宣(パク・ヨンソン)候補が東京にマンションを保有していたことから、「親日攻撃」に巻き込まれた。国民の力は朴氏のマンションの分譲会社が日本の戦犯企業だとし、「朴氏が日本の戦犯企業から巨額のショッピングをした」と攻撃した。

進歩系側にとっても保守系側にとっても、「親日」ほど全国民に訴求力を持つイデオロギーは他にない。このため、韓国の政治家たちに貼り付けられる親日レッテルは、今回の大統領選挙でも猛活躍するものとみられる。

李 正宣

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