
出所:『「キーエンス思考」×ChatGPT時代の付加価値仕事術』
制御機器大手のキーエンスは、2023年3月期の営業利益が4989億円、営業利益率54%の超高収益企業で、社員の平均年収が2279万円と高いことでも知られています。そのキーエンス出身のコンサルタントで、新著『「キーエンス思考」×ChatGPT時代の付加価値仕事術』を上梓した田尻 望氏が、今回はChatGPTを仕事に生かす方法について解説します。
キャッチボールを続けて掘り下げる
ChatGPTは「対話型AI」とも言われるように、回答に対してさらに質問を重ね、再回答を得ていくことが可能です。
ChatGPTはチャット(スレッド)をいくつも作成することができ、そのチャットごとに質問をする仕組みですが、同じチャット内なら、それまでの会話の内容を覚えています(ただし、2023年9月中旬時点の機能では、やり取りが長くなると、以前の会話の内容を忘れていくこともある)。
つまり、1つのチャットで質問→回答→再質問→再回答……と続けていくことにより、人間と話しているのと同じような感覚で、やり取りを続けていけるのです。
私はこれこそ、ChatGPTの真骨頂であると思います。わかりやすい例で言うと、このようにChatGPTとキャッチボールを続けていくことで、次のようなことが可能になります。
①ChatGPTの回答に対して、さらに内容を掘り下げる
興味を持ったChatGPTの提案に対して「○○についてさらに詳しく教えてほしい」、わからなかった単語や内容に対して「△△について解説してほしい」などと質問するなど、回答の内容を具体化していくイメージ。
②ChatGPTの回答を軌道修正する
欲しい回答が得られなかったときに、「○○を考慮して再回答してほしい」「△△の立場で考えてほしい」など、自分が欲しい回答に近づけていくイメージ。
簡単な内容なら一発で回答が得られる場合も多いですが、少し高度だったり、プロンプト(命令文)に入力する条件が多くなったりすると、一度の質問で欲しい回答を得るのは難しくなっていきます。質問を重ねていく心構えは、ChatGPTを使いこなすうえで欠かせません。
逆に言えば、ChatGPTに質問を重ねることで、より仕事に役立つ回答が得られる可能性を高めていけるのです。加えて、ChatGPTに質問するべき内容を、ChatGPTに聞いてしまうというテクニックも身に付けてほしいと思います。
例えば、漠然と聞きたい内容があるけれど、具体的にどういう質問をしていいかわからないときに有効です。「○○するためのプロンプトを10個作って」などと、漠然としたイメージ段階からでも、ChatGPTはプロンプトのアイデアを出してくれます。ChatGPTを使うことに慣れてくると、非常に便利だということがよくわかると思います。
自分のプロンプトを推敲してもらう使い方もできる
ChatGPTは適切なプロンプトを入力しなければ、適切な回答を得ることができません。細かい日本語表現の間違い程度なら、こちらの意図をくんで回答してくれます。
ですが、質問の趣旨がずれている、必要な情報が漏れているケースなどは、いつまでたっても欲しい回答を得ることができません。
具体的には、自分が質問したい内容を記入したうえで、「このプロンプトに必要な情報の漏れがあれば教えてください」と事前に質問するなど、自分のプロンプトを推敲してもらうような使い方が想定できます。
質問と回答を重ねていく、プロンプトを逆質問するという2つのテクニックを踏まえ、私が「仕事の骨子」に関する質問をChatGPTに考えてもらったときの例が、次のプロンプトです。
※外部配信先では画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください



出所:『「キーエンス思考」×ChatGPT時代の付加価値仕事術』
まず、「○○という業界のビジネスモデルを教えてください。」などと考えられるパターンを盛り込みながら、ざっくりと質問しています。
しかし、思うような回答が得られなかったので、「仕事の流れに沿って並び替えて」「どういう流れでまとめ直したか」と再質問。それでも不十分だったので、「仕事の骨子を理解するための流れのヒント」も与えました。このように掘り下げ、ようやく満足できる回答が得られました。
一方でこの段階では、文章がChatGPTに入力するプロンプトではなく、ChatGPTがこちらに質問する体裁になっていました。そこで、ChatGPTに聞くためのプロンプトに直すようお願いしました。

出所:『「キーエンス思考」×ChatGPT時代の付加価値仕事術』
これは一発で回答しました。以上で、私が欲しいと思っていた「仕事の骨子」に関する質問を得ることができました。
最後に、「各項目についてあと4つずつ出して」と具体的に掘り下げています。


出所:『「キーエンス思考」×ChatGPT時代の付加価値仕事術』
ChatGPTは無茶ぶりしても回答してくれる
ChatGPTはここまでの会話の流れを理解しているので、簡単な質問だけで、意図に沿ったプロンプト案を提案してくれます。

他の人間の助けをまったく借りずに、ChatGPTへの質問だけでここまでの回答を導き出せるのは、本当にすごいことです。
とくにこのようなアイデア出しの場合、ChatGPTは「10個」「20個」と無茶ぶりした場合も、その数に合わせて回答します。数が多いほど、すべてが使えるアイデアとはいかなくなりますが、使えそうなものを提案させる確率を高める意味でも、多めに数を指定して聞くとよいでしょう。
なお、仕事の骨子に関する質問は、ビジネスモデルなど仕事の仕組みを理解し、正しい目的や目標、それを達成するための問題を設定するために欠かせない情報です。やり取りの最後にある「1」~「6」まで、ChatGPTが回答してくれた内容は非常に有効なので、この質問をChatGPTで試してみてください。
(田尻 望:株式会社カクシン 代表取締役 CEO)
田尻 望