フナティック が独自のレコードレーベルを立ち上げた理由:赤字を出さずにオーディエンスを増やす魅力的な手段

フナティック が独自のレコードレーベルを立ち上げた理由:赤字を出さずにオーディエンスを増やす魅力的な手段

  • DIGIDAY
  • 更新日:2022/11/25
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11月9日、eスポーツ団体のフナティック(Fnatic)が傘下にレコードレーベルを設立すると発表した。その名もフナティックミュージック(Fnatic Music)。この動きは、音楽業界とゲーム業界で異分野融合が進んでいることを反映している。また、多くのeスポーツ企業が、効率的で、比較的容易に手が届く新たな収益源を追求する事情も垣間見える。

新レーベルのファーストアルバムは、インストのみのローファイヒップホップで31曲を収録している。先週、YouTubeやSpotifyなどのプラットフォームで配信を開始した。このアルバムを制作するために、フナティックはネットで活躍するローファイアーティスト31人に楽曲の提供を依頼。その多くはすでにeスポーツのファンだという(フナティックに40%、アーティストに60%というアーティスト側に有利な収益分配率も好評だった)。

アルバムに参加したミュージシャンのひとり、「Enluv」の名で知られるブランドン・ハート氏は、「このコミュニティにいる私の友人の大半はゲーマーだ」と語るが、フナティックへの楽曲提供で得た金額については返答を控えた。「ローファイ分野のレーベルの多くはディスコード(Discord)にコミュニティを形成していて、皆しばしばチャットルームに集まってゲームを楽しんでいる」。

新たなファンと収入源の獲得を期待

フナティックはこのレコードレーベルが新たなファンを惹きつける集客ファネルとして、さらにはあまり間接費のかからない収入源として機能することを期待している。フナティックのマーケティング責任者で、ファーストアルバムをプロデュースしたジョシュア・ブリル氏によると、アルバム制作にかかったコストは総額で2000ドル(約28万3350円)未満だったという。この制作費の大半は、最終工程のマスタリングとミュージックビデオ用のアニメーション制作に使われた。

ブリル氏によると、ローファイミュージックは店舗や公共の場で繰り返し再生されることが多いため、その配信事業で見込める収入は数万ドル規模におよぶという。eスポーツの世界では、ほとんどの団体が継続的な収入源としていまもブランドとの提携事業に大きく依存している。利益率の高いビジネスチャンスとして、ローファイミュージックに期待が集まるのもうなずける。

「Spotifyにはコーヒーショップやカフェで流すプレイリストが数多くある」とブリル氏は話す。「このジャンルでは、17歳かそこらのプロデューサーたちがひとつの楽曲で月に5万ドル(約700万円)を稼ぐことも夢ではない」。

ブランドとの提携に弾みも

フナティックの事業に音楽部門を創設したことで、ブランドとの提携の幅も広がりそうだ。ただし、ブリル氏によると、今回のファーストアルバムをその受け皿とすることは意図的に避けたという。「その気になれば、アルバム名にBMWの冠を付けることも可能だった」。

今年、音楽業界に進出したeスポーツ団体はフナティックが第1号ではない。たとえば、G2 Eスポーツ(G2 Esports)も1月に独自レーベルでメタルミュージックをリリースしている。

しかし、フナティックのレーベルは音楽事業としてはG2よりも本格的だ。G2のケースは基本的に、チームの新作ジャージの販売促進を目的としたブランドアクティベーションだった。フナティックの音楽部門は音楽業界出身のブリル氏が統括している。配信を担当するのはミュージックプラットフォームのダッシュゴー(DashGo)だ。

「手っ取り早い金儲け目的に見える」との声も

eスポーツ業界の企業が来たる不況に備えて経費削減を余儀なくされるなか、フナティックミュージックのような低コストの収益機会は、eスポーツ団体にとって大きな赤字を出さずにオーディエンスを増やす魅力的な手段となるかもしれない。成否の鍵を握るのは実際の商品、つまり楽曲だ。現在と未来のフナティックファンに、純粋に魅力的な音楽を提供しつづけることが何よりも重要である。

一方で、ディファイアントコレクティブ(The Defiant Collective)で文化的パートナーシップ部門の責任者を務め、ゲームと音楽の連携に詳しいマーヴィン・リゼンデ氏は、「多くのブランドが音楽事業に参入しているが、その多くは手っ取り早い金儲けが目当てのように見える」と述べている。「手っ取り早い金儲けが目的の事業はうまくいかない。まがいものの音楽で人の共感を呼ぶことはできない」と異を唱える。

[原文:Why a prominent esports organization is starting its own record label

Alexander Lee(翻訳:英じゅんこ、編集:島田涼平)

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