
独創的な技術とセンスのよさで人気のシトロエン。そんなシトロエンが、ステランティスジャパン主催のもと、初めてオーナーズミーティングを開いた。舞台となったのは岐阜県高山市、集まったのは全国からやってきた1000人のシトロエニストたちと500台のシトロエン。「ダブルシェブロン」で町が染まった1日をお伝えしよう!
文と写真/ベストカーWeb編集部
■岐阜県高山市に異変が……

高山市内を走るシトロエン2CV。歴史ある街並みに溶け込んで実に美しい
9月16日の土曜日。岐阜県高山市はちょっとした異変に包まれていた。飛騨の小京都とも呼ばれるこの美しい古都を、おびただしい数のシトロエン車が走り回っていたからだ。
実は筆者もその仲間だった。乗っていたのはシトロエンC5エアクロスBlue HDi。こいつで古い町並みの間をそろそろ走っていると、C3やベルランゴがすれ違って手を振ってくれる。コンビニに寄れば羽根を休める2CVやBXがいて、その姿に目を奪われる。
東京からここまで約350km、シルバーウィーク渋滞にもはまって約6時間の長旅だったが、C5エアクロスは「こういうの得意ですから」といわんばかりにあっさりと職務をまっとうしてくれた。
ドライブの印象をひと言でいうと、「力まない」。わずか2000回転で400Nmを発揮する2Lターボディーゼルはわずかなアクセル操作で必要な速度が手に入るし、プログレッシブ・ハイドローリック・クッションと呼ばれるダンパーは、路面の凹凸を絶妙にいなして極楽気分に浸れる。
350km走って燃料計の針が3分の1も減らないというディーゼルの足の長さも、心の平安に繋がった。さすがフランスのバカンス・エクスプレスだ。
■2CVからベルランゴまでが位山に!

ずらりと集まったシトロエンの数々。台数多すぎ&会場広すぎで全貌が収められず
なぜ9月16日の高山がシトロエンであふれていたか。その答えは翌日にあった。実は市街地からほど近い場所にある位山(くらいやま)交流広場で、ステランティス ジャパン主催による初めてのシトロエンオーナーの集い「シトロエニスト・ランデブー」が開かれたのだ。
ちなみに会場となった位山は、太平洋と日本海に水脈を分ける分水嶺であり、天皇家が代々行事に用いてきた「笏(しゃく。手に持つ木製の板)」を作る「イチイの木」が切り出される神聖な山でもある。
9月17日、その位山の麓の駐車場に集合したのは、全国から集まったおよそ500台のシトロエン。参加者の数でいえば1000人を超えるというから、その規模はハンパではない。
朝7時半。冬場はスキー場としてにぎわう位山に、新旧さまざまなシトロエンが集まってきた。C3やC4、C5、ベルランゴといった現行モデルはもちろん、BXやエグザンティア、C6といったネオクラシック系、さらには2CV、アミ、DS、SMといった大御所系モデルまで。シトロエンの歴史を早送りで見ているような楽しさだ。
■シトロエンは主役ではなく媒介になる

娘さん(左)のためにフリーマーケット出店を考えたという群馬県の後藤さん
みんなが所定の位置にクルマを止め、日除けテントを広げ、フリーマーケットの品物を並び終えた朝9時、いよいよミーティングの開会が宣言された。
会場のヘソに設けられたステージに、ステランティス ジャパンの打越晋社長が立つ。「先日、旧友でもあるシトロエンCEOから『君の最大の使命はシトロエンオーナーの笑顔を一人でも多く増やすことだ』と言われました。それを聞いて私は『ああ、これならシトロエンは大丈夫だ』と思った。まさに今日が、皆さんの笑顔を増やす1日です」と述べ、会場から喝さいを浴びた。
ミーティングは、位山交流広場をフルに使って行われた。広大な駐車場には年代ごとに車両が区分されて配置されるいっぽう、フリーマーケットエリアや最新モデルに乗れる試乗ブースも設けられている。近年の大ヒット作であるベルランゴはこのクルマだけでエリアが設けられ、100台以上がずらりと並ぶ威容が眺められた。
緑が美しいゲレンデ広場のほうには、ドッグランやキッズパークなども設けられ、家族や友人同士がアウトドアを1日楽しめる趣向が凝らされている。打越社長の言う通り、シトロエンが主役ではなく、笑顔を作る「媒介」になっているのだということが実感できた。
■新たなシトロエンファンが生まれそう

イベントが続けば新たなシトロエンの楽しさが生まれるはず
主催元のステランティス ジャパンによれば、100年超の歴史を持つシトロエンにふさわしい伝統的な場所で、関東や中京、関西などに偏らず、どこからでも集まれる場所として、岐阜県高山市を選んだという。実際、参加者のナンバーを見てみると、東京や大阪はもちろん、香川や鳥取といった「長距離遠征組」もおり、狙いが当たっていると感じた。
ロングドライブとなると、希少なオールドシトロエンたちが大丈夫なのか気になったが、何人かに尋ねてみてもまったく問題ないという回答が多かった。
たとえば東京から2CVで参加した方は、峠道は避けて、高速道路主体のルートを選ぶようにしているが、高速では問題なく100km巡航もこなすとのこと。同様に大阪から来たアミ6のオーナーは、シンプルな作りなのでまったく壊れない。電子化が進んだ現代車より壊れないんじゃないかと答えてくれた。
旧いシトロエンのオーナーたちは、フレンチブルーに代表されるフランス車系のイベントに古くから参加してきた方が多く、メンテナンスやトラブルに関しても多くの知見が共有・蓄積されていることが実感できた。
いっぽう2010年代以降のモダンシトロエンに乗られているオーナーは、「ミーティング参加は初めて」という方が多かった。
とはいえ1日をここで過ごして、「同じクルマに乗る人どうしが集まると楽しい」と実感された人が多く、こうした人たちが「シトロエン沼」にハマって、新しい化学変化を起こせば、シトロエンはもっと楽しいブランドになるだろうと感じた。
ステランティス ジャパンの打越社長によれば、このイベントを5年、10年、20年続くものに育てたいとのこと。日本アルプスの風光明媚な町から、シトロエンの新しいストーリーが生まれるかもしれない。シトロエニストの皆さん、また高山でお会いしましょう!
【画像ギャラリー】日本のシトロエン史に新しいページを刻んだシトロエニスト・ランデブーの1日(28枚)
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