『コタローは1人暮らし』の根底にある鮮烈なメッセージ 釘宮理恵が孤独感を繊細に表現

『コタローは1人暮らし』の根底にある鮮烈なメッセージ 釘宮理恵が孤独感を繊細に表現

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  • 更新日:2022/05/14
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『コタローは1人暮らし』Netflixにて独占配信中

原作が累計150万部突破を突破する大人気シリーズをアニメ化した『コタローは1人暮らし』が、3月10日よりNetflixにて配信されている。心温まる人間関係がコメディタッチに描かれているが、現代社会に蔓延っている諸問題を取り扱っていたりと、その奥深い魅力は多くの人を虜にしている。

参考:【写真】実写版コタローを演じた川原瑛都

『コタローは1人暮らし』の原作は『ビッグコミックスペリオール』(小学館)で連載中の津村マミによる同名作。2018年には「電子コミック大賞 2018」男性部門賞を受賞するなど、根強い人気を誇っている。

2021年にはテレビ朝日系でドラマも放送されており、主人公の狩野進を関ジャニ∞の横山裕が演じたことでも話題となった。ドラマでは横山演じる狩野の視点でコタローとの関係性が描かれていたが、原作・アニメ版での主人公はコタロー。「アパートの清水」に203号室に引っ越してきた4歳児のコタローが、隣に住んでいる漫画家の狩野進をはじめ、いかつい見た目の田丸勇、キャバクラ嬢の秋友美月らと出会い、次第に心を通わせていく様子が10話に渡って描かれていく。

コタローの大人びた性格と健気な態度が、次第に周りの大人の行動を変えていくのが本作の面白いところだ。第7話で美月が彼氏からDV被害にあっていることを知ったコタローは、警察に告げるよりも、本人がアパートから出ていくべきだと告げる。その発言の裏には、自分が父親を悪者にしてしまった過去から、美月には好きな人を悪者にしてほしくないというコタローなりの優しさがあった。過去の辛い経験を踏まえた上で、相手のことを第一に考えたコタローの発言は胸にくるものがある。

作品を彩るのは個性的なキャラクターたちだ。コタローは大好きなアニメ『とのさまん』のキャラクターの言葉である殿様語(「おぬし」「わらわ」など)を話す一方で、4歳児らしからぬ視点で物事を見定める大人びた一面もある。そんなコタローを演じるのは、『銀魂』の神楽役や『呪術廻戦』西宮桃役でもお馴染みの人気声優・釘宮理恵だ。コタローを囲う大人たちにも増田俊樹、早見沙織、諏訪部順一など今をときめく豪華な顔ぶれが揃っている。

コタロー演じる釘宮といえば、“ツンデレキャラ”の先駆者として『とらドラ』の逢坂大河や『ハヤテのごとく!』の三千院ナギなど様々なツンデレヒロインを演じてきた。しかし、ツンデレキャラにとどまらず、子供役からクールなヒロイン、悪役に至るまで、担当してきた役柄は非常に幅広い。そんな釘宮だからこそ、コタローの少年のようにアニメキャラを真似する健気な姿や、狩野や美月へ達観したアドバイスを投げかける大人びた一面がありながらも、その内面に潜む肉親から受けた虐待の影を孕んだ孤独感をも繊細に表現していた。コタローの無邪気な子どもっぽさ、大人な冷静さ、内に抱えた苦しみを全て包み込むような演技は回を追うごとに惹きつけられる。

本作はそんなコタローを中心に人と人との繋がりが描かれたヒューマンコメディとしての側面があり、登場人物は皆コタローに無償の愛を向けている。ただ同じアパートの住人というだけで……だ。

例えば、4歳児のコタローが一人暮らしを始めた理由を周りの大人たちは決して深入りしない。普通であれば詮索したり、不審に思ったりするはずだが、狩野をはじめ、アパートの住人は一様にコタローを優しく迎え入れる。狩野に関して言えば、コタローを幼稚園へ送り迎えをしたり、銭湯に付き添ってあげたりと、コタローへの関わり方は親そのものだ。それは単に幼い子供が相手だからという理由だけではない。狩野にとってコタローの生き様は、自分自身の生きる原動力にもなっているのだ。

現代は核家族化が進み、さらには本作で描かれているような近隣住人とのふれあいが薄れていっているのが現状だ。しかし、人とつながっていたいという欲求は昔からずっと変わっていない。私たち人間はやはり他者とのつながりなしでは生きてはいけないのだ。本作は他人との接点をなかなか見いだせないでいる現代社会に生きる私たちにひだまりのようなぬくもりを感じさせてくれる。

また、本編ではコタローには両親からネグレクトや虐待にあっていた過去の描写がたびたび描かれている。自分のせいで父親が悪者にされたのだと思い込み、将来また一緒に暮らすために強くなることがコタローの目標だ。辛い過去を背負いながらも、一生懸命に生きることを強く志向するコタローの姿勢は、大人であればきっと共感するだろうし、自分も強く生きなければと背中を押してくれるのではないだろうか。

ほっこりとするヒューマンコメディという体裁を保ちながら、鮮烈なメッセージを暗に伝えている『コタローは1人暮らし』。ドラマ版とは異なり、原作の温度感を残しつつ、豪華な声優陣のキャラクターボイスが登場人物を生き生きと動かしており、感情移入しやすいのもアニメ版の特徴だ。誰もが忘れかけた人との優しいつながりを、本作を通して思い出してみてはいかがだろうか。すでにNetflixで全話配信されているので、コタローの成長と、それを優しく見守る大人たちの関係にぜひ注目してほしい。(川崎龍也)

川崎龍也

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