菅義偉新総理が本気で狙う「スゴい減税策」...その目論見とは何か

菅義偉新総理が本気で狙う「スゴい減税策」...その目論見とは何か

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/09/15
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新総理に課される2つの急務

昨日(9月14日)行われた自民党総裁選で大方の予想通り、菅義偉官房長官が圧勝し、明日召集される臨時国会での首班指名選挙を経て、第99代内閣総理大臣に就任する見通しとなった。

ここで焦点になってくるのが、菅氏が歴代最長の在任記録を作った安倍政権の路線継承を訴えて、自民党の総裁選を勝ち抜いたことである。

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総裁選で菅氏に投票した議員たちの認識とは大きく異なるのだろうが、足もとのGDP(国内総生産)の推移をみても、安倍政権の経済政策“アベノミクス”はすでに破たんをきたしている。

それゆえ、新総理に就く菅氏に求められるのは、速やかにアベノミクスをはじめとした安倍政権の経済政策と決別することだ。そのタイミングを誤ると、日本経済は長期にわたりマイナス成長やゼロ成長に喘ぐことになりかねない。

もうひとつ大きなポイントとされているのが、かねて「新総理が決めること」と菅氏が腹の内を明かさずに来た、衆議院の解散総選挙の実施時期である。

永田町では、菅氏が長期政権への道を睨んで早期解散に踏み込めば、新型コロナ危機対応の経済活性化策として、昨年10月に10%に引き上げたばかりの消費税の時限的な税率の引き下げや所得税減税などが急浮上し、アベノミクスの継承者の立場はどこかに吹き飛ぶとの観測も流れている。

徹底した「安倍路線の継承」

「かつて安倍総理は、(消費税を)今後10年上げる必要がないと発言した。私も同じ考えだ」――。

菅義偉氏は9月11日、閣議後の官房長官の定例記者会見で、こう強調。自ら、前夜のテレビ東京の報道番組で「将来的なことを考えたら行政改革を徹底したうえで、国民にお願いして消費税は引き上げざるを得ない」とした消費増税に積極的な発言をわずか一夜で打ち消した。

海外メディアも発言を大きく取り上げた反響の大きさを見て、菅氏本人は失言と感じたのかもしれない。「君子豹変」にあたって、菅氏は、在任期間が歴代最長を記録した安倍総理の女房役の官房長官を長く務めた人物らしく、安倍総理を引き合いに出して発言の事実上の撤回を図ったのである。

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振り返れば、今回の総裁選を通じて、菅氏は一貫して安倍政治、アベノミクスなどの後継者として路線の継続を訴え、安倍政権への忠誠を貫いて見せてきた。

自民党の総裁選が国会議員を中心にした内輪の選挙であり、早くから党内にある7派閥のうちの5つからの支持を得て後継者レースを圧倒的に有利に進めていたことから来る余裕が背景にあったのだろう。

菅氏が今回の総裁選で公約した経済政策や取り組むとみられる経済政策には、目新しいものは見当たらず、安全運転で冒険を避けたものとなっている。言い換えれば、すでに安倍政権で着手した案件がほとんどなのだ。

列挙すると、「自助、共助、公助」を合言葉とした全世代型の社会保障の実現、統合型リゾート(IR)の認定、Go Toトラベルの完全実施、外国人労働者の受入制度確立、携帯電話料金のさらなる引き下げ、NHK改革、政府のデジタル化の推進、地方金融機関と中小企業の再編、農業改革、サプライチェーンの再編成といったところである。

重くのしかかる経済面のツケ

だが、このコラムでもすでに何度か書いた通り、アベノミクスの賞味期限はとっくに切れている。確かに、株式市場関係者の間には安倍総理の在職中、日経平均株価が2.2倍に上昇した点を評価する声があるものの、足もとの景気が振るわないのは致命的である。

2020年4~6月期の実質GDP(国内総生産)の改定値は前期比年率換算で28・1%減と、事実上の過去最悪を記録した速報値(27.8%減)からさらに下方修正となった。しかも、これで3四半期連続のマイナス成長と、日本経済が欧米諸国を上回る長期停滞に喘ぐ現実も浮き彫りになっているのだ。

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周知の通り、アベノミクスはデフレからの脱却を至上命題とし、その実現のための「三本の矢」として「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」を掲げた。

その実施にあたり、本来ならば不況期の衝撃緩和として限定的な出動を期待される金融、財政政策をフル稼働させたにもかかわらず、規制改革など成長戦略で悉く失敗したツケは大きい。アベノミクスの財政出動や金融緩和が成長期待を醸成する面がまったくなかったとは言わないが、それだけでは不十分なのだ。

また、新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念される中では、政府や経済界が主張するほど、再拡大の抑制と経済活動・経済成長の両立が容易でないことも明らかだ。感染拡大の抑制には人の移動の抑え込みが必要で、それでは経済活動は活性化しないからである。

今冬に向けて感染の再拡大を予防するためには、新型コロナ対策の特別措置法を可及的速やかに再改正して、感染者を強制力を以って隔離できるようすることが不可欠だ。さもないと、だらだらと中途半端な自粛を要請せざるを得ず、経済の停滞を長引かせかねないからである。

そのうえで、菅新政権には、人口減少に歯止めをかけられない中途半端な移民政策の抜本的な見直しをはじめ、様々な分野で参入障壁となっている経済規制の改革、今後、欧州連合の輸入炭素税導入によって狙い撃ちにされかねない日本のエネルギー・原子力政策の再構築なども避けて通れない重要な課題である。

大胆な減税政策を打ってもおかしくない

最後に、菅新政権が大胆な減税政策に打って出るのではないかとの観測が自民党議員や永田町ウォッチャーの間で流れていることにも触れておくべきだろう。

菅新総理が減税に打って出る可能性があるとみられているのは、総理就任後、速やかに衆議院の解散総選挙(例えば月内の解散、来月下旬の投、開票)に打って出るケースである。これは、政権発足時の内閣支持率が高ければ、長期政権への布石として試みるとみられている政権維持策だ。

そして、新型コロナ対策として、春先から国会議員たちの間で実施を求める声がくすぶっている時限的な消費税率の引き下げか、年収1000万円未満の人を対象にした所得税の減免が解散・総選挙の大義名分として俎上にあがって来る、と言うのである。

確かに、安倍総理は在任中、再三にわたって消費増税の見送りを大義名分に掲げて、国政選挙に勝利してきた経緯がある。それだけに、総理の女房役だった菅氏が、選挙戦略として「増税の見送り」の代わりに、「減税」を解散・総選挙の大義名分にしても不思議はないかもしれない。

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具体的な減税策としては、最長1年程度の消費税減税を争点に総選挙に打って出るという説が有力だ。

ただ、消費税率はいったん下げると元に戻すのに必要となるエネルギーが大きく、財務省の強い抵抗が予想されるので、最終的な落としどころとしては、年収1000万円未満の人などを対象にした今年度の所得税減免の方が現実的だとの見方も根強い。

仮に所得税を全額免除するとしても必要な原資は7兆円程度と言われており、今年度の2次補正で10兆円の予備費を確保した安倍政権の官房長官をつとめた菅氏ならば、強引に実施してもおかしくないと囁かれている。

もはや口先だけの改革では、日本経済を成長軌道に戻せないことは明らかだ。菅新総理が最初にどんな経済政策を打ち出してくるのか、期待を込めて見守りたい。

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