
iPhone 15(イエロー)とiPhone 15 Plus(ブルー)
手元に、iPhone 15シリーズと、iPhone 15 Proシリーズのレビュー機材がある。

iPhone 15 Pro(ブルーチタニウム)とiPhone 15 Pro Max(ブラックチタニウム)
テック・ガジェット視点でいうなら、今回は間違いなく「iPhone 15 Pro Max」に注目であり、実際、筆者の私物としての新iPhoneとしてはiPhone 15 Pro Maxを予約した。
だが、こと「テック偏重目線」でないなら、「iPhone 15もしくはPlusがいいなあ……」とも思う。自分がテクロノジー系のライターという仕事でなければ、iPhone 15 Plusを選んでいただろう。ここでは両方を触り比べての感想を、あえて「15 Proじゃない」目線で語ってみたい。
角が丸くなって「落ち着いたマット仕上げ」に
ご存知のように、iPhoneには「Pro」ラインとスタンダードラインがあり、さらにそれぞれ6.1インチと6.7インチの「サイズ違い」がある。
2×2の4種類であることに違いはないのだが、ディスプレイサイズを除いたスペック面で見ると、「スタンダード」と「Pro」、そしてカメラが異なる「Pro Max」の3種類といっていい。
だからスペック的に最上位である「iPhone 15 Pro Maxが……」という話になるのだが、こと「モノとしての魅力」で言えば、スタンダードライン、すなわち「iPhone 15」や「iPhone 15 Plus」もかなり良い。


iPhone 15シリーズは背面がマットに
ここ数年、特にiPhone 11(2019年)以降の製品は、金属のフレームに対して前後にガラスをはめ込む、という構造になっている。それ自体はiPhone 15シリーズでも変わっていない。

比較のために、iPhone 14の背面を。昨年まではガラスの光沢を活かすつくりだった

同じく比較用。角は今年のモデルより立った「四角さ」を強調するデザイン
だが今年については、フレームと背面のカバーガラスの扱いがちょっと変わっている。「四角い」印象は同じなのだが、マットな仕上げにテイストが変わり、背面カバーガラスからフレームまでが、より角のゆるやかな仕上げになっている。


iPhone 15シリーズのフレームの角は明確に「丸く」なった
その結果として、手に持った時の感触がかなりやわらかく、持ちやすい。指紋もつきにくくなった。この影響は特にProシリーズの方が顕著ではある。アルミを使っているスタンダードラインは、以前からフレームは「つや消し」だったからだ。
ただ、背面カバーガラスの印象はスタンダードラインの方が大きく変わったように思う。マットでありつつ、透明感のある背面カバーは非常に高級感があり、それぞれの色も良い。
Proシリーズは近年、高級志向で落ち着いた色合いが選ばれている。ただその結果として、各色のテイストが似てきてしまっている。
それに対してスタンダードラインは、5色の明確な個性がある。「この色が好きだからこれを選ぶ」という方向性がはっきりしている印象だ。これは、価格なども含め、対象とする顧客層がより若く、カジュアルであるからかもしれない。
まあ、「ケースをつけるから色はどれでもいい」という考え方もあるだろう。でもやはり、自分が持つものが「好みの色・デザインである」ことは、とても大切なことかと思う。

Geekbench 6によるCPU速度のチェック。iPhone 15はiPhone 14 Pro Maxに近い速度である
性能もカメラも「使いやすさ」重視で進化
では性能はどうか? ベンチマーク(Geekbench 6)的に言えば、iPhone 14 Pro Maxに多少劣るくらい、というところだろうか。SoCには同じ「A16 Bionic」を採用しているはずだが、マルチコア性能が若干低い。
とはいえ、これでも市場全体で言えば「圧倒的にハイエンド」であり、多くの人は十分に満足できると思う。
カメラについては、48メガピクセルのメインカメラと超広角、という組み合わせ。昨年との大きな違いは、48メガピクセルのカメラのうち24メガピクセル分を切り出すことで実質的な「2倍の望遠」が使えることだ。デジタルズームの一種とも言えるのだが、画質的なリスクがより小さいのがポイントと言える。

カメラはメイン+超広角の2つ
またソフトウエア改善との組み合わせにより、ポートレート撮影の被写界深度コントロールがやりやすくなったのもポイントだ。とりあえず撮影しておいて後からフォーカス位置を変える場合にも、あわせたい場所を「タップ」するだけで良くなった。

ポートレートモードの被写界深度コントロールは、フォーカスを合わせたいところを「タップするだけ」になった
また、ポートレート撮影が「モード切り替え」することなく撮れるようになったのもプラスと言える。とりあえず標準の撮影モードで撮影しておき、あとからポートレート撮影へと切り替えて使えるわけだ。
さらに、48メガピクセルを活かした「解像度優先」の撮影もできる。通常は24メガピクセルもしくは12メガピクセルでの撮影となるが、48メガピクセルで解像度優先の撮影もできるようになっている。テレビや大画面ディスプレイで見たり、一部を拡大して使いたい場合などにはいいだろう。ただしメインカメラのみで使える機能であり、光量が十分な場所での撮影に向いたものである点に留意は必要だ。
ソフトウエア的な変化はProシリーズにも共通のものではあるが、どのモデルも着実に進化している……と考えるとわかりやすい。
Proかそうでないかの違いは主に「望遠」であり、今回は「2倍」が使えるようになったことで、Pro(3倍もしくは5倍)に対して多少近づいた……という見方もできるだろう。
スタンダードモデルは「若者を狙う」のが各社共通の方向性
このように見ていくと、アップルが「スタンダードとPro」を明確に「違う層に向けた製品」へと変え始めているのを感じる。
SoCの世代もカメラも変え、その上でカラーテイストも変えているのはそのためだろう。この辺は、特に日本国内でのライバルでもあるソニーモバイルのXperiaも似た戦略である。
Xperiaにはフラッグシップの「1」とその下である「5」シリーズがある。以前はカメラ機能もほぼ同じ、プロセッサーも同じで、「サイズによって選ぶもの」というイメージが強かったのだが、最新の「Xperia 1 V」と「Xperia 5V」では、カメラの数も変えてきた。Xperia 5 Vはメインと広角のカメラを搭載し、メインカメラ(48メガピクセル)の24メガピクセル分を使って「2倍」の望遠も対応している。iPhone 15と全く同じアプローチと言っていい。
これはどちらかが真似たとかそういう話ではなく、「ハイエンドの最上位とスタンダード」という存在をどう考えるか……という点について、各社の狙いが揃ってきたということかと考える。
iPhone 15が狙い通りの層に刺さるかは気になるところだが、少なくとも実機を使ってみた感触はかなり良い。

筆者紹介――西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、書籍も多数執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略」(SBクリエイティブ)、「ネットフリックスの時代」(講談社)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)などがある。
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西田 宗千佳 編集●飯島恵里子/ASCII