年下男のお姫様扱いに溺れるアラフォー女。浮かれ気分でいた女を襲った、あるピンチとは

年下男のお姫様扱いに溺れるアラフォー女。浮かれ気分でいた女を襲った、あるピンチとは

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  • 更新日:2021/01/19

女は、いくつになっても若く見られたい。

特に自身の年齢にコンプレックスを持つ女たちは、エステやメイク、ファッションやヘアスタイル…。

誰よりも美容に気を使い、若く美しく見せることに必死になる。

おかげで、実年齢をうまくごまかすことはできるけど…。

―もう本当の年齢は、誰にも告げない。

そう決心したある女がいた。彼女は今日も鏡の前で、こうつぶやく。

「ねぇ。私、いくつに見えますか?」

◆これまでのあらすじ

サロンを経営している38歳の蘭子は、BARで出会った33歳の純太と意気投合。蘭子はこの日限りの関係だからと、ノリで6歳サバを読んでしまう。

しかし、そんな彼から一目惚れをされてしまったようで…?

▶前回:初対面の男に年齢をサバ読みした女。別れ際、彼から告げられた恥ずかしい一言

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『蘭子ちゃん、おはよう!今週の予定はどうかな?』

開店前の静まり返ったサロン。その中で蘭子は1人、スマホ片手に頭を悩ませていた。

2週間前、BARで出会ったIT企業勤務の純太。その彼から、頻繁に連絡が届くようになってしまったからだ。

―こっちからLINEするって、何度も言ってるのになあ。

「忙しくて予定がわからない」とごまかし続ける蘭子に対し、おおらかに待つ姿勢を見せながらも「おはよう」などのメッセージは欠かさない純太。

強引さを感じながらも、全く迷惑に思わないのは、自分にもその気があるからなのだろう。

あの夜、先に店を出た蘭子を「自宅まで送る」と追いかけてきたあと。家の前まで無事を見届けると、何をするでもなく去っていった彼。

そんな、何年かぶりに受けたお姫様のような扱いを、忘れることができなかったのだ。

―なんだか、シンデレラみたいな夜だった。

しかし、そんな扱いをしてくれたのも、自分が“32歳である”という偽りのドレスをまとっていたからだろうと思うと、途端に冷静になってしまう。

だからこそ、また会いたいと思いながらも2回目のデートをためらってしまうのだ。

そんなことを考えながら、仕事に取り掛かろうと今日の予約一覧を眺めていた時。ある新規顧客の名前に目が留まった。

そこで蘭子が見たモノとは…?

「岩永純太?これって、もしかして…」

年齢は33歳。任意の職業欄には、勤務先として彼が言っていたIT企業の名前が書かれている。

蘭子のサロンは、ほぼ1人で運営しているということもあり女性専用だ。店のWEBサイトに大きく書いているので、わざわざ男性が予約してくることはありえないはず。

どちらにせよ、お断りの連絡を入れなければならない。蘭子は予約時に登録された番号に、電話をかけてみることにした。

「だって蘭子ちゃん、なかなかつかまんないんだもん」

案の定、その予約は純太であった。

「こう見えてもうちはキャンセル待ちもいるサロンなの。時間作るから、待っているお客様のためにも、枠を空けてくれないかな」

「そっか…。残念、今日会えるかと思ったのに」

電話口であったが、トーンの低い声色に、肩を落とす彼の姿が目に浮かぶ。

途端に蘭子の胸は締め付けられた。

「じゃあ…。17時半に渋谷でどう?キャンセル待ちのお客さんに聞いてみてNGだったら、もっと早く行けるかもしれないけど」

「ありがとう!じゃあ、約束だよ」

やれやれと電話を切った蘭子だったが、サロンの鏡に映る自分の顔は心なしか嬉しそうだ。…なぜかキャンセル待ちのお客様に連絡をする気も起きない。

さらに、いつの間にかネットで彼の名前を検索していることに気づき、ハッとする。

―久々のことで浮かれてるだけよ。絶対、本気になっちゃダメ。

そう自分に言い聞かせながらも、彼にSNSを特定された時に備え、プロフィールの内容や年齢が推測できる投稿を次々に削除しはじめたのだった。

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「おまたせ、遅れちゃってごめん」

蘭子が慌てて向かった先は、渋谷のカジュアルイタリアン。

前のお客様の対応が終わった後、一旦帰宅してから着替えてメイクも直した。そうこうしているうちに、約束の時間に少し遅れてしまったのだ。

「大丈夫?忙しかったんだよね」

「うん…。お客様が少し延長しちゃって」

ひとつ嘘をついていると、他の嘘もためらいがなくなるのはなぜだろう。それを隠すように、純太にむかってニッコリと微笑んだ。

とりあえずハウスワインで乾杯した後、店員からおすすめを聞いてアラカルトで注文する。

「蘭子ちゃん、好きな食べ物は?」

「何でも好きよ。あ、でも強いて言えばウニかな。お気に入りのお鮨屋さんがあって、ウニ食べたさに1人で入っちゃうこともあるの」

「鮨か…。蘭子ちゃん、グルメっぽいからいい店知ってそうだよね。その店ってどこ?」

純太が会話も何もかもリードしてくれて、心地よかった。初めて会った時に感じた居心地の良さは、幻でなかったことを再確認する。

その上、暗がりではよくわからなかったが、レストランのような明るい場所で改めて彼の顔を見ると、朝ドラに出てきそうな爽やかで甘いマスクだということに気づく。

思わず、純太の顔をジッと見つめていた。

「どうしたの?」

すると彼は、照れくさそうに微笑む。

「よく見たらかわいい顔してるんだなって思ったから…」

「かわいい、ね。年下の子に言われるのもいいけど、本音はカッコいいって言われたいかな」

「あ…。ごめんなさい」

「でも嬉しいよ。じゃあ僕も蘭子ちゃんの顔、しばらく見ていていい?なんて」

その言葉に、蘭子は色々な意味でドキッとした。

―どうしよう、小さなシワとか気づかれたら。

純太の何気ない一言に、蘭子は…?

純太の視線に、蘭子はハラハラした。

生まれながらの美貌はもちろん、専門である美顔マッサージに、ヘレナのセラムとクリームでのケア。さらにスチーマーでの保湿…。

十分に自信があるつもりだが、後ろめたい分異様に怯えてしまうのだ。その視線に耐え切れず、顔をそむけようとした、その時。

店内の照明が、突然消えた。

「えっ、停電?」

ビックリして周囲を見回す純太だったが「助かった」と、蘭子は逆に安心する。

「ハッピーバースデー!!」

すると軽快なバースデーソングがフロアに流れ始め、若いカップルのもとに店員がケーキを持ってやってくる。2人はその場の流れで、手拍子につき合った。

「なんだ、誕生日サプライズだったんだ」

「こ…こういうの私、大好き!」

話の流れを転換するべく、蘭子は無理に明るく振る舞う。

「へー。僕、前に友達の誕生会でフラッシュモブに参加したことあるよ」

「いいなー!私も憧れだよ!」

心にもない会話で話を繋いで、うまく乗り切ったと安堵した。

「じゃあ、蘭子ちゃんの誕生日に計画しようかな。いつなの?」

「3月9日だよ」

「そうなんだ。意外と近いね。というか、実は“同級生”なんだ」

「ああ…。うん」

言っている意味が分からなかったが、とりあえず蘭子は生返事をした。…そして、その言葉の意味にハッと気づいたのは、店を出た後だった。

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―そうか。早生まれだから今32歳でも、3月になったら33歳。だから同級生、ってことなんだ。

3月9日は蘭子の本当の誕生日。

偽りと真実の境界線がまだはっきりしていない分、どこでボロが出るかわからない。蘭子は思わずゾッとした。

お鮨屋さんに1人で行くと言ったのも、32歳女性にしては渋すぎた発言だったかなと後悔する。

「蘭子ちゃん、どうしたの?顔色悪いけど」

「ちょっと酔っぱらっちゃって…」

店を出た後はタクシーがつかまるまで手を繋ぎ、寄り添いながら歩く。

この前のように、純太は「家まで送る」と言ってくれた。実際は年下なのに、スマートな包容力や居心地の良さに年齢差は一切感じられない。

―この人のこと、好きかも…。

しかし、完全に心を許せない自分がいる。理由はもちろん、ひとつの嘘。自分でも十分認識している。

蘭子がそんなことをグルグル考えていた時、2人の間には沈黙が流れていた。彼はそのあいだに何かを決心したようだ。

突然足を止め、こちらに向き合ってきた。

「…蘭子ちゃん、僕の恋人になってくれないかな」

純太から出た、その言葉。なんとなく、彼の態度からわかっていた。

しかし、どうするかは蘭子も答えにたどり着いていない。

―彼の気持ちを受け入れたい。だけど…。

その瞬間、彼の手をするりとほどいてしまったのだった。

▶前回:初対面の男に年齢をサバ読みした女。別れ際、彼から告げられた恥ずかしい一言

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純太の告白に、蘭子が出した答えとは…?

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