藤井聡京大教授 ペロシ下院議長の台湾訪問めぐる米中攻防は「クセ球の投げ合い」

藤井聡京大教授 ペロシ下院議長の台湾訪問めぐる米中攻防は「クセ球の投げ合い」

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  • 更新日:2022/08/07
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藤井聡教授(東スポWeb)

ペロシ米下院議長が台湾訪問したことで、米中関係は悪化の一途をたどっている。報復措置として中国は台湾周辺で軍事演習を実施し、弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下するなど、日本への影響も大きい。かねて中国の脅威に警鐘を鳴らしてきた京都大学大学院の藤井聡教授(53)は、今回の米中の〝衝突〟について「クセ球の投げ合い」と指摘した――。

岸田文雄首相は5日、来日中のペロシ氏と会談。台湾海峡の平和と安定の維持に向けた日米間の緊密な連携を確認した。

ペロシ氏は2~3日、台湾を訪れ、蔡英文総統と会見した。ペロシ氏の訪台前、中国は「火遊びをするものは自らを焼く」などとけん制。ロシアのウクライナ侵攻が続く中での訪問には、米国の軍関係者からも難色が示されていた。それでも、訪台を押し切った米国の意図はどこにあるのか?

藤井教授は「ウクライナ侵攻を受けて、台湾、日本に動揺が走っている状況の中、米国は『しっかり米国は中国から台湾・尖閣を守る』というメッセージを出さねばならないという動機が高まっている。その中で議会という、政府から独立した機関に居る、対中強硬派として有名なペロシ氏が台湾を訪問し、同時に政府が『政府は議会を制御できない』とメッセージを出すというアプローチは極めて微妙なもの。米国側としては、野球で言うところの〝クセ球〟を投げた格好になっている」とみる。

米国の〝クセ球〟に中国も弱気な対応はできない。弱腰な姿勢を見せれば、米国にも国内にも〝ナメられる〟からだ。

「弱腰に出れば、中国内外に『米議会議長の台湾訪問を中国が事実上、是認した』ということになり、徹底的に対応することが必須でした。それができて初めて『中国は、米議会議長の台湾訪問はレッドラインを超えている。今後は、軽々に台湾に米国要人を送ることが難しくなる』と米国に見せることができ、かつ、中国国内の反発を抑えることができます」。

とはいえやり過ぎると本当にレッドラインを超え、戦争になってしまう。藤井教授は「米中とも戦争は絶対に避けたいと思っている。しかしナメられては今後に大きな影響が出るから、絶対にナメられないようにしないといけない」と両国の思惑を指摘。「だから米国のクセ球に対して、中国も『ペロシ氏が離れて数日してから軍事演習』という微妙なクセ球を投げ返したのです」と中国の行動を分析した。

緊張が高まる中、ペロシ氏と会談した岸田首相は「中国の行動は地域、国際社会の平和と安定に深刻な影響を与える」と懸念を表明したが、この対応について藤井教授は「もちろん十分ではない」という。

「先方がEEZ内ミサイルというクセ球を投げたのなら、本来なら、日本もEEZ内ミサイルというのと同等の反撃を出さないといけない。〝遺憾砲〟だけでは、EEZ内へのミサイルを撃つのは中国の既得権だとなってしまった」
ただ現実には憲法の制約があり反撃できないため、「早急にこうした事態に日本として対抗できるようにする法的整備を図り、自衛隊を拡充する必要がある」と主張した。
米国ナンバー3の訪台と、それをめぐる一連の動きは、今後にどのような影響を及ぼすのか。

「中国は、米国に『議会議長以上に政府と関係する要人を台湾に派遣すれば、軍事衝突になってしまうリスクが非常に高い』と思わせることに成功していると言えます」

台湾海峡の軍事バランスは、これから中国側が強くなっていく方向で推移する可能性が非常に高いといい「今回、米中痛み分けで終われば将来的に得をするのは中国です。なぜなら将来、中国がさらに強くなった時に侵攻しても、米国は反撃しない可能性が高いという見込みを米中ともに形成することになるからです」と話した。

これを阻止するには、痛み分けではなく米国側の圧力に中国が怯えて引き下がったという状況を作ることが必要だが、「それは容易ではないと考えられます。日本としてはそうなればよいと思いますが…」

弱腰外交しか打つ手がない日本の置かれた状況は極めて厳しい…。

東スポWeb

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