みるみるしぼむ強硬姿勢、バイデン政権に対中融和の兆し

みるみるしぼむ強硬姿勢、バイデン政権に対中融和の兆し

  • JBpress
  • 更新日:2021/10/15
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第76回国連総会で演説する米国のバイデン大統領(2021年9月21日、写真:AP/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

米国ではバイデン政権が中国に対して融和の姿勢を取り始めたとの指摘が顕著になってきた。

バイデン政権は当初、中国を最大の競合相手とみて、中国の対外膨張の動きを厳しく抑える方針を掲げた。しかしその態度を和らげ、協調の領域を拡大する気配をみせてきた、というのだ。この動きに米国内部の各方面から批判や警告が発せられている。

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中国の人質外交の威嚇に屈服

バイデン政権の対中融和への非難で第一に目立ったのは、トランプ前政権の国家安全保障担当の大統領補佐官ジョン・ボルトン氏の論考だった。

トランプ前大統領に対しても批判的だったボルトン氏は国際安全保障の権威だが、10月はじめにワシントンの政治新聞「ワシントン・エグザミナー」に「中国に対する米国の弱み」と題する論考を発表し、バイデン政権の最近の対中政策が弱くなり、危険な状態になったという見解を明らかにした。

ボルトン氏がとくに問題にしたのは、中国の大手通信機器メーカー、ファーウェイ(華為技術)の副会長、孟晩舟氏の中国への帰国を許可した措置だった。

バイデン政権は米国の法律に基づき、孟氏を詐欺罪などで刑事訴追していた。孟氏はカナダに滞在し、カナダ当局から米国への移送の手続きを進められていたが、バイデン政権は9月下旬、孟氏との間で訴追延期合意を結び、事実上、刑事訴追を取り下げた。その結果、孟氏は本国へ帰り、「母国への勝利の帰還」として大歓迎された。

バイデン政権のこの措置には、中国がカナダ人2人を報復のように拘束し、カナダ政府に対して孟氏を米国に移送しないことを強く要求してきた背景があった。バイデン政権にはカナダへの配慮もあったようだが、中国の不当な要求への屈服とみられた。

中国当局は孟氏の身柄と引き換えに自国内に拘留していたカナダ人2人をすぐに釈放した。この動きは中国当局が不法な人質外交を実行した証拠だとして、米大手紙のウォール・ストリート・ジャーナルが社説で「中国の人質外交の威嚇に屈するべきではない」とバイデン政権を批判した。

中国への配慮がにじむバイデン大統領の演説

バイデン政権の対中融和の兆しだとして第二に批判されたのは、バイデン大統領の9月下旬の国連総会での外交演説である。

同大統領はこの演説で、米国の外交政策の柱だったはずの中国の不当な言動への批判はほとんど述べず、中国の国名も挙げなかった。中国を念頭においたと思われる部分では「冷戦は求めない」と述べ、「私たちの(中国との)共同の未来では新型コロナウイルス、気候変動、貿易、サイバーテロ、国際テロ防止などが課題になる」と語り、米中間の協力分野を強調した。

さらに同大統領は、世界での人権弾圧などの問題を提起するなかで、ベラルーシ、キューバ、ミャンマー、シリア、ベネズエラなどの国名をあげる一方、人権弾圧の明白な中国の名をあえて指摘しなかった。

中国への配慮がにじむバイデン大統領のこの国連演説に対しては、連邦議会の上院で中国問題を積極的に提起している共和党のティム・スコット議員らが、「バイデン大統領は明らかに中国へのスタンスを軟化させた」として非難した。

国防費の実質的削減で低下する対中抑止力

第三は、バイデン政権の国防費の事実上の削減が中国の軍事攻勢を招く結果となっているという議会や学界からの批判である。

バイデン政権がトランプ前政権とは対照的に、中国の軍事力大増強への警戒を表明しながらも国防費を実質的に削減しようとしていることに対しては、共和党だけでなく、中国の軍事動向の研究者たちからも懸念が表明されてきた。

この点について下院軍事委員会の有力メンバーのマイク・ギャラファー議員(共和党)は10月上旬、「ワシントン・ポスト」への寄稿で、現在の国防総省の軍事政策では中国への軍事抑止は効かなくなるという趣旨を主張した。ギャラファー議員はバイデン政権の軍事軽視が中国への抑止の弱化を引き起こしていると指摘する。具体的には、バイデン政権の国防費の事実上の削減が、非核の通常戦力面で中国の優位を許し、中国にトランプ前政権時代よりも大胆で果敢な軍事攻勢を招く結果になったと、述べていた。

同じ点について、民間の研究機関「民主主義防衛財団(FDD)」のデービッド・アデスニク調査部長も、「バイデン政権の当初からの軍事軽視が、いまになって中国側の軍事攻勢を奨励する結果を招くようになった」と指摘した。

アデスニク氏は、中国の軍事攻勢の実例として、最近の大量の中国軍用機による台湾の防空識別圏への侵入や、台湾攻撃を想定するような大規模な軍事演習、さらには南シナ海や東シナ海での水上艦艇や潜水艦の行動の活発化を挙げていた。同時に「中国のこの種の果敢な軍事行動は、軍事抑止能力を重視したトランプ政権時代にはみられなかった」とも強調した。

中国が攻勢的に、日本への影響は?

以上のようなバイデン政権の対中融和とも受け取れる姿勢の変化は、10月6日にスイスで開かれたジェイク・サリバン大統領補佐官と楊潔篪外交担当国務委員との会談にも反映された。

この会談では、米中間での激しい意見の衝突はまったくなく、バイデン大統領と習近平国家主席が2021年末までに首脳会談を開き、両国間の関係改善を図るという計画が合意されたと発表された。

こうしたバイデン大統領の対中融和傾向は日本にどんな影響を及ぼすのだろうか。

近年の米中関係では、米国の態度が和らぐと中国の対外行動が攻勢的になるという相関関係が立証されてきた。このため中国の尖閣諸島への攻勢などが激しくなる展望も予想される。

古森 義久

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