ツアー・オブ・ジャパン2023 第6ステージ富士山  ネイサン・アールが復活の独走勝利

ツアー・オブ・ジャパン2023 第6ステージ富士山 ネイサン・アールが復活の独走勝利

  • CycleSports.jp
  • 更新日:2023/05/26

激坂ヒルクライム一発ステージ

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5月26日、ツアー・オブ・ジャパン6日目は、クイーンステージとなる富士山ステージ。静岡県小山町にある道の駅すばしりをスタートし、激坂コースとしておなじみの“ふじあざみライン”から富士山須走口5合目にフィニッシュする距離11.4㎞のヒルクライムステージだ。平均勾配は10%、最大勾配22%の獲得標高1160mを一気に駆け上がる。

朝から晴れ上がり、スタート前からフィニッシュまで、富士山もしっかりと姿をあらわした。

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富士山ステージのホームチームは、チームブリヂストンサイクリング

スタートすると、モハマド・ヌル・アイマン・モフド・ザリフ(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)が一人飛び出すが、集団はJCLチーム右京が早速集団を牽引し、すぐに吸収。

昨年のこのステージは、ネイサン・アール(JCLチーム右京)と、当時同チームだったベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)の2人が抜け出す形で圧倒的な差を築いてダイボールがステージ勝利、アールが総合優勝を勝ち取っている。クライミング能力に長ける2人による違うチームでの勝負となることが予想された。

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この日はしっかり稜線が見えた富士山

残り8㎞のつづら折れに入る前からさっそく、ダイボール自らが集団先頭に出てペースを上げる。集団はどんどんと数を減らしていった。

いなべステージの勝利だけでなく前日のステージでも積極的な動きを見せたダイボールのチームメイト、カーター・ベトルス(ヴィクトワール広島)は前日に富士山ステージについて、「チームやコーチと相談して、自分も狙うかどうか判断したいが、ベン(ダイボール)にも自信がある。ベンはこのステージまで順調に走ってきているから、明日はどんな走りを見せてくれるのかとても楽しみだし、ヴィクトワール広島がまた優勝するかもしれない」と話していた。

この日リーダージャージを初めて着用した岡は、ダイボールのペースアップに耐えられず離脱してしまう。ダイボールの後ろには、ベンジャミ・プラデス、ネイサン・アール、小石祐馬のJCLチーム右京3人がしっかりと張り付く。

後方では、スプリント賞を着るジャージをルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)も食らいついたが、途中でドロップした。

まだ距離の半分も消化しないうちに、先頭はダイボール、小石、プラデス、アール、リアム・ジョンストン(トリニティ・レーシング)、ドリュー・モレ(キナンレーシングチーム)、ジャンバルジャムツ・セインベヤール(トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム)、エミル・ディマ(ソフェル・サヴィーニ・デュー・オムズ)、レオネル・キンテロ・アルテアガ(ヴィクトワール広島)、トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)の10人となった。

少し進むと今度は、ランパーティの繰り下げで新人賞ジャージを着るジョンストンも集団から離脱した。

「最初の6、7㎞ぐらいまでは自分も彼らについて行った。ただ、もう自分の中で限界を超えたと感じたから、一番上までフィニッシュするまでにエネルギーを使い果たさないうちに自分のペースに戻った」と、ジョンストンは話す。

残り6㎞を過ぎた旧馬返しでは、もう既にダイボール、プラデス、アール、ジョンストン、モレの5人となった。

その後、ジョンストン、モレも集団から離れ、先頭は3人。

プラデスも遅れると、昨年の焼き直しか、先頭はダイボールとアールの2人となった。

ダイボールは先頭で自分のペースをキープする。しかし、残り4㎞地点を過ぎたところで、いよいよ、ダイボールの後ろからアールが飛び出して行った。

「ダイボールは、とても強い選手で力もある選手だ。ただ、総合としては、タイムは自分の方が少し上だったから、そのことも考慮して今日は臨んだ。ダイボールも、僕のことを途中で落としていこうという戦略だったと思う。でも残り4㎞を過ぎたあたりで、彼(ダイボール)が最大限の力を発揮しているのがわかった。だけど、僕はまだ限界には達していなかった。だからアタックして反応を見ようと思ったんだ。そうしたら彼は反応しなかった」

ダイボールは苦しそうな様子でダンシングで追うが、アールは軽快に差を開いていく。

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フィニッシュが見えるラスト150mに一人で入ってきたアール

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ラスト100m、後ろがいないか振り向く

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最後の50mを厳しい表情で走る

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独走でフィニッシュしたアールは、大きくガッツポーズを見せた

残りの距離をみるみる消化し、独走のまま、フィニッシュが見えるラスト150mにあらわれたアール。残り100mで一度後ろを振り返ると、最後の激坂を上り切り、ガッツポーズでフィニッシュラインを切った。

「アタックした時点からフィニッシュまでは単独だった。大変だったけど、とてもいい気分でゴールすることができたよ」

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2位は34秒差でダイボール

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3位争いは、モレとプラデスの2人

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5位は小林海(マトリックスパワータグ)で、日本人1位

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リーダージャージの岡は、トップから3分51秒差でフィニッシュ。総合3位の位置に

大怪我からの回帰

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チームとしても個人としてもこの富士山ステージを目標としてきたアール。前日の岡の勝利がよりモチベーションを高めたそうだ。

昨年もダイボールに勝利を譲る形でこのステージを終えているアールだが、今回の勝利は特別だと話す。

昨年のTOJ総合優勝からこの1年、順風満帆にきたわけではない。昨年の9月の練習中にひどい事故に遭い、手首、肘、肩、肋骨を折り、複数の歯も失う重症を負い、そこから12月の半ばまではリハビリのみでトレーニングはまったくできない状態が続いた。

「今はコンディションがとても良く、体調も良い状態で、今日、僕はステージを制したが、決して簡単なことではなかった。

去年9月から今年の5月まで、このTOJを目標にしてきて、リハビリ、トレーニングなど、とてもきつい期間を過ごしてきたんだ。その間、チーム、チームメイト、友人、日本のドクター、オーストラリアのドクター、みんなが僕を支えてくれたよ。本当に何か月も、何か月も準備してきたTOJなので、今日の勝利はもう本当に感無量だ。

チーム右京は、長いリハビリ期間を僕にくれて、さらに僕がトップコンディションでまた戻ってこられるということを信じてくれた。それが毎日のモチベーションなったんだ。だから、本当にチームに感謝をしたい」
と、アールは少し目に涙を浮かべながらチームへの感謝を語った。

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総合リーダージャージも手にしたアール

アールは、今回の結果で総合順位も覆した。チームメイトの岡から譲り受ける形で総合リーダージャージを獲得。

今日のスタート時点では、トップの岡とアールは2分44秒の差がある状態だった。チームとしては少し悩ましい状態とはなったが、結果的に元のプラン通り、アールの総合優勝に向けてチームのオーダーが出された形となった。

アールはこう振り返る。

「昨日は岡が優勝して、しかもグリーンジャージを着ることできたというのは、本当に彼にとっても良かった。そして今日も、彼には最大限のプッシュをしてほしいと思っていた。結果、彼は総合でまだ上位に残ることができている。

ただ、岡は他の総合上位選手と一緒に上ることができないから、チームとしては総合優勝のチャンスを自分に託してくれて、岡もそれに十分貢献してくれた。

岡が着ていたグリーンジャージは僕へとバトンタッチしたけども、岡はそのことを本当にハッピーなことだと喜んでくれたから、彼にも感謝したい」

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走り終えたアールと岡は笑顔でクールダウン

1日リーダージャージを着用した岡だったが、今日のレースを振り返り、こう語った。

「今日は結果的にネイサンが勝ってくれて、プラン通りというか。チームとしても正直、自分が総合を取れる確率が低いという計算だったので、序盤、ペースが上がらなかったら、自分も牽引に加わってくれと言われていました。

ただ、序盤からダイボール選手がペースを上げて、逆に自分がそこに付いていけなくて。早めに自分のペースに切り替えていれば、個人的にはタイムが出ていたかなと思うんですけど、そこの判断は失敗だったかなと思います。

その後、ダイボール選手がずっと引いてたのが見えて、そこにネイサンとベンジャと小石さんが付いていったので、そこからは自分に切り替えて、淡々と踏んでたんですけど、思ったより自分のペースが立て直せなくて。最終的に44分を過ぎちゃったので、直前に試走して、単独で練習の装備で走ったときと大して変わらなかったのは残念でしたね。

でも、チームとしては最高の結果で、個人的には総合(順位)で落ちましたけど、そこまで悪い順位じゃないので。あと2日間、まずは総合リーダーをちゃんと守れるように、それを最優先にして、展開に恵まれれば、個人的にはまた(狙いに)行きたいかなと思いますけど、そこはチームオーダーもあるので」

残すところ2ステージ。ロードレースは明日の相模原ステージが最後となる。総合逆転を狙うチームとステージ優勝を狙うチームの思惑が入り乱れることになりそうだ。また、接戦の山岳賞争いも明日で最後となる。

明日の相模原ステージは8時50分からスタートする。中継はこちらから。

https://www.youtube.com/live/kt9Z8pGTn9s?feature=share

ツアー・オブ・ジャパン 第6ステージ 富士山 リザルト

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1位 ネイサン・アール(JCLチーム右京)40分14秒

2位 ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)+34秒

3位 ドリュー・モレ(キナンレーシングチーム)+1分19秒

4位 ベンジャミ・プラデス(JCLチーム右京)+1分23秒

5位 小林海(マトリックスパワータグ)+2分4秒

総合順位

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1位 ネイサン・アール(JCLチーム右京)12時間59分5秒

2位 ベンジャミン・ダイボール(ヴィクトワール広島)+47秒

3位 岡篤志(JCLチーム右京)+1分7秒

スプリント賞

ルーク・ランパーティ(トリニティ・レーシング)72pts

山岳賞

兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)29pts

新人賞

リアム・ジョンストン(トリニティ・レーシング)

TOJ2023ステージ詳細

8日間の総走行距離は、722.3㎞。総獲得標高1万232mとなる。

第1ステージ【堺】

5/21(日)13:35

大仙公園周回コース

2.6㎞(個人タイムトライアル)

獲得標高 = 10m

第2ステージ【京都】

5/22(月)9:45

普賢寺ふれいあいの駅→けいはんなプラザ周回コース

<パレード6.6㎞> + <2.8㎞ + 16.8㎞ × 6周 =103.6㎞>

獲得標高 = 1,836m

第3ステージ【いなべ】

5/23(火)9:30

阿下喜駅前→下野尻交差点→いなべ市梅林公園周回コース

<パレード3.1㎞> + <8.6㎞ + 14.8㎞ × 8周 =127.0㎞>

獲得標高 = 1,650m

第4ステージ【美濃】

5/24(水)9:15

旧今井家住宅前→横越→美濃和紙の里会館前周回コース

<パレード4.0㎞> + <11.3㎞ + 21.0㎞ × 6周 =137.3㎞>

獲得標高 = 1,218m

第5ステージ【信州飯田】

5/25(木)10:00

下久堅小学校グラウンド前→下久堅周回コース→下久堅小学校グラウンド前

<パレード1.7㎞> + <10.8㎞ + 12.2㎞ × 9周 + 0.3㎞=120.9㎞>

獲得標高 = 2,580m

第6ステージ【富士山】

5/26(金)11:00

道の駅すばしり→ふじあざみライン→富士山須走口5合目

11.4㎞(一斉スタートヒルクライム)

獲得標高 = 1,160m

第7ステージ【相模原】

5/27(土)8:50

橋本公園→旧小倉橋→串川橋→鳥居原ふれあいの館前周回コース

<パレード4.8㎞> + <10.9㎞ + 13.8㎞ × 7周 =107.5㎞>

獲得標高 = 1,728m

第8ステージ【東京】

5/28(日)11:00

大井埠頭周回コース

<パレード3.8㎞> + <7.0㎞ × 16周 =112.0㎞>

獲得標高 = 50m

■ツアー・オブ・ジャパン2023公式サイト

https://toj.co.jp/2023/

■サイスポ・トピックス:
2022TOJ総括 コロナ禍収束第一歩での現在地

滝沢佳奈子

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