不動産の売主・買主双方の取引のチャンスが損なわれる「囲い込み」の実情

不動産の売主・買主双方の取引のチャンスが損なわれる「囲い込み」の実情

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2022/11/25
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不動産市況は空前の「売り手市場」なのに、いざ物件を売却しようとしてもなかなか買い手が見つからず、値引きを余儀なくされることがあります。その背景には、不動産仲介会社が売主と買主の双方の代理人となることで、手数料を両方から受け取れる「両手取引」という仕組みがあります。仲介会社がそのために行うのが物件の「囲い込み」です。これにより、売主と買主双方の取引のチャンスが損なわれることがあるのです。

「売れない」のではなく仲介会社が「他社に売る気がない」

売主から不動産の売却を託された不動産仲介会社にとって、買主も自社で見つけて「両手取引」をすることが最大のミッションであれば、売主と不動産仲介会社は思いを等しくできないことが容易に想像できます。

所有不動産が売れずに参っている売主があとを絶たない原因はまさにここにあります。不動産仲介会社は他社に売る気がないから、一向に売れる気配がないのです。

売主からあずかっている不動産を、自社が抱えている顧客に個別に紹介したり、自社サイトに掲載したり、不動産周辺にてチラシを配布するなどして、自力で買主を探していきます。

売主からあずかっている不動産を「両手取引」で2倍稼ぎたい不動産仲介会社が、なるべく情報をオープンにせず、「片手取引」をいっさい受け付けないような営業活動をすることを「囲い込み」といいます。

不動産取引機会の公正性確保のため、売主に売却を依頼された不動産仲介会社は、「レインズ」と呼ばれる不動産情報を集積しているデータベースサイトに売却不動産を登録するルールになっています。情報がオープンにされるわけですから、体裁上は誰もが公平に不動産情報を取得し、内見や取引申し込みができる状態となっています。

ところが実際は不公平であるケースも少なくありません。例えば、レインズで公開し物件を閲覧した他の不動産仲介会社から興味をもってくれそうな顧客がいるので、ぜひ内見させてほしいといった要請があっても、物件をあずかっている仲介担当者は「売主の都合がつかない」、「すでに購入申し込みが入っていて契約交渉中だ」と、本当か嘘か分からないことを言って遠回しに囲い込むことがあります。

他社の要請を承諾し、実際に内見に来た買い手候補が物件を気に入れば、片手取引となってしまいます。両手取引で稼ぎたい不動産仲介会社としてはこれをなんとしても防ぎたく、内見依頼を適当な理由をつけてかわすのです。

もちろんその行為は、不動産売却を依頼した売主の知らないところで行われています。

いわばこれは不動産の四方八方に衝立を立てられているようなもので、不動産を探している買主側にとっては、希望の物件に出合いにくくなる悪循環を生み出しています。売主にとっても買主にとっても、囲い込みは悪しき商慣習なのです。

レインズ掲載物件の9割以上が「囲い込み」の可能性

このような公正さを欠いた囲い込みが本当に横行しているのか、ほんのごく一部の不動産屋がやっているだけの話ではないのかと思う方もいるかもしれません。しかし残念ながら、レインズをより詳しく見てみると、多くの不動産が囲い込まれている事実を知ることができます。

レインズに掲載されている9割以上の不動産は「広告掲載区分」の項目が「不可」となっています。これはその名のとおり、物件を掲載している不動産仲介会社しか広告展開してはいけないことを意味しています。他の不動産仲介会社が物件を気に入り、うちで買主を見つけるために広告展開しようと思いついたとしても、広告掲載区分が不可であればいっさいの広告展開活動が行えないのです。

広告掲載区分が不可になっているということはすなわち、「囲い込んでいますよ」「両手取引を狙っていますよ」といった不動産仲介会社のメッセージともいえるわけです。他社が広告展開できないのですから、不動産が買い手候補の目に留まる機会も極端に減るわけなので、取引発生機会も著しく少なくなってしまいます。売主にとってこの状況は決して看過できるものではありません。

両手取引そのものは悪い手段ではありませんが、このようなルールとそれに付随した不動産仲介会社だけが得られるうま味があるからこそ、作為的な囲い込みが減らず、不動産取引のチャンスに恵まれず、悩む売主があとを絶たないのです。

たとえ囲い込みがあったとしても、大手不動産会社内での囲い込みであれば、顧客をたくさん抱えているから売却もスムーズなのではと考える方もいるかもしれません。

しかし残念ながら、大手不動産会社の社内連携には疑わしい点が多々あります。それどころか、同じ不動産会社グループ内であっても、支所同士で対抗し合い、足を引っ張りあっていることもあるのです。

同グループ内ですら「囲い込み」が行われることも

実際にこのようなことがありました。

ある大手不動産会社A社のX支店に売却依頼をしたところ、3ヵ月経っても一向に売れず、私たちのもとへ相談に来た売主がいました。

X支店への売却依頼を取り下げ、私たちのサポートで価格などいっさいの条件を変えず売却を開始したところ、1週間足らずで買主が見つかり売却成立に至ることができました。X支店の囲い込みの可能性が十分に考えられる一件でした。

しかも驚きだったのはこの不動産の購入者です。なんと売主が以前依頼していたA社の、Y支店だったのです。Y支店は以前からこの不動産に目をつけていたようでした。

目をつけていたのならなぜX支店から直接買わなかったのかと尋ねたところ、担当者からはさも当然というように、買ったらX支店の売り上げになってしまうため支店長が絶対に許さないからと答えたのです。支店同士で売り上げを競っているため、X支店とY支店の間で取引することなどもってのほかだったのです。信じがたい話ですが、グループ店同士の情報共有や連携はいっさい行われていないことを物語る実話です。

このようなケースは決して珍しいことではありません。不動産業界は他の業界に身をおく方から見れば非常に異質に映るような光景が、日々当たり前のように繰り返されています。資本の大きい大手不動産会社だから、という理由だけで不動産売却を任せるのは、この件の売主のような経験を喫することもあり、お勧めできません。

大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長

長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長

大西 倫加,長嶋 修

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