ピンクは姉、水色は私。幼少期の我が家のルールに反抗した二十年。

ピンクは姉、水色は私。幼少期の我が家のルールに反抗した二十年。

  • かがみよかがみ
  • 更新日:2021/04/08
No image

私には姉がいる。幼少期、母は二人に同じものを与える際、区別を付ける為、毎回ピンクと水色の二色展開で、「好きな方を選んで」と二人に言った。姉は真っ先に「ピンクが良い!」と叫ぶ。それを見て唖然とした私の手には、いつの間にか水色を握らされるのだった。

このことは、幼稚園の頃つまり、自我が生まれる頃には、すでに始まっていた。

リングを選びながら彼は言った「なんで女の人がこんなのが欲しいのか分からない」

我が家では「ピンク」は姉の色で、「水色」が私の色だった

そういうことが繰り返し起こり、いつしか姉がいない時でも、私は「水色にする」と言い、母も「ピンクはお姉ちゃんね。こっち(水色)をあげる」と言うようになった。我が家では、ピンクは姉の色で、水色は私の色だった。

幼い日々のファッションでも、それは顕著だった。姉はピンクや赤中心、レースやリボンモチーフの服を欲しがった。姉は、“お姫様”に憧れる幼児で、ふわふわした素材のスカートを穿き、髪の毛を結んでもらう時にはリボンを所望した。

反対に、母が選ぶ私の服は、水色や紺色のスカート、白いブラウスだった。遊び心がなく、模範的な格好だ。昔から、姉と似ていると言われたことはなく、姉のお下がりを着た記憶もなかった。

長年、これらを思い返すことは全くなかった。それなのに、社会人になった今、思い出すことになった。

断捨離の時に気付いた。私の服は「他人の顔色」を伺ったものばかり

きっかけは、断捨離の為、一人暮らしの小さなクローゼットの中を掻き分けたことだ。

端に押し込められた服は、「よくそんな服着れるね」と同期に笑われた、女の子らしい服。別に私は、“そんな服”と思ったことは一度もない。けれど、その一言以降、選ぼうとしては指が止まった。

その隣は、片思いの男の為に捧げた服。会う前日に苛々しながら選んだ、“彼の隣で歩いてそうな女の子”のコスプレ衣装。一年前の最後のデートの日以降、一度も袖を通していない。

反対の端には、とある友人好み服。これを見つけた私は、「あの子が気に入ってくれるはず」とはしゃいだ。

どれもこれも、他人の顔色を伺ったものばかりだ。服に罪はないが、全て処分の対象になった。そうして、クローゼットの中心には、選別に勝ち残った、真に私好みのお洋服たちが見事に鎮座するはずだった。

「はて、」と立ち尽くす。残った服たちを寄せてみれば、色味に差はあれど見事にピンクばかりだった。それらは全て、学生時代から、己の稼ぎで手に入れたものだ。殆どの服がピンク色・レース・フリルの要素を一つか二つ、持っている。そして、水色の服は一着もなかった。

袖にフリルが付いたブラウスの襟元には、ベルベットの細いリボンが垂れていた。マーメイドラインのスカートも、大ぶりのフリルが裾にあしらわれ、これはふくらはぎを細く見せる為、好んでいた一品だ。その隣には、レースのスカート。これは大活躍をし、そろそろ捨て時。どれも愛おしい。

ふと、私は「幼い頃に与えられなかったものを、自分で集めてきたのかもしれない」と思い至った。あの頃、ピンク色に目を奪われたことは勿論あった。「ピンクはお姉ちゃんね、あなたはこっちが良いよね」という母の言葉は、こっそりと私を傷つけた。偶には「ピンクが欲しい」と伝えたことはあったのだろうか。覚えていない。明確なことは、我が家では、姉がピンクで私は水色だと、アイドルの担当カラーみたいに決まっていたことだ。

これからは「自分の感情」に流されるまま、お洋服をまとえますように

幼いながら家族に気を遣った私が成長すれば、他人に文句が言われない服、会う人に合わせた“その人好み”の服を選ぶようになるのは、不思議なことではないだろう。自分が着たい服と、人がそれをどう見るか。自分の中で、その二つを闘わせている。ゴミ置き場に袋を置いた時、幼少期の自分が泣き止むような心地がした。

幼少期から続く無意識の選択に気が付いた後、ピンク以外も選ぶようになり、最近は、ラベンダーやベージュ、深緑が旬だ。

誰かに会う日、「あの子に好まれるような、嫌われないような服を」と思いながら鏡の前に立つのは、酷く虚しい。「私はこれが好き。これが着たいから着る」と思えるようになれますように。

冬が終わり、そろそろ春が来る。これからは、自分の感情に流されるまま、お洋服をまとって、ご機嫌で誰かに会いに行きたい。

【厳選】夫の裏切りの後に芽生えた「覚悟」、理想の「お嫁さん」の先にあった現実…夢見た結婚生活はいかに?2月に読まれたエッセイはこちら!

さつりころすけ

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加