コロナ禍の映画宣伝は“発想の転換” 女性客減少、海外キャスト来日中止の中での試行錯誤

コロナ禍の映画宣伝は“発想の転換” 女性客減少、海外キャスト来日中止の中での試行錯誤

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  • 更新日:2021/09/15
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対立から共闘へ。バディ感がたまらないハ・ジョンウ(左)とイ・ビョンホン

韓国コンテンツへの注目度は大きく変化

韓国で観客動員数820万人超えを記録した大ヒット映画「白頭山(ペクトゥサン)大噴火」(イ・ヘジュン、キム・ビョンソ監督)が日本で公開中だ。イ・ビョンホン、ハ・ジョンウ、マ・ドンソクという韓国最高の俳優陣が豪華共演を果たしたタイムリミット・ディザスターアクション。コロナ禍で宣伝活動がままならない中、同作の宣伝チームは意外にも手応えを感じているという。配給会社「ツイン」宣伝プロデューサーの松本作さんに聞いた。(取材・文=鄭孝俊)

――北朝鮮と中国の国境にそびえる白頭山が大噴火したことで高層ビルが次々と倒壊、交通ネットワークは大混乱、多くの車両を飲み込んでいく津波…。スケールの大きさと映像の迫力に圧倒されました。

「弊社はこれまでも話題の韓国映画を多数配給してきましたので『白頭山大噴火』は見逃せなかったですね。イ・ビョンホン、ハ・ジョンウ、マ・ドンソクという韓国の3大豪華スターが勢ぞろいしているのも相当すごい。韓国でもこれほどの大作はなかなかないと思い、ぜひやりたいと買い付けを決断しました」

――韓国映画のファン層に変化はありますか?

「近年、裾野が広がっています。『シュリ』(日本公開2000年)や『私の頭の中の消しゴム』(同05年)も大ヒットしましたが、韓国コンテンツへの注目度は当時と今では全然違うと思います。最近、Netflix(ネットフリックス)で配信されたドラマ『愛の不時着』や『梨泰院クラス』、米アカデミー賞受賞の映画『パラサイト 半地下の家族』はいずれも韓国のスタジオドラゴンが製作しています。この3作品は世界的に大ヒットし韓国コンテンツの評価を高めました。以前に比べて韓国の映画やドラマははるかに定着してきたと思います」

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DEXTER STUDIOSのVFXは迫力の映像 誰もがビックリ

――「白頭山大噴火」で描かれる都市崩壊のVFX(撮影した映像をコンピューターによって処理したビジュアル・エフェクツの略)はDEXTER STUDIOS(デクスタースタジオ)が担当していますね。

「迫力の映像には誰もがビックリすると思います。このような映像は近年の日本の映画ではなかなか見られません。20億円以上の製作費をかけているのでケタが違います。実はDEXTER STUDIOSは『パラサイト』のVFXも手掛けています。気が付かないかもしれませんが、街並みの風景がVFXによって作られています。街でロケをすればいいのでしょうが、ロケでは得られない映像をあえてVFXで作ることで、『パラサイト』の世界観に沿った街並みを作り上げています。ここからも相当の予算がかかってるのではと思いますね」

――プロの目からみた「白頭山大噴火」の魅力とは?

「壮大なブロックバスターで迫力満点なのですが、それだけではありません。物語の展開に着目すると、韓国軍爆発処理班のチョ・インチャン大尉(ハ・ジョンウ)がまず北朝鮮に侵入→核兵器の場所を知る北の工作員リ・ジュンピョン(イ・ビョンホン)の探索→核兵器の奪取→白頭山再爆発阻止、という4段階があります。この作戦を一つ一つクリアしていくというところはゲーム的な感覚なのかもしれません。また、アクション映画の要素にチョ・インチャン大尉と工作員リ・ジュンピョンのバディ感が加わり、運命が分かれるラストのシーンは泣けます。映画の成功パターンがこれでもか、というぐらい詰め込まれています」

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発想の転換で映画宣伝に取り組む松本作プロデューサー【写真提供:松本作】

キャストの来日イベント中止が一番痛い

――ところで観客動員はどのような状況ですか?

「コロナ禍になってから女性の客層は減少傾向です。女性は一人よりも連れ立って劇場に行く方が多い。コロナ禍で誘いづらい状況になっているため、映画館に足を運んでくださる女性客が減っているのではと考えています。ただ、『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』などのアクション映画は男性客が比較的多く、一人で劇場に来る方も多いので、『白頭山大噴火』もかなりの手応えを感じています」

――コロナ禍の中、宣伝方法はどのように変化しましたか?

「普段ならマスコミ試写を何度も行って記者さんやライターさんの反応を探ったり、良い作品だと口コミで面白さが広がっていきますが、コロナ禍で思うようにいかない、ということはありますね。一番痛いのはキャストを日本に呼べないこと。特にイ・ビョンホンさんは毎年ファンミーティングのため来日していたのですが、コロナで中断。来日してくれれば舞台あいさつやイベントを開催し、大勢のマスコミの方やファンに集まってもらって情報を拡散することができるのですが、それもできない状態です。実は『白頭山大噴火』は昨年公開予定だったのですが、コロナ禍が始まったので1年延期しました。1年後なら状況は変わるだろうと予想したのですが、まったく変わっていませんでした」

日本の自然災害を感じてもらえる新しいアプローチ

――それでどういう工夫をしましたか?

「割り切りが必要だと思い、発想を変えてみました。“大噴火”は日本でもあり得ることですから映画『日本沈没』(1973年)に主演した藤岡弘、さんのコメント、さらには防災アドバイザーの高荷智也さん、京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・名誉教授の鎌田浩毅さんら識者の方からコメントをいただいてメディア広報するなど、日本の自然災害を身近に感じてもらえるような新しいアプローチを試してみました」

――YouTubeで公開した「白頭山大噴火」のオールドバージョン予告編も興味深いです。

「レトロな雰囲気がしたと思いますが、これは映画『日本沈没』をオマージュしました。10月からはTBS日曜劇場『日本沈没-希望のひと-』がスタートするので、それも念頭に置いています。コロナ禍がいつ収束するのかまだ見通せませんが、SNSなどをフル利用しながらどうしたら新しい宣伝の形を作っていけるか、知恵を絞っていきたいと思います」

□松本作、1974年生まれ。大学卒業後、宣伝会社に入社。その後、いくつかの配給会社に所属し今に至る。「トガニ~幼き瞳の告発~」「王になった男」「神と共に」シリーズなど韓国映画を中心に宣伝を担当。

鄭孝俊

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