
大番狂わせも起こり、視聴率も高騰一辺倒という盛り上がりを見せているWBC。「史上最強の侍ジャパン」と呼ばれる日本が14年ぶりに「世界一」の称号を奪還する日も近い。そこで残る準決勝、決勝戦に集中するため、「層の厚すぎる」日本の選手陣やあなどれないメキシコの注意点などを振り返る。
09年のWBC日本連覇時と比べ「ベースボール」自体の水準が上がった
'09年の第2回WBC決勝、10回表。韓国の守護神、イム・チャンヨンに追い込まれたイチローはファールで粘り、8球目のシンカーをセンター前にはじき返した。日本がWBC連覇を引き寄せた歴史的瞬間だった。
あの歓喜の瞬間から14年、侍ジャパンは3大会ぶりの世界一を目指した闘いに挑む。メジャーリーガーの招集も進み、「過去最強の侍ジャパン」との呼び声も高い。
'09年大会でチーフスコアラーとして侍ジャパンの優勝に貢献した三井康浩氏がこう語る。
「'09年の優勝チームは、どちらかと言えば機動力や小技を重視する『野球』のレベルが高い選手が集まっていました。今回招集されたメンバーは、元々の『野球』レベルの高さに加えて、スピードとパワーを重視する『ベースボール』の水準が優れた選手が多くなったと思います」
つまり、大谷翔平や村上宗隆が秘める外国人にも負けないパワーや、佐々木朗希や山本由伸が投げるスピードボールは世界のトップと比べても遜色はない。

今年1月の選考メンバー先行発表の席にサプライズで登場した大谷[photo by gettyimages]
「さらに、日本の野球には相手のスキを突く走塁といった、海外のチームには無い緻密さがあります。私はきっと優勝してくれると信じています」(三井氏)
もちろん勝負に絶対は無い。だが、侍ジャパンが準決勝まで進む確率は高いといえるだろう。では、過去2大会連続で敗退した準決勝の壁を越え、さらにその先、世界一の称号を手に入れるにはいかに戦うべきか。メジャーリーグアナリストの福島良一氏が展望する。
優勝には「先に点を取ること」と「ツートップ」が鍵
「'13年の第3回大会は準決勝でプエルトリコと対戦して1対3で敗退。'17年の第4回大会も準決勝でアメリカに1対2で負けました。このスコアからもわかるように、実力伯仲の国同士が戦えば、2〜3点以内の投手戦になることが予想されます。まずは先制点を与えず、自分たちが先に得点を挙げることが重要です」
日本は先発・リリーフ共に世界屈指の陣容を擁しており、先に得点を挙げれば勝利の確率は上がる。そのためにカギとなるのは何か。
「大谷と村上の2人です。準決勝以降の球場はホームランが出にくいと言われていますが、彼らのパワーがあれば関係ありません。また、大谷が塁に出れば足でかき回すこともできる。塁上で投手にプレッシャーをかけることで、甘い球が来るまで辛抱強く待って、一発で仕留める村上の強みが活かされます。お互いによい相乗効果が生まれるでしょう」(福島氏)
「二刀流」と「三冠王」が初タッグ
大谷がエンゼルスに移籍した'18年に村上がヤクルトに入団したため、このWBCまで顔を合わせたことがなかった。大谷へのマークが予想される中、援護する村上の役割は重要だ。村上は'25年シーズンオフのメジャー挑戦を検討している。

村上宗隆[photo by gettyimages]

大谷翔平[photo by gettyimages]
さて日本は21日(火)、準決勝戦でメキシコと激突することが決まっている。あなどれないメキシコ戦での注意すべきポイントはなんだろうか?
メジャー防御率No.1の左腕が立ち塞がるメキシコ
「エースのウリアスはドジャースのエースで昨年、防御率のタイトルも獲った左腕です。彼が先発でくるとどんな強豪国でも負ける可能性が十分にあります。
鈴木誠也が辞退した日本は、左打者が多いですし、彼特有の斜めに曲がるスライダーには苦労するでしょうね。打線もメジャーリーガーだけで組める。しかも伸び盛りの選手が多く、勢いに乗ったら止まりません」(前出・友成氏)

フレオ・ウリアス[photo by gettyimages]
ここ2年の成績は37勝10敗と確実に貯金を作れるのが投手・ウリアスだという。
メキシコに勝ったとして、決勝戦はどうなるのか? その対戦国と、優勝への詳細なシミュレーションは以下の後編記事で行っている。本編では、次ページから日本の選手陣についての紹介を続ける。
後編記事『WBC、日本は優勝しかない!! 決勝戦、勝利までの完全シミュレーション《WBC過去最強の侍ジャパン》』はこちら
世界に誇る最強先発カルテット

ダルビッシュ有[photo by gettyimages]
メジャーリーグ勢では唯一宮崎合宿から参加し、国内組の選手との仲を深めたダルビッシュ。大会への並々ならぬ想いが伝わってくる。

大谷翔平[photo by gettyimages]
球団に二刀流での出場を認められた大谷には投打でフル回転の活躍が求められる。

佐々木朗希[photo by gettyimages]
高校日本代表ではマメの影響で1イニングのみの登板に終わったため実質的な国際戦デビューとなる佐々木。

山本由伸[photo by gettyimages]
今オフにもメジャー挑戦が噂される山本には、メジャーのスカウトも注目。WBCは実力を示す格好の場だ。
選球眼の良さがカギを握る
出塁率の高い外野手がこの2人だ。

ラーズ・ヌートバー[photo by gettyiamges]
セントルイス・カージナルスで三拍子そろった外野手として活躍するヌートバーは父がアメリカ人で母が日本人の日系アメリカ人二世。

吉田正尚[photo by gettyimages]
5年9000万ドルの大型契約でボストン・レッドソックスに加入した吉田。
奪三振マシンの中継ぎ陣
昨年大きくブレイクを果たした若き剛腕がこの2人だ。中継ぎ陣も「奪三振マシン」と呼ぶしかない水準となっている。

高橋宏斗[photo by gettyimages]
チーム最年少の高橋宏斗。20歳の右腕の最速は158km/h。鋭いスプリットが武器。

宇田川優希[photo by gettyimages]
昨季途中まで育成契約だった宇多川優希がWBCの代表に上り詰めた。2種類のフォークを武器に、回またぎもいとわない。
まだまだ炸裂する「奥の手」たち

日本のキーパーソン1・ダルビッシュ有[photo by gettyimages]
日本のキーパーソン1・ダルビッシュ有。09年大会では胴上げ投手に。日本代表で唯一WBC制覇の喜びを知るベテランの経験は決勝の舞台でも生きるはず。

日本のキーパーソン2・周東佑京[photo by gettyimages]
準決勝、決勝では1点が勝敗を分ける。必ずこの韋駄天が必要となるタイミングがあるはずだ。
後編記事『WBC、日本は優勝しかない!! 決勝戦、勝利までの完全シミュレーション《WBC過去最強の侍ジャパン》』では、メキシコ撃破後の決勝戦の相手をアメリカ代表と予想して、試合を完全シミュレーション。「WBC優勝」への道すじについてお届けする。