大人気音楽朗読劇がアニメ化!『MARS RED』放映開始記念、和楽器バンド・鈴華ゆう子&町屋(オープニングテーマ)×藤沢文翁(原作・音響監督)鼎談

大人気音楽朗読劇がアニメ化!『MARS RED』放映開始記念、和楽器バンド・鈴華ゆう子&町屋(オープニングテーマ)×藤沢文翁(原作・音響監督)鼎談

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  • 更新日:2021/04/08
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TVアニメ『MARS RED』読売テレビ、TOKYO MX他にて放送中 (C)藤沢文翁/SIGNAL.MD/MARS RED製作委員会

藤沢文翁による音楽朗読劇のアニメ化作品『MARS RED』。大正時代の東京を舞台に、人間とヴァンパイアによる濃厚なドラマが展開するこの作品に華を添えるのが、箏や津軽三味線、尺八、和太鼓といった和楽器とロックを組み合わせた唯一無二の音楽を奏でる和楽器バンドによるオープニングテーマ“生命のアリア”だ。豪華キャストによる朗読に音楽や特殊効果を組み合わせてスペクタクルを描き出す藤沢と、斬新なアイディアによって伝統的な日本の音楽に新たな息吹を吹き込む和楽器バンドのボーカル・鈴華ゆう子とギター&ボーカル・町屋。伝統や歴史の上でまったく新しいエンターテインメントを生み出し続ける両者の表現の根っこにある思いとは、そしてその表現によって目指すものとは? 初顔合わせとなった座談会は、お互いのシンパシーとリスペクトが溢れるものとなった。

朗読に音楽をつけて見せるのは、実は新しいようで古典的なんです(藤沢)

――まずは『MARS RED』という作品について伺えればと思うのですが、この作品が朗読劇として初演されたのが2013年。8年越しでアニメ化ということになったわけですが、この作品は藤沢さんにとってどんな作品ですか?

藤沢:まず、朗読劇って、それまではすごく静かで、楽器があってもピアノ1台みたいなものだったんですよ。この『MARS RED』が、今僕がやっているような音楽朗読劇の先駆けだったんですね。当時、東京ディズニーリゾートにシルク・ドゥ・ソレイユの常設劇場があったんですが、それが東日本大震災の影響で撤退することになって。その場所を借りてど派手な朗読劇をやってみようじゃないかということで、その大きな演出、大きな舞台に合うための作品として作り出したのが、このお話だったんです。僕にとってはターニングポイントの作品ですね。

――今までにない形の朗読劇としてこの作品を上演したときの手応えはいかがでした?

藤沢:でも、最初からうまくいくだろうなっていうのはあったんですよ。というのは、日本人って、そもそも浪曲だったり義太夫だったり、常磐津とか落語とか、言葉だけでものを伝えて、頭の中で想像して泣いたり笑ったりすることに非常に長けた民族なんですよね。朗読は西洋の文化ですけど、そこに音楽をつけて見せるのは、実は新しいようで古典的なことをやってるんです。それでやってみたら案の定、皆さんから大反響があったんです。

――鈴華さんと町屋さんは、藤沢朗読劇のことはご存知でしたか?

鈴華:はい。実は私の音大時代の仲間が藤沢さんの朗読劇に音楽で関わっていて、その仲間から話を聞いたりしていたんです。もともと、物語の世界を広げる部分で音楽って絶対に必要だし、私自身も詩舞(しぶ)をずっとステージで踏んできたりしていたので、そういうところで感覚的に「わかる!」って思っていました。

町屋:僕も友達のギタリストが参加していたので存じていました。先ほどおっしゃっていた、日本人が言葉に対して想像力を働かせやすい民族だっていうお話にはすごく納得したんですけど、それをこの規模で、このキャストでやってしまうというのは、やっぱりすごいですよね。

――日本の伝統と西洋の文化が合わさって生まれた、という意味では、和楽器バンドの音楽とも通じる部分がありそうですね。

町屋:僕らもライブをやるときはただのライブではなくエンターテインメントを作っている感覚なので、そういうところはかなり近いんじゃないかなと思いますね。

鈴華:私が最初に和楽器バンドを発想したのも、クラシックと、舞台で踊るのと、詩吟をするのと、全部別々でやってきたけど、それって別じゃなくてよくないかな?っていうところからだったんです。「一緒にしたら面白いし、誰もやってないんじゃないかな?」みたいな発想がもとで、洋楽器、和楽器、詩吟と舞、剣舞がひとつになったエンターテインメントっていうアイディアができていったので。もともと好きなものを集約させたいというところは、もしかしたら合い通ずるところがあるかもしれないです。

藤沢:それ、すごくわかります。僕も子どもの時からオペラを観て、ミュージカルを観て、歌舞伎を観て、お能を観て、みたいな感じだったので。優劣もなく、ただ面白いか面白くないかっていうだけのものだったんですよね。その中で僕も好きなものを詰め込んでやってるのがこれなんですよ。

鈴華:あ、一緒ですね!

藤沢:一緒なんですよ。たとえば小学生のときに歌舞伎を観にいくとか言うと「高尚な趣味だね」みたいな感じで言われたんですけど、「いや、今日観に行くの『女殺油地獄』というタイトルなんだけどなあ」って(笑)。古典って、意外とロックなんですよね。

鈴華:私たちも、自分に合ってる楽器は何かなっていう選択肢としてギター、ピアノ、尺八があった、みたいなノリでやってる人たちが集まってるバンドでもあるし。

藤沢:でも、ちゃんと狙いはあったんですよね?

鈴華:私自身の中には「なんでこれ誰もやらないの? 絶対ウケると思うのに!」という確信がありました。でもそれをやるためにはそれなりにお金もかかるし、音楽家だけではできない部分も出てくるから、仲間が必要だと思って。やっぱり、畳の部屋で鳴りやすい音は、ギターには負けるんです。それをステージ上で表現しようと思ったら、やっぱりそれぞれのプロがひとつになって向かっていかないとできない。そこはやっぱりみんなの柔軟性と、楽しいことをやろうよという思いでチームとして動けたというのがある気がしますね。

藤沢:実は僕も『MARS RED』の朗読劇をやったときに、すでにプロダクション・アイジー(アニメ制作会社)のプロデューサーを呼んでいたんですよ。

――へえ! それが今回のアニメ化につながっているわけですか(『MARS RED』の制作はプロダクション・アイジーのグループ会社であるシグナル・エムディ)。

藤沢:そう。アニメ化の話をそのときから進めていたんですよね。今お話を聞いて、それを思い出しました(笑)。

鈴華:私も最初、レーベルの方にプレゼンしました。「絶対ウケますから」って。

作品から品のある美しさと色気を感じて。そこを表現したいなあと思いました(鈴華)

――朗読劇だから、人物は動かないわけじゃないですか。でも、藤沢さんの中ではすでにキャラクターが動いているイメージというのはあったんですか?

藤沢:そうですね。それもやっぱり落語とかと一緒で、想像する脳みそをお客様が持ってらっしゃるので。でもひとつコツがあって、地の文、いわゆるナレーションをなるべく使わないようにしてるんですよ。お客様が没入できるように、会話のやりとりだけで成立するような脚本にしてるんです。これって実は、落語のテクニックなんです。たとえばご隠居の家に熊さん・八っつぁんが来ると。で、ご隠居が「ばあさん、ちょっと布団出してくれ。いや、寝る布団じゃないよ、座布団だよ」って言っただけで、そこが普段は寝る部屋でもあるような小さな長屋の部屋なんだっていうことがわかる。

鈴華:昔、ラジオでよくラジオドラマをやってましたよね。あれを聴いて想像がわーってなっていた、みたいな感じですよね。

町屋:僕らの場合は楽器の音色がやっぱりすごく強いので、言葉で説明するよりも早いんですよ。なので単純にお箏をバララランってやったり、尺八をブフォーってやったら、もうだいたい見えるじゃないですか、景色が。あとは歌詞に沿って、楽曲の世界観をよりよく作るためにそれぞれの楽器が華を添えていく。そうやって楽曲の世界を描くためにそれぞれのパートが役割を果たしていく作り方は、朗読劇にも近いかもしれないですね。

――今回の“生命のアリア”も、イントロから一気に景色が広がっていく感じが圧倒的ですよね。

藤沢:この曲には本編の物語を補完してもらっている感じがします。僕が普段やっている朗読劇も、実は「BGM」って言い方をしないんですね。「FGM」、フロントグラウンドミュージックって呼んでいるんです。役者とミュージシャンは対等に演じてるスタンスなので、オーケストラピットも使わないんです。それに、全部セリフでやってるわけじゃなくて、セリフでここまでいったらあと音楽に任せちゃう、みたいな演出もあったりする。言葉で語るよりも曲に語ってもらった方がいいこともあるんです。これ以上言葉で言ったら野暮ったくなってしまうというときに、「バンドのみなさんお願いします」って音楽に語ってもらう。この曲も、アニメの中でセリフで語られているストーリーでは語れない部分をすごく補完して、語ってくれている歌だなって。

町屋:ありがとうございます。曲ってだいたい4分半前後、その中で作品の内容を集約したいと思っていました。作品のダイジェストをやりつつも、実際に作品を観たときに作中のストーリーがリンクするワードをちりばめることによって、お客さんの理解度をより深めることができると思うので、そういうところを意識しながら作りましたね。

鈴華:うちのバンドの面白いところは、こういう作業を1回バンド全員がやるんです(笑)。だから、この作品に対してまず8曲ぐらいできるんですよ。その中でどれがいちばんふさわしいかを、バンド内でコンペするんです。今回もみんなで向き合って、話し合いながら作っていきました。こんなバンドも珍しいですよね(笑)。

藤沢:でもうらやましいです。僕、原作・脚本・演出なんですよね(笑)。ひとりぼっちなんですよ。いいな、バンドって。

――『MARS RED』という作品自体に対しては、鈴華さんと町屋さんはどんなことを感じましたか?

町屋:強さと儚さの対比みたいな部分があると思いました。これまでのヴァンパイア像って強烈に悪っていうパターンが多かったと思うんですけど、この作品は全然そうではなくて、キャラクターにもよりますけど、栗栖とかはすごく人間味が強かったりするし。そういう部分が他の作品にはないし、新しいヴァンパイア像だなって感じました。そこがいちばんフィーチャーしていくべきところかなと思って、ひとつの着眼点として曲を書き上げましたね。

鈴華:私はそれに加えて、品のある美しさとちょっとした色気も感じました。世界観としてなんですけど、色気といっても日本の、和の美の中にある品があって。その中で描かれる美しさに繋がるような世界観が作れたらいいな、個人的にはそこを表現したいなあと思いました。

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もともと中国から入ってきた楽器が日本の伝統になっている、そのミクスチャーこそが日本らしさ(町屋)

――この作品の時代設定だとか、「弱き者」としてのヴァンパイアというテーマはどういうところから生まれてきたんですか?

藤沢:これ、超リアルに「自分がヴァンパイアだったらどうしよう」って考えてみただけなんですよ。やっぱり、血液しか飲めませんと言われても「ああ、そうっすか」って隣の人にいきなりガブッといけるかというと、それはなかなか……ってなるじゃないですか(笑)。かといって血液がないと生きられないしってなったら、やっぱりそういう人たちのためのシェルターみたいな機関がないと困るよなっていう。

――なるほど(笑)。

藤沢:時代設定については、人間って何か突然変化が起きても、どうしようもなく日本人だったり、どうしようもなく人間だと僕は思うんですよね。大正時代って、西洋文化がバーッと日本に押し寄せた時代ですけど、その中でもどうしようもなく日本人的なところがあって、だからこそ和洋折衷っていう独特の世界観が生まれたんだと思うんです。そこにヴァンパイアが入ってきたとしても、やっぱりそこにはどうしようもない日本人の特性みたいなものが出てくるんじゃないかっていう。最初は「なんだこのギャグみたいな設定」って言われたんですけど、でもこれがリアルだと僕は感じるんです。

鈴華:わかります。私たちも、たとえば和を表現するとき、方向性がふたつあると思うんです。ギラギラした和の感じ、それこそ外国の方が好きな和の感じと、日本のこっち側から見る和があって。言葉にするのは難しいんですけど、これって好みだけの話じゃなくて、やはり日本人の中にある感覚があると思うんですよね。今のお話のような、いろいろなものを柔軟に取り入れながらも失われない日本人らしさみたいなものって、私たち自身もすごく持っているので、それをちゃんと表現してみたい気持ちは常にあります。

町屋:うん。江戸から明治に変わったりとか、開国して西洋の文化が流れ込んできて、それから次に第二次世界大戦の敗戦があって、そこでまた文化が変わったりとか、そういうところでできていった文化のミクスチャーが日本の独特な部分だと思うんです。それこそ和楽器も、もともと中国から入ってきた楽器ばっかりなんですけど、それが日本の伝統にもなっているっていう。そのミクスチャーこそが日本らしさのアイデンティティーのひとつだなって思いますね。

藤沢:そうですよね。僕、イギリスに留学していたときにカレーライスを作って、インド人に食べさせたことがあるんですよ。そうしたら「これはカレーじゃないけどめちゃくちゃうまい」って言われて(笑)。そういうところが好きなんですよね。

――そういう意味では、和楽器バンドがやっていることもすごく日本人っぽいミクスチャーなのかもしれないですね。海外ではロックバンドがバイオリン入れたりピアノ入れたりって当たり前だし、それが三味線や尺八になるっていうのも自然ですよね。

町屋:でも実際やってみると、技術的に結構厳しい部分は正直あるんです。だから、やりづらいからやってこなかったっていう人たちも、けっこういると思うんですよね。そこで柔軟に対応できる和楽器奏者がやっぱり少なくて。

藤沢:僕自身、津軽三味線をちょっと弾くんですけど、やっぱり調弦とか大変だなって思うんです。お箏とかも、駒を動かすだけでめちゃくちゃ時間がかかるじゃないですか。和楽器のことをわかってるPAさんも少ないでしょうし。大変だよなとは思います。

町屋:箏はライブのほとんどの時間を調弦に費やしていて、弾いている時間よりも調弦している時間の方が長いですからね(笑)。ライブ1本組み立てるときにも真っ先に箏の調弦が間に合うかどうかによって、「ここの曲間どうする?」という話から始めます。

鈴華:町屋さんも普通のギターよりもすっごい長いギターを、このバンドを始めてから使うようになったんですけど、それも曲間を繋ぐ演出のためにはギターを持ち替えてる暇がないなっていう理由なんです。じゃあ長いギター作って繋ごうっていう。

藤沢:革命じゃないですか!

町屋:単純にギターを長くして低い音が出るようにしていけば、持ち替えなくても全部カバーできるんじゃないかって思って、メーカーさんに相談して作ってもらいました。

藤沢:コロンブスの卵ですよね。

町屋:弾きづらいですけどね(笑)。でも弾きづらさは結局練習でカバーできるものなので。それよりもバンドがライブ1本やる上でどう見えるかを、僕は大事にしたいですね。

――藤沢さんの朗読劇も、まったく新しい形で朗読と音楽と演出を組み合わせて表現を作っていったわけじゃないですか。そういう意味でも、こうして『MARS RED』と和楽器バンドが出会ったのはすごく必然的だなあと思いますね。

藤沢:僕はもう完全にそう思っていますね。ありがとうございますっていう感じです。

鈴華:こちらこそありがとうございます。

町屋:同じアニメのタイアップだったとしても、こういう作品だとすごく、自分たちのスタイルで作品を彩りやすいですし。

藤沢:「派手」って言葉あるじゃないですか。あれって、三味線から来てるらしいんですよ。もともと津軽三味線の用語で、普通の弾き方を本手って言うんですけど、それよりもさらにパフォーマンス性、エンターテインメント性を高めるために本手を壊して「破手」って呼んだのが最初だって津軽の三味線奏者たちは言っていて。

鈴華:へえー!

藤沢:だから本手がまずあって、それを崩していくっていうものなんですよね。和楽器バンドさんってすごくそういう意味で「派手」というか、単にきらびやかという意味ではなくて、ちゃんと本手もあって、その上でそれを崩すことも知っているところをすごくリスペクトしてたので、この作品でご一緒できて嬉しいです。

取材・文=小川智宏

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