新型コロナでの地方移住は限定的!? 東京を中心に関東近県しか進まなかった現実

新型コロナでの地方移住は限定的!? 東京を中心に関東近県しか進まなかった現実

  • 日刊サイゾー
  • 更新日:2021/02/22
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いま日本の各地で「地方創生」が注目を浴びている。だが、まだ大きな成功例はあまり耳にしない。「まちおこし」の枠を超えて地域経済を根本から立て直すような事例は、どうしたら生まれるのだろうか?

本企画では、栃木県小山市にある白鴎大学で、都市戦略論やソーシャルデザイン、地域振興を中心とした研究を行う小笠原伸氏と、各地方が抱える問題の根幹には何があるのかを考えていく。

第3回目は、新型コロナの影響でリモートワークが広がり、その影響もあって「地方への移住が増えている」といわれる昨今。一部いきり立つ事業者や役所関係者もいる中で、その実情について話を聞いた。

◇ ◇ ◇

――新型コロナウイルス感染拡大は、「地方創生」の考え方にも影響を与えたことと思います。リモートワークが進んだことで、都市部に住む理由が薄れて地方に移住する人が増えるのではないか、という期待論も一部で出ていました。緊急事態宣言下だった2020年5月には、7年ぶりに東京都の人口が転出超過となったことも話題になりました。小笠原先生はこうした動向をどう読んでいますか?

小笠原 「東京から地方に人口が移動するのではないか」という期待はあったと思います。地方の自治体の中でも積極的に移住を宣伝するところはありましたが、実際には、大方の人が期待していたのとは、違う方向に進んでいると考えています。結局のところ、埼玉県や神奈川県、千葉県といった東京から交通の利便性が高い地域に移る程度の限定的なものだったのではないか、と。

――実際、その3県は転入超過となっている上に、東京から移ってきた人が多いというデータも出ています。

小笠原 現在のような状況になってから急に何か動き出すのではなく、前々から地域の魅力を高めたり新しい仕事をつくったりと、用意をしていた地域が受け皿になっている。多くの自治体では、地方創生に関しては中長期的な取り組みで臨んできました。でもコロナ禍が急に、5年10年単位で時間のネジを一気に巻いてしまった。厳しい言い方をすると、各自治体の、地方創生に関する取り組みの採点の場が急に生まれてしまったのかな、と見ています。

――それはどういうことでしょうか?

小笠原 人口減が進む2025~2030年頃にこうなっているかもしれない、という状況がすでに立ち現れてしまったということです。たとえば熱海、鎌倉といった地域へ移住を希望する人が増えているという話がありますが、どの街も以前から人気のエリアです。千葉や埼玉への移住もそうで、やはり東京からアクセスが良くて住む環境も整っているところに人が集まるという結果になるなら、「地方創生がんばろう」という方向を選ばない自治体が出てきてもおかしくないですよね。

――「仕事を増やして都市部から人を呼び込もう」という考え方を、諦める自治体が出てくる可能性もある、と?

小笠原 その考え方の実効性が高くないことがわかってきたとしたら、その道には向かわない自治体が出てくる可能性もあります。そもそも地方創生は一歩間違えると”近所迷惑”になる可能性を孕んでいるんですね。大都市から人を引っ張ってこようと思って政策として取り組みを進めた結果、人口は増えたけれど、実は隣の町からの転入者が大半だった、ということが起きかねない。近隣の自治体間での動きは大きいですから。そうすると「地方創生って結局なんなんだ」という議論が出てきても不思議ではありません。各自治体がそれぞれに「私達はなぜこれをやっているのか」「どの方向に向かうのか」を考えてやらないと危ういという状況が、コロナ禍によって急に差し迫ってきています。

――連載第2回「若者は地方から追い出されている!? 人口流出を止めたい自治体がみるべき現実」では、地方創生の一環としてコワーキングスペースをつくっても、そこを利用するような働き方が地域に受け入れられてなければ根付かないというお話がありました。リモートワークという働き方が浸透したことで、そのあたりに変化は起きていないんでしょうか?

小笠原 都市部では一気に理解度が高まりましたが、地方で地元の方々との交流や受け入れ含めて進んでいるかというと、なかなか難しいかなと思います。たとえば中山間地域のように人口が大きく減っている地域では、交流空間を設けて上手に活用しているところがある一方で、そういう成功事例を見ていきなりコワーキングスペースを作ってどう使うかといっても、役場レベルでは手が回りきらないと思うんです。「頑張ってもどうにもなりません」と白旗を上げるところが出てきかねない。それに、このコロナ禍によって、むしろオフラインでの交流が重要視されるようになっている側面もあります。

――緊急事態宣言下で、実際に会うことは控えるにしても、近距離に友人知人が住んでいることに、安心感を覚える場面はありました。自宅で仕事ができるとはいっても、近くに知り合いがいない環境に越すのは、今だからこそ心細いなと思います。

小笠原 そうですよね。リアルな関係で地元の人たちとのつながりを構築して維持したいと思ったら、なんのご縁もない地方に越すのはリスクが高いんです。そうすると、仕事場からは離れるけど知り合いの多い地域に移動したり、旅行や何かで訪れて交流や縁のある街を選んだりということになる。でもそれって、昔からあった考え方ですよね。

――地方創生の文脈ができる前からそれが一般的でした。

小笠原 だからこそ、繰り返しになりますが「地方創生とはなんなのか」が問われてしまうんです。

――一方で、今春の大学入試では東京の主要私大の志願者数が減少していると報じられています。入試改革の影響もあるので一概にコロナ禍のせいとは言えませんが、地元志向に拍車がかかっているというのは近年の傾向だと思います。地方にとっては喜ばしい動きなのではないでしょうか?

小笠原 地方創生のロジックに適う部分はあります。でもいちばん重要なのは、大学を卒業して地元で就職してくれるのかどうかです。地方大学が教育の面において東京の大学に劣るということはありません。ただ、地元の大学を出たところで働く先がなかったら結局都市部に出ていかざるを得ないわけです。一時的に若者人口が増えてめでたしめでたしとはいかない。ライフサイクルの中で地方で働く喜びを得られて幸せに生活できる環境を用意できなければ、コロナ禍が落ち着いた頃には若者は上京してしまうでしょう。それを地元の大人がどれくらい理解しているのかが勝負の分かれ目になります。

――やはりここでも仕事がキーになるんですね。

小笠原 例えばこのコロナ禍では全国各地で飲食店が経営に困っているじゃないですか。私自身、ご縁があって好きな遠方のお店がネット通販を積極的に行うようになったので、利用するようにしています。また、私が仕事でかかわっている茨城県の結城市では、町中にある「yuinowa」というコワーキングスペースの空いている場所を使って近隣の飲食店のお弁当を集めて販売していました。そういう取り組みをできているかどうかは、引いては自分たちの地域をどうするのかということを考えている人が1人でも多い街なのかどうかの現れです。役所が地方創生をうたっているから手伝おうというのではなく、自分たちがどうやってこの地域を変えていけるか。そういう人々がどれくらい地域にいるかもまた、コロナ禍によって可視化されてしまったと思います。

――たしかに、役所がいくら旗を振ったところで、それだけでは環境づくりは進みません。

小笠原 私が講演や執筆物でいつも言っているのが「他者のエラー、敵失で自分たちが成長することはない」ということです。コロナ禍で東京から人が流出しているのは「敵失」であって、地方の状況や環境が良くなったから移ってきているわけではない。口を開けて待っていてもラッキーが流れ込んでくることはないんです。「東京が大変だから田舎に人が来るだろう」というのは、完全にコロナ前の発想です。その感覚でいてはダメなんだということに、気づいているかどうか。ある意味、地方創生において今は最後の気づきのチャンスなんです。

<過去記事はこちら>
第1回:ありきたりな“町おこし”では地方がダメになる?担当者も困惑の「町おこしイベント」が乱立する理由
第2回:若者は地方から追い出されている!? 人口流出を止めたい自治体がみるべき現実

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