車離れの今、なぜトヨタのディーラーばかり車が売れまくるのか?

車離れの今、なぜトヨタのディーラーばかり車が売れまくるのか?

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  • 更新日:2018/07/23
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近年、自動車の販売台数は「若者の車離れ」や「少子高齢化」などの理由により減少傾向にあります。しかし、そのような状況下でも業績を大きく伸ばしている自動車ディーラーが、店内の「キッズコーナー」の充実を図っているトヨタ車の販売店。そもそも、なぜ自動車販売店に「キッズコーナー」が必要なのか、そこには「時代の流れ」が大きく関係しているようです。フリー・エディター&ライターでビジネス分野のジャーナリストとして活躍中の長浜淳之介さんが、なぜトヨタがそこまで「キッズコーナー」を充実させているのかを現地取材し、業績UPとの因果関係について分析しています。

キッズコーナーの「カイゼン」でも先端を走るトヨタ

自動車のディーラーがキッズコーナーを強化している。キッズコーナーが充実している店が、業績を伸ばす傾向が強まっているためだ。

日本自動車販売協会連合会の発表によれば、国内の乗用車の販売台数は、直近のデータでも2014年の約556万台が、17年には約523万台へと漸減している。人口の減少と高齢化、若者の車離れ、景気が回復し切れていない状況が指摘される中、一般のコンシューマーをターゲットに車を売るディーラーも、全般に苦境に立たされており、ファミリー、特に財布を握っている子育て世代の女性の心をつかもうと懸命だ。

「もう5年ほど前からの流れとして、どこのメーカーのディーラーもキッズコーナーに力を入れるようになっている。あるのが当たり前」(ネッツトヨタ東京)という声も聞かれる。

しかし、そうした自動車業界の流れの中でも、キッズコーナー設置にとりわけ熱心なのはトヨタのディーラーである。トヨタの自動車販売が、総じて景気に関係なく、高い実績を上げているのは、日本中の販売店にキッズコーナーを隈なく設けて、カスタマーサービスを向上させて車を売る姿勢も寄与している。

元々はメーカーのトヨタ自動車のほうから、各販社に対してキッズコーナーをつくるように要請があり、具体的にどのような展開をするかは各販社に委ねられた。従って、各店によって充実した施設を持つところから、とりあえず設置したというレベルのところまであり、トヨタのディーラーでもキッズコーナーの展開に差が出ているのが実情だ。その差が、顧客満足度に影響を与え、ひいては売上の差につながってきている。

車も、もう良い製品ができたから、それだけで売れる時代ではなくなった。操作性、居住性、安全性、燃費などといったスペックや、フォルムやカラーなどといったデザインばかりではなく、価格に加えて、売る側の環境づくりが重要になってきている。その象徴が、キッズコーナーなのである。

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レクサス千葉中央、キッズルーム内観

キッズコーナーの設置と商品レンタルを行うリトルツリー(本社・東京都江東区)の吉髙江社長は次のように語る。

「車というものは1回で売れるものでなく、お客様が3回、4回と来店して詰めて行くわけです。ご両親が販売員と打ち合わせている間、小さい子供は退屈してしまいます。そこでキッズコーナーが必要なのですが、子供が最低でも30分は飽きないで遊んでいられないと、意味がありません」。

せっかくキッズコーナーをつくっても、子供が10分で飽きてしまうような代物なら効果がない。吉髙社長によると、滑り台、ジャングルジムのような全身を動かすものは、感情が高揚して子供はすぐ飽きてしまうのだという。頭を使うものなら夢中になって静かに遊んでいる。

また、ディーラーの社員が子供の喜びそうな玩具をかき集めてキッズコーナーを展開しても、メンテナンスが行き届かず壊れた玩具が無造作に置かれていたり、ぬいぐるみがあるだけの寂しい状況だったりのような施設も多い。それでは親子共に寄り付かない。ひととおりキッズコーナーが行き渡った現状では、質が問われるようになってきている。

吉髙氏によれば、トヨタのディーラーは全般に消費者のニーズに寄り添ったキッズコーナーの改善でも先端を走っているとのこと。そういった事例を紹介してみたい。

子供の心をつかんだディーラーが、販売競争に勝つ

埼玉県越谷市にある、2008年に開業した巨大ショッピングセンター「イオンレイクタウン」を構成する商業施設の1つ「イオンレイクタウンmori」1階に、埼玉のトヨタのディーラーが一堂に集まる「トヨタモール」がある。「トヨタモール」は、「埼玉トヨタ」、「埼玉トヨペット」、「トヨタカローラ埼玉」、「ネッツトヨタ東埼玉」、「ネッツトヨタ埼玉」で構成され、レクサス以外の全販売チャネルが集結している。修理工場も兼ねている。

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カローラ埼玉イオンレイクタウン店外観

買物がてらにトヨタのあらゆる車種を見ることができるメガショールームの試みで、横浜市港北区にほぼ同じ時期に開業した「トレッサ横浜」では、同様のことをトヨタの系列会社が経営する商業施設で行っている。

販売チャネルごとに扱う車種も異なり、それぞれにキッズコーナーが設けられているが、中でも目を引くのは「トヨタカローラ埼玉」である。「トヨタカローラ」のショップでは、カローラ各種、プリウス、エスティマなど、ファミリー向けの車種を中心に取り扱う。「トヨタカローラ埼玉」イオンレイクタウン店では、顧客満足度アップの武器としてキッズコーナーを積極的に活用している。

「若い人たちは免許を積極的に取ろうとしないのですが、結婚して子供ができれば、移動手段として車が必要になります。保育園、幼稚園、小学校への送り迎えに欠かせないからです。車を平日に使うのはお母さんと子供なので、女性、子供の目線でショールームもつくらないといけないのです」(トヨタカローラ埼玉イオンレイクタウン店販売マネジャー・桐山仁志係長)。桐山氏は、年間新車最多販売賞を受賞したトップセールスマンである。

従来は、車というと男性が運転して女性が助手席に乗るイメージだったが、埼玉あたりだと夫は自転車と電車を使って通勤、車を使うのは休日だけという家庭が多い。主役が子供なので、ドアも蝶番式のタイプは好まれず、乗りやすいスライド式が売れる。妻にとっても、スライド式のほうが、買物をした荷物の運び込みが容易というメリットがある。

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埼玉・イオンレイクタウン店の「トヨタモール」。埼玉のトヨタディーラーが一堂に集まる

車を求める人はインターネットで情報を集めているが、いよいよ購入となると、現物を見て、となる。どの車を買うのか、夫婦である程度の合意の上で来店して、交互にキッズコーナーで子供の面倒を見ながら、商談を進めるケースが多い。

見た目の格好良さ、スペックの優秀性より、女性と子供にとってどれだけ使いやすいかが購入の基準であり、車庫入れやバックが難しいイメージがあるワンボックスカーも売れなくなってきているという。女性は、運転に苦手意識がある人が多く、そんな自分でも安心して乗れるかが最も重要で、男性が求めてきた走行の性能や斬新なデザインは二の次なのである。

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カローラ埼玉イオンレイクタウン店の「キッズコーナー」

10畳ほどあるキッズルームは、リトルツリーのプロデュース。全て木製の電車や線路、車、道路などを組み合わせて、立体交差をつくったり、鍋やコンロ、お皿、野菜などを使ってままごとをしてみたりと、頭を使う玩具を提案している。子供が考えながら遊ぶので、30分くらいは飽きずに過ごすことができるのだ。

同店のキッズルームは子供に人気があり、モールに買物に来たファミリーに開放している。車を購入しない人たちのほうがより多く利用している状況で、休日はいつも満員状態になる。販売には直結しなくても構わないのだそうだ。キッズルームからトヨタのショールームに親しみを持ってもらえれば、いざ車が必要となった時に自然と選ばれるからだ。まさに子供の心をつかんだディーラーが、販売競争に勝つのである。

レクサスはキッズコーナーもワンランク上

千葉市中央区の千葉駅にも程近い「レクサス千葉中央」は、「レクサス」販売店の千葉エリアにおけるフラッグシップ店だ。

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レクサス千葉中央店内、車の展示と商談ブース

「レクサス」というとラグジュアリーカーのイメージがある。一般の車との決定的な違いは、基本のフォルムは決まっているのだが、完全受注生産でその人だけのまさにオンリーワンの車が買えることである。外装や内装の色、シートのマテリアル、オーナメントパネルの柄がそれぞれ選べるのが特徴で、組み合わせによって全く違った印象の車になる。顧客が1つ1つ現物をショールームで確認しながら商談を進めなければならないため、時間が掛かる。詰めの段階では試乗も行う。

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パーツの打ち合わせ用サンプル

子供連れで来店した顧客にとって、納得できる車を買うには、子供が飽きずに遊べるキッズコーナーは欠かせないものだ。「レクサス千葉中央」ではキッズコーナーからより進んで、扉付きの部屋になったキッズルームを完備。子供の状況が外からも確認できるように、ガラス張りになっている。子供のことは一旦忘れて、半個室の商談ルームで車のオーダーを決めたり、ローン、リース、保険等の手続をしたりすることに集中できるのだ。

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レクサス千葉中央、キッズルーム外観

「レクサス」は金銭に少し余裕のある人が購入する車で、ボリュームゾーンのRXで700~800万くらいするが、顧客層は40代、50代ばかりでなく、最近は価値がわかる若いファミリーも増えてきた。年末にはもう少し低価格の2車種が発売される計画で、キッズルームの需要はさらに高まるだろう。

また、「レクサス」販売店では、顧客に車を気軽なものに感じてほしいという考えから、ユーザーがオーナーズカードを提示すれば、全国どの店でも旅行中、走行中にラウンジを使って休憩を取ることができる。そのような時に、キッズルーム、キッズコーナーがあれば喜ばれ、顧客満足度アップに寄与する。

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レクサス販売店の外観は、他のトヨタ販売店に比べて硬いイメージが強い

「レクサス販売店は他のトヨタの販売店と差別化しているため、表からは硬いイメージのお店に見られています。しかし、入ってきたお客様には、暖か味を持った接客に努めています。キッズルームでは危ないものはないか、細心の注意を払っています。天井には監視カメラも付いているので、ご両親は安心してお子様に遊んでいただけます」(レクサス千葉中央・佐々木隆史マネージャー)。

キッズルームの使われ方としては、夫婦で基本的な打ち合わせをしておいて来店し、夫が商談を進めて、その間、妻が子供を連れてキッズルームで遊ばせているケースが多い。ざっくりと決まった段階で、妻が商談ブースに戻ってきて最終確認をする流れだ。

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折り紙や子供向けの本も置いている

この店もリトルツリーのグッズを採用しているが、やはりままごとセットや鉄道のおもちゃなど頭を使う玩具は子供が飽きずに遊べる。絵本も置いてあって、お母さんが読み聞かせて時間を過ごすこともできる。キッズルーム設置の効果として、「レクサス千葉中央」は全国トップクラスの販売実績を誇っている。

ディーラーによって熱意に差が出る

リトルツリーは、創業して14年になるが、吉髙社長が家具デザイナー出身であることから、木製の遊具や玩具を、東京・門前仲町の工房で手作りしており、安全性が高い。レンタルでキッズコーナーに導入する方式を取っているが、専門の業者を入れてまでキッズコーナーにコストをかけようというディーラーは増えているものの、まだ主流ではない。

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キッズコーナーを展開するリトルツリーの門前仲町工房、作業風景

子供に飽きられないように年に3回、訪問して商品を取り換える。サスティナブル(環境や社会へのやさしさ)をコンセプトとしており、回収した木の玩具はもう一度すり減った部分を削るなどメンテナンスをして色を塗り直し、別の店に持っていく。

100ほどあるディーラーのクライアントのうち、トヨタ系が7割、残りは2、3件あるホンダ系を除いてマツダ系という。

吉髙氏によれば、トヨタ系以外では、最近はマツダ系が熱心にキッズコーナーに取り組みだしているが、外資系はほとんど無関心な傾向がある。日産は4、5年前に2つの系列の販社が統合して一本化され、その際にキッズコーナーが一斉に導入されているが、子供の心をつかむまでの内容に至ってない傾向があるようだ。

一方、2007年にキッズコーナーに進出し、1000ヶ所以上の納入実績を持つ、アートディスプレイ(本社・大阪府箕面市)の安藤邦昭社長によれば、最もディーラーで導入が進んでいるのは、ダイハツも含めたトヨタ系。遅れているのは、三菱自動車系、スバル系という。外車はヤナセの販売店なら、導入が進んでいる。安藤氏の目にも、「最近のキッズコーナーのレベルアップは特筆すべきこと」と映っているが、ディーラーによって熱意に差がある。

独身の頃、車を必要な時にレンタカー店で借りていた人も、結婚して子供が産まれると、子供のためを思って購入に踏み切るケースが増えている。だからディーラーも子供を主役に考えないと車が売れないのだが、「CS(顧客満足度)アップのツールになっていないケースも多い。子供が喜んで遊ばないところは、キッズコーナーではない」と手厳しい。夫婦が車の販売店で商談を進めている間、子供が親元に戻らず夢中で遊んでいないと、車の購入どころではなくなって、キッズコーナーの機能を果たさないからだ。

アートディスプレイでは、従来2畳ほどのスペースだったキッズコーナーを、せめて3畳以上に拡充するよう提案している。ショールームは25~30年に一度リニューアルをするが、そのタイミングで入るのを目指している。

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兵庫トヨタ自動車西宮店キッズコーナー。乾くと消えるお絵描き用ボードや絵本ラックなどを設置(出典:アートディスプレイHP)

専用ペンで描いて乾くと消えるボード「おえかきパタ☆ポン」や、裏面にマジックテープを取り付けたベンチ・マットと、毛足の短いカーペット素材が一体化してガッチリ固定する「ジョイントベース」などといった独自商品を開発。子供がマットを投げたり、ベンチを外して振り回したりと大人の想定外の遊び方をしてケガをするのを防ぎ、大人しくお絵描きで遊べるような環境づくりを行っている。子供の安心、安全を考慮して、国内の材料を厳選して、全て国内で生産している。

以上、見てきたように、カーディーラーでは全般にキッズコーナーの導入が進んでいるが、最も差別化した取り組みを行っているのはトヨタの販社である。全てではないが、トヨタの販社の中には、キッズコーナー専門業者に導入とメンテナンスを任せてCSを向上させている店が増えている。その導入効果として、トップクラスの販売実績を上げるディーラーが続出していると言えるだろう。

Photo by: 長浜淳之介

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