ソフトバンク、歪な“親・子・孫・ひ孫”上場に懸念広がる...複雑な資金還流構造

ソフトバンク、歪な“親・子・孫・ひ孫”上場に懸念広がる...複雑な資金還流構造

  • Business Journal
  • 更新日:2019/08/19
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ソフトバンクG、19年4-6月期決算を発表(写真:森田直樹/アフロ)

ソフトバンクグループ(SBG)は親子上場の解消という世の中の流れに、完全に逆行している。国内通信子会社ソフトバンクを上場させて、親子上場が1つ増えた。

ソフトバンクは2018年12月19日、東証1部に上場した。初値は1463円、終値は1282円と公開価格1500円を下回った。時価総額は初値ベースで7兆35億円と7兆円を超えていたが、終値ベースでは6兆1370億円と急激にしぼんだ。19年8月5日の終値は1458.5円。一度も公開価格を上回ったことがない。

とはいえ、SBGが株式市場から調達した資金は初値ベースで2兆6000億円。国内では1987年のNTT(2兆3000億円)が最高だったが、これを更新した。孫正義会長兼社長が率いるSBGは投資会社に変貌し、さらなる成長を追求する。調達した資金を、世界の有望企業に10兆円投資するビジョン・ファンドなどに投下する。

ソフトバンクの上場ではSBGとの親子上場が大きな問題となった。東証は2007年、親子上場について「一律に禁止はしないが、必ずしも望ましくない」と方針を定めている。日立製作所グループなど主要な上場企業の間で親子上場を解消する動きが広がっている。それなのになぜ、東証はソフトバンクの親子上場を承認したのか。

上場審査を担う日本取引所グループの自主規制法人は、「ソフトバンクの経営の独立性や親会社のSBGが投資会社に変質している」ことから、上場を承認したとみられている。

ソフトバンクはヤフーを子会社に

ソフトバンクの上場を機にSBGはグループ再編に動いた。SBGの子会社ヤフーは19年4月25日、「10月1日付けで持ち株会社制に移行し、社名をZホールディングスに変更する」ことを明らかにした。「オンラインとオフラインを融合した情報化社会の実現に向け、(ヤフーの頭文字の)YからZへとモードを切り替えていく」。川邊健太郎社長は社名変更の理由をこう説明した。Zホールディングスの傘下に、広告や検索などインターネット関連事業のヤフーやジャパンネット銀行などを統括する金融持ち株会社をぶら下げる。

さらに、ソフトバンクは19年5月8日、兄弟会社のヤフーを連結子会社にすると発表。ヤフーはソフトバンクに第三者割当増資を実施すると同時に、ヤフー株を36%保有するSBGから公開買い付けで自社株(=ヤフー株)を全株、5265億円で取得した。この結果、SBGのヤフーへの出資比率はゼロとなる。ソフトバンクは4565億円を投じ、ヤフーへの出資比率を12.08%から44.64%に引き上げた。ヤフーの親会社はSBGからソフトバンクに変わった。ソフトバンクがヤフーを子会社にしたことにより、SBG、ソフトバンク、ヤフーの「親子孫」の同時上場となった。

これを受け、絵に描いたような利益相反が起こることを懸念する声がマーケットに横溢した。ソフトバンクはヤフーを連結子会社にしつつ、残りの株式の上場を続けるのだから、投資家の目には「親会社がいいとこ取りをしている」と映る。子会社株を100%保有せずに支配権を握るということは、残りの株式を流通させて、投資家から現金(キャッシュ)を得るのと同義である。

ソフトバンクがヤフーの第三者割当増資を引き受け、ヤフーに4565億円の現金を注入する。その一方でヤフーはSBGが保有するヤフー株を買い取る。SBGは5265億円のキャッシュを手にするわけだ。ヤフーを経由してソフトバンクの資金がSBGに移動したことになる。SBGが子から孫会社経由で資金を吸い上げたと批判されても、金の流れを見る限り仕方がないことになる。

親・子・孫・曾孫の重層的な親子上場に綻び

ソフトバンクの宮内謙社長兼CEOは、独立した上場企業として通信以外の新規事業に成長を求めるには、兄弟会社のヤフーとの関係を深めることがベストだと考えた。両社が共同出資するスマホ決済サービスのPayPay(東京・千代田区)で非通信サービス事業を伸ばすというのが新しい成長の柱になるはずだった。

ところがグループ再編の過程で情況は一変した。ソフトバンクがヤフーを子会社にすると発表した日、PayPayはSBGから460億円の出資を受け入れることを明らかにした。この出資によりSBGはPayPay株式の50%を握ることになる。ヤフーとソフトバンクの出資比率は各50%から、それぞれ25%に低下する。PayPayはSBG直轄の子会社になったわけだ。SBGによるPayPayの子会社化は、PayPayがスマホ決済においてユーザー数、加盟店数ともにナンバーワンを目指すという宣言である。

PayPayを非通信サービス事業の柱にする考えだったソフトバンクは、PayPayを親会社のSBGに奪われたため、急遽、新たな収益源を探さなければならなくなった。ソフトバンクはすかさず子会社化したヤフーに役員を派遣し、ヤフーに個人向け通販事業の強化を求めた。友好関係にあったヤフーとアスクルの関係が悪化したのは、SBGの再編構想でヤフーがソフトバンクの子会社に組み入れられたことが直接の原因だといわれている。

SBGは中間持ち株会社を通じてソフトバンクの株式66.4%を保有。ソフトバンクはヤフーの44.6%の株式を握っている。ヤフーはアスクルの45.1%の株式をがっちり押さえた。投資家・孫正義氏が率いるSBGからみると、ソフトバンクは子、ヤフーは孫、アスクルはひ孫という関係になる。

完全子会社とせず、子会社や孫、さらにはひ孫の企業を上場子会社に“仕立て上げた”ほうが、完全子会社にするより安上がりだからである。ところが、アスクルの社長や独立社外取締役を強制的に解任したことで、「親・子・孫・ひ孫」の重層的な親子上場の綻びが生じた。世界に冠たる大投資家となった孫正義氏も猛烈なバッシングを受けることになるのか。もっとも、剛腕の孫氏だけに、「これからは少数株主の利益を保護します」と言って志を曲げたりはしないだろう。

(文=編集部)

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