今日午後にも可決濃厚な横浜カジノ補正予算案。その異常さを物語る12の事実

今日午後にも可決濃厚な横浜カジノ補正予算案。その異常さを物語る12の事実

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2019/09/20
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liu-yung-wei via Pixabay

◆結論ありきが明らかになった横浜市会、4時間に渡る質疑

2019年9月11日から横浜市会(政策・総務・財政委員会)で始まったカジノ補正予算案をめぐる委員会審査。林市長が「白紙」から突如として誘致を表明した8月22日の記者会見資料にはデータ捏造と言って差し支えない内容が記載されていたことは既に既報*の通りだが、委員会審査でも耳を疑うような事実が次々と明らかになっている。<*横浜カジノ誘致の根拠データに「作為」発覚。「横浜市の観光消費額は少ない」という欺き|HBOL

前回は、カジノ反対の立場の3名の市議会議員(共産・荒木由美子、無所属・井上さくら、立憲・花上喜代志)の質問に対する、横浜市の小林一美副市長や職員の答弁で明らかになった12の事実について、1~5までを紹介したが、今回は6~12までを紹介したい。

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◆例外だらけのプロセス

No6~9はカジノ誘致のプロセスが例外だらけであることを示している。

No6「本来は認定申請前に行う都市計画審議会や港湾審議会の前に、国へ認定申請するスケジュールに変わってる」について。従来は都市計画審議会や港湾審議会などの第三者機関による審査を終えた後に国へ認定申請するスケジュールとなっていたが、当日に提出された資料では国への認定申請と並行して、そうした審査を行う流れに前倒しされていた。しかも、資料では「都市計画等」という文言の「等」に港湾審議会を潜ませるという小細工も行われている。

以下、この件が発覚した際の井上さくら委員と横浜市のやりとりの抜粋を紹介する。

井上さくら委員:前回は、臨港地区だから港湾審議会を経なければいけないという答弁だったのでは? だから、前回は都市計画などは立てられないとおっしゃっていたはず。

小林副市長:はい。私のその発言は訂正します。今日提出したスケジュールが正しい。都市計画等の「等」に港湾審議会も入ってますので。

井上委員:「等」に? あ! この「等」に港湾審議会が入ってるの? えー? 私はカジノ・IRは反対だが、進めるためのやり方というものがある。本当に必要で、理解が得られると思ってやるなら、正々堂々とやってくださいよ。正規のやり方で。都市計画は、都市計画審議会とか港湾審議会をちゃんと第三者機関として設けているわけだから。認定申請は大きな行為だから、国への認定申請の前に、第三者機関の意思を聞くべき。

役所の資料で「等」が出てきたら都合が悪いものが隠れているのはよくある事だが、ここまであからさまに「等」を活用して、本来の順序を無視して、国への認定申請を急ごうとする横浜市の姿勢がよくわかる。

続いて、No7「『急いでいた』という理由で、2019/7/26に出したとされる補正予算の要求書の処理印には日付がない」について。当日に資料として提出された補正予算の予算要求書。決済文書でありながら、なぜかこの要求書の処理印には日付がなく、不審に思った井上委員はこの点を質問する。

以下、井上委員と横浜市のやりとりの抜粋を紹介する。

井上委員:予算要求書の処理印に日付がないのはなぜ?

局長:すいません。本来は日付があるべきだが、提出を急いでいたので、これで決済した。

井上委員:いつ本当に予算要求したか、わからないじゃないですか。これも市長が誘致を決断する7月31日の前の26日に要求書を出している。そもそも、日付が書いてない決済文書を出すのが信じられない。いつ起案して、いつ承認したか分からない決済文書なんて。

ただ「急いでいた」という理由で日付がない決済文書で手続きが進められていたことがこの質疑で明らかになった。さらに、No3とも関連するが、市長が誘致を決断する前に横浜市の職員は予算要求書を出すという不自然な行動に出ている。

◆カジノ誘致を進める前に決めるべきことが何も決まってない

No8~12は本来はカジノ誘致を進める前に決めるべきなのに、補正予算を通した後で検討するとされていることが並んでいる。つまり、本来あるべき順序と逆転している事柄だ。

まず、No8「横浜市の推進体制(自前なのか、委託なのか)」について。カジノ事業者の選定は全国でも初めてのことなので、当然ながら横浜市にはノウハウはない。従って、横浜市の職員を中心に推進するのならば早急な人材育成が必要。もしくは委託するのであれば、その点の検討も必要だ。しかし、横浜市は現時点で推進体制について何も検討していない。

以下、この件が発覚した際の荒木由美子委員と横浜市のやりとりの抜粋を紹介する。

荒木委員:カジノ業者選定のノウハウなどを横浜市は持っていないが、今後の業務は横浜市職員で実施する?それとも委託する?

局長:検討しなければいけない項目は多くあり、危機感を持っている。体制は今後しっかりとっていきたい。

荒木委員:それでは、新年度予算で体制をつくる?

局長:バタバタしていて出来てないが、考えなくてはいけない。

荒木委員:それを考えないで、そもそも予算は出せないでしょう。

横浜市の回答はお手本のようなゼロ回答。推進体制について何も考えてないことが浮き彫りになっている。

◆カジノ業者撤退時の対応も検討せず!

続いて、No9「カジノ事業者が撤退した場合の事業者側の責任を規約に盛り込めるか」について。カジノ事業者はビジネスが目的のため、初期投資を回収できた、もしくは採算が合わなくなった等のビジネス上の理由で将来的に撤退することは十分に考えられる。だが、この懸念についても横浜市は現時点で何も検討できていない。

以下、この件を指摘した際の荒木委員と横浜市のやりとりの抜粋を紹介する。

荒木:将来的にはカジノ事業者が撤退することもありえる。地域の疲弊、犯罪増加など事業者に対する責任は規約に盛り込める?

局長:撤退リスクは、協定で考えていかなけばいけない項目。国との話にもなる。

荒木:では、国との協議なので、今は決められない?

局長:今後の協議になる。

この横浜市の答弁からは国任せという姿勢がよく分かる。

次に、No10「カジノのマイナス面(ギャンブル依存症、治安悪化など)の検証や対策」について。横浜市はカジノ誘致によるギャンブル依存症や治安悪化について具体的な検証や対策は何も出来ていない。しかも、9月に審査されているカジノ補正予算案には、ギャンブル依存症調査として3000万円が計上されている。その中身は、市民から3000人を無作為抽出して、ギャンブル依存の傾向などをアンケート調査するという内容であることが9月11日の質疑で既に明らかになっている。本来であれば、依存症になる可能性がある人がどれぐらいいるのか把握した上で、カジノ誘致の意思決定をすべきだが、完全に順番が逆転している。

◆根拠不明の増収効果

次に、No11「市長が発表した増収効果の年間820億~1200億円の内訳は提示できない」について。横浜市は人口減少によって税収が減っていく中、カジノによって税収を増やすというのがカジノ誘致の大義名分であった。従って、この820億~1200億円という数字がどのように算出され、どのような内訳になっているのかをしっかり確認することは重要な意味を持つ。

以下、この件を確認した際の井上委員と横浜市のやりとりの抜粋を紹介する。

井上委員:増収効果820億円~1200億円は、一番重要。これから横浜市の財政が苦しくなるからカジノが必要だと記者会見で市長も強調していたので。でも、いまだに詳細が分からない。820億円~1200億円の内訳は?

局長:GGRに関わるので、事業者としては、一番出せないところ。我々としても、出せない。(※筆者注:GGRとは、総ゲーミング収益のこと。カジノ事業者がカジノで獲得した勝ち金総額から、課税を除いた金額)

井上委員:では、以前の見込み数字と、今回カジノ事業者が出してきたGGRの数字に開きはある?

局長:数字については、お話できない。

百歩譲って「カジノ事業者として出せない」という回答は認めたとしても、以前の見込み数字とのギャップすらも回答しないという横浜市の姿勢は不自然すぎる。

◆増収効果として挙げながら数字には責任持てず!?

最後に、No12「市長が発表した増収効果の年間820億~1200億円は今後検討する施設の条件(大きさ、部屋数など)によって変わる可能性がある。つまり、横浜市として担保できる数字ではない」について。No11で内訳が分からないことは既に伝えたが、そもそも820億円~1200億円という数字の信ぴょう性はかなり怪しいということも当日の質疑で明らかになっている。

以下、この件が発覚した際の花上喜代志副委員長と横浜市のやりとりの抜粋を紹介する。

花上副委員長:カジノは斜陽産業という見方が現実にある中で本当に成功するのか。増収効果などの数字は横浜市がしっかりと確認したものと理解しているが、年間820億円~1200億円の増収効果は間違いなく横浜市に入ると確信を持っている?

局長:事業者が出した事業スキームでやれば、この数字を得られる可能性はある。ただ、横浜市が考える施設の内容、ホテルや会議室の数などが関わってくる。

花上副委員長:その説明だと、これから横浜市が検討して、この増収効果の数字も変わっていくと言っている。そんなことで結論を出していいんですか。

この件は非常に重要なので、当日は井上委員も度々質問していたが、横浜市の答弁は一貫して「この820億円~1200億円という増収効果は、あくまでもカジノ事業者が算出したものであり、横浜市としては今後この数字を検証していく。さらに、施設の大きさなどの条件によって、この数字は変わる可能性がある」という趣旨の答弁を繰り返している。つまり、カジノ誘致の最大の根拠となる数字でありながら、横浜市はこの数字を担保できないと言っている。

◆カジノに触れず当選した自公市議は発言せず

以上が委員会審査で判明した事実12点だ。

これらの信じられないような事実が判明しながら、さらに信じられないことにこのカジノ補正予算案は委員会審査を9月17日に通過している。

なぜか?

この審査をしている横浜市会の政策・総務・財政委員会は過半数を自民党、公明党が占めているためだ。本記事で質問内容を紹介した3名(共産・荒木由美子、無所属・井上さくら、立憲・花上喜代志)は反対したものの、自民党・公明党の下記6名は賛成し、賛成多数となった。ちなみにこの自公の6名は、4時間以上に渡った9月13日の質疑において、ほとんど発言すらしていない。

自民党:大桑正貴(栄区)、佐藤祐文(港北区)、長谷川琢磨(都筑区)、遊佐大輔(南区)

公明党:髙橋正治(緑区)、斎藤真二(都筑区)

*()内は選挙区

このカジノ補正予算は今日9月20日午後の本会議でも可決される見込みが非常に高い。なぜなら、横浜市議会全体においても、カジノ賛成と見られる自民、公明が過半数を占めているからだ。今年4月の統一地方選挙で自公の横浜市議たちは「カジノ賛成」とは一言も言わなかったばかりか、選挙公報には「カジノ」のカの字も無かった。つまり、カジノへの賛否をうやむやにして当選を果たした市議たちが、カジノ誘致を着実に前へ進めようとしている。2年前の市長選挙の前後だけ「白紙」とうそぶいていた林市長の手口とそっくりだ。

<文・図版作成/犬飼淳>

【犬飼淳】

TwitterID/@jun21101016いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。最近は「赤黄青で国会ウォッチ」と題して、Youtube動画で国会答弁の視覚化に取り組む。犬飼淳氏の(note)では数多くの答弁を「信号無視話法」などを駆使して視覚化している。また、同様にYouTubeチャンネル(日本語版英語版)でも国会答弁の視覚化を行い、全世界に向けて発信している

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