デジタル化できない企業を待ち受ける「運命」とは

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2018/02/16
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近年、アマゾンやフェイスブックといった「プラットフォーム」を持つ企業のビジネスモデルが改めて世界の研究者たちの間で注目されている。

勝者が利益を総取りする「プラットフォームの経営学」とは? なぜ成功している大企業がデジタル化する必要があるのか、そして、そのための具体的な方法について検証する。

現代のビジネスは”自動車王”ことヘンリー・フォードが定義してきた。それは、組み立てラインを使って労働者が分業して製品を大量生産する、というものだ。フレデリック・テイラーが考案した「科学的管理法」は作業の標準化・効率化を実現した。それにより、私たちは自動車や洗濯機、旅行するための余暇などを手に入れることができた。

ところが、この”20世紀型成功モデル”が今まさに企業のデジタル化を阻害している。事実、効率化を目的に作られた組織は、変化によって社内の秩序が崩壊するのが怖い。そこで、多くの会社は組織運営の邪魔にならない程度に、ニッチな事業でささやかにイノベーションを目指す傾向にある。

アプリを作るのは簡単だが、デジタル化ははるかに難しい─。変革を中途半端なものにしないためにも、明確なコンセプトに基づいて進めるのが大事だ。ひとまず、「インダストリー4.0」などの標語を脇に置いておこう。

デジタル化を進めるに当たって必要なのは、次の3つの問いだけである。「なぜ?」「何を?」「どのように?」

1.「なぜ?」─勝っていても変わるべき理由

たとえ未来の売り上げや利益のためであっても、事業がうまくいっている会社ほど、生まれ変わるのが難しい。米レンタルビデオチェーン最大手「ブロックバスター」がよい例だ。

2004年、ブロックバスターは米国内に8000店をもつレンタルビデオ業界最大手として君臨していた。だから、その数年前に創業したばかりの新興企業「ネットフリックス」がインターネット上でDVDを借り、郵便で返却できる定額サブスクリプションモデルを導入したとき、ブロックバスターの経営陣は誰一人として見向きもしなかった。

すると07年、ネットフリックスはインターネット上で「動画配信サービス」を開始。DVDはたちどころに時代遅れのものとなった。郵送配達を待つ必要もなければ、郵送返却も不要、短い待ち時間で新作が楽しめる─。魅力的なサービスを前に、消費者はネットフリックスに殺到した。

慌てたブロックバスターも本腰を入れて動画配信サービスを開発したものの、その質は低かった。ネットフリックスはすでに市場で圧倒的なシェアを獲得しており、後発のブロックバスターは彼らを上回るサービスを提供できなかった。今日、ネットフリックスは動画配信業界最大手になり、ブロックバスターは10年に破綻している。

教訓は明確である。あなたの会社がどれだけ業界内でよい位置につけていようとも、経営陣がデジタル化のもたらす変化を過小評価しているようなら、極めて大きなリスクを抱えるということだ。変化を感じながらも、現在の売り上げを損ねたくないという理由でデジタル化を躊躇している会社にも、同じような運命が待ち受けている。

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「危機感の醸成」が最大のカギ

根本からの変革には、力と信念、そして多くの場合、きっかけが必要となる。たとえそれが廃業することへの恐れであってもいい。不安は人を駆り立てるからだ。実績のある企業の場合、それが社員にイノベーションを受け入れさせる理由になる。イノベーションは、デジタル化に当たって不可欠である。なぜなら、すべては新しい製品やサービスを低価格で提供できるよう開発するのが目的だからだ。要は、新しい価値提案が求められているのである。

ドイツの自動車部品製造大手「ボッシュ」のフォルクマール・デナーCEOは次のように述べている。

「ピザの注文やタクシーを簡単に手配する方法がいくらでもあるからといって、それが社会全体に与える影響を過小評価してはいけない。消費行動が変わり、彼らのお金は別の会社に流れ込んでいる」

障害と強みを見極め、目標を設定する

個人差こそあれ、デジタル化がすべての人に影響を与えることを私たちは知っている。CEOをはじめとした経営者たちが自問すべきなのは「我が社のビジネスモデルは時代遅れだろうか」「予定している変革だけでこと足りるだろうか」である。

求めているレベルが高い場合、変革後のビジネスモデルはまったく異なるものになるはずだ。世界的複合企業「GE」のジェフリー・イメルト前CEOは16年夏、「GEの全部門がソフトウェア開発企業にならなくてはならない」と語っている。重機や部品を販売・保守管理するのに加え、来たるIoTの世界に備えてソフトを開発するのが同社にとっての新しいビジネス領域なのだ。

なかでも、伝統的な企業は業務の多くが硬直化しがちだ。業績がよいときに変化の必要性を訴えたところで、従業員も適当に調子を合わせるだけだろう。本当に会社を変えたいならば、存在する障壁を見極め、取り除いていく必要がある。

明確な目的がないままでは、デジタル世界への旅はあてのないものになりかねない。だからこそ、経営陣は量的・質的な目標を立て、それをきちんと従業員に伝える必要がある。現在地と目標達成までの道のりを示す中間目標を設けるのもよいだろう。

2.「何を?」─デジタル化する意味とは

人によって「デジタル化」の中身は異なる。そこで、枠組みと計画が必要だ。「何を?」という問いに答えるには、次の3段階の枠組みを作るといい。

(1)新しいエコシステムを作る

第1段階の「エコシステム作り」では、戦略的に考えることが大事だ。イノベーションは、業界間の領域で生まれる。技術の進化に伴って生まれる可能性がある市場について考えなくてはいけない。

そして管理職は、「競合は新しい技術を使って我が社のビジネスを奪おうとしているか」「デジタル化で生まれるビジネス機会を理解し、新しい価値を顧客に提案できているだろうか」「伝統的な産業間に新たに利益が出る場所が生じているだろうか」といった戦略的な問いに向き合うことが求められる。

もし答えに不安を覚えるようなら、将来的に売り上げを他社に奪われる可能性が高く、現在のビジネスモデルを見直す必要性がある。破壊的な変化を想定して、新たなビジネス価値を提案できるビジョンを考えるべきだ。

(2)ビジネスの枠組みを作る

第2段階の「ビジネスの枠組み作り」では、実務的な課題に取り組むことになる。例えば、「デジタル化を利用して新旧さまざまな顧客にアプローチできているか」「デジタル化の恩恵を最大限に生かしているか」「デジタル化で経営や総務の仕事は効率化されているか」といった課題である。

デジタル化が影響を与えるのは主に顧客体験、製品イノベーション、付加価値という3つの領域である。なかでも強みを活かせるのが「顧客体験」だ。シンプルかつ安心できる手順で、アクセスから注文までユーザーに円滑な顧客体験を提供できる。外部の開発者向けにオープン・プラットフォームを開放している会社もある。それにより、イノベーションを起こすスピードを上げているのだ。また、受発注や顧客サポート、データ分析なども含めてバリューチェーン全体を上手にデジタル化した会社もある。

(3)基盤を強化する

第3段階の「基盤を強化する」とは、技術的、組織的な枠組みを整備することである。ここで考えるべきは、「我が社は最先端のテクノロジーを取り入れているか」「デジタルに精通した人材を引きつけ、他社とパートナーシップを築けているか」といった点だ。

ここでは、テクノロジーや企業文化が課題になる。現実的なことをいえば、既存のITシステムを短期間で入れ替えるのは不可能だ。もし新しいスキルが必要とあれば、それを習得する時間も考慮しなくてはならない。当然、会社は使い勝手がよく、処理速度も速い別のITシステムを並行して使う必要がある。それを活用できる優秀な人材も不可欠だ。そうした人材は社内に上下関係がなく、部署横断的に働けることを望む。つまり、企業文化も組織も根底から変わることが求められる。

3.「どのように?」─移行後のタスク管理

デジタル化に成功するには、組織の枠組みやプロセス、経営ツール、ITシステムなどを大きく変える必要が出てくる。取るべき3段階をご紹介しよう。

(1)計画を立てる

まず、デジタル化の工程表を作ることから始めよう。デジタルの世界に合わせて人や仕事を評価する仕組みが必要だ。次に、顧客との接点をすべてデジタル化すること。そして社内の縦割り構造を廃止した上で、デジタルに通じた人材を加えた分野横断的なチームを作ることだ。計画を立てることで、方向性や解決すべき問題の優先順位が明確になるだろう。

(2)デジタル企業色を強める

次に、試行錯誤を繰り返すデジタル企業の文化に合わせ、「習うより慣れ」のスピード感で事業を最適化していくことを覚える必要がある。

新製品やサービスは市場に投入し、結果を計測し、最適化する。予算は中間目標に紐付け、PDCAサイクルで効果を分析し、場合によってはプロジェクトを中止する。まさに、オペレーティングシステム(OS)のように動くことが重要だ。

(3)常にスケールし続ける

そして、常に最新の技術を取り入れつつ、スケールすることを意識し、会社全体とエコシステムにデジタル化を浸透させること。そのためにも、2本立てのITシステムを設けたほうがいいだろう。通常業務用と、短期プロジェクト用の2通りである。

デジタル化はCEOの使命

これが成功するか否かはすべてCEOにかかっている。しかし、決して容易にできることではない。実際、前出のGEのジェフリー・イメルト前CEOも「思いつきで重工業会社からオラクルやマイクロソフトのようになりたいと思ったわけではない」と話している。

11年、イメルトは130年近い歴史を誇る同社のデジタル化を一気呵成に進めた。ヒエラルキーや官僚主義を廃止する一方で、リーン生産方式を取り入れるなど、デジタル経済について学びながらやり遂げたものの、骨の折れる作業だった。

イメルトはまた、何千人とデジタル人材を雇っている。彼らが開発したIoT向けのオープン・プラットフォーム「プレディックス(Predix)」では、GEが開発したアプリのほか、外部の開発者の制作したアプリも使える。GEではすでにソフトウェアは大きな役割を占めている。それでもデジタル化が終わることはない。

このように、会社の命運はCEOの双肩にかかっていると言っても過言ではない。果たして、あなたの会社のCEOはイメルトのように兆候に気づき、早い段階でデジタル化を進められるだろうか? それとも、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が「私は馬を信じる」と自動車の台頭を一笑に付したように、流行りに過ぎないと考えてしまうのだろうか?

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