【エンタメよもやま話】義理チョコさえ贅沢...チョコレート“絶滅”食べられなくなる! 温暖化や中国...危機への打開策とは

  • 産経ニュース
  • 更新日:2018/02/14

さて、今週ご紹介するエンターテインメントは、久々となる“食”のお話でございます。

さあ2月14日。バレンタインデーですね。記者の地元、京都市の大丸京都店(下京区)の担当者によると、ここ数年、いわゆる“義理チョコ”需要が激減、自分へのご褒美(ほうび)として高級チョコを購入する女性が急増中だとか。

そんなバレンタインデーなわけですが、実は、バレンタインデーの主役となるチョコレートが食べられなくなる日が来ると最近、欧米で大騒ぎになっているのです。

「そんなアホなこと、あるわけないやん」と思ったあなた。間違ってますよ〜。なぜか。日本で竜巻が発生したり、東京が大雪になったりと、地球温暖化に伴う異常気象だらけの世の中。その温暖化のせいで、カカオ豆のもと、つまりカカオの木の生育場所がどんどんなくなり、2050年までにチョコレートが世の中から消えるというのです…。

というわけで、今回の本コラムでは、毎朝パンにヌテラ(チョコとヘーゼルナッツのスプレッド)をコテコテに塗りまくっている記者にとっても、人生を左右する一大事であるこのお話について、詳しくご説明いたします。

◇   ◇

■カカオ主要な生産国、チョコっとだけ…世界5割が消える!

昨2017年12月31日付の米経済系ニュースサイト、ビジネスインサイダーや、年明け1月2日付の英紙デーリー・メール(電子版)など、欧米の多くのメディアが報じているのですが、カカオの木というのは、赤道の北と南、すなわち北緯20度と南緯20度の狭い熱帯雨林の地域でしか育ちません。

つまり、気温、雨量、湿度が年間、ほぼ一定かつ豊富で、土壌も窒素を豊富に含むなど、極めて限られた条件下(熱帯雨林)でないと生育しない木なのです。

なので、主要な生産国は西アフリカのコートジボワールとガーナ、そしてインドネシアの3カ国なのですが、このうちコートジボワールとガーナの2カ国から収穫されるカカオ豆で、何と世界のチョコレートの生産量の約5割を担っています。

ところが、国際的な専門家でつくる地球温暖化についての政府間機構「気候変動に関する政府間パネル(ICPP)」が2014年に発表した報告書によると、こうした国々は、地球温暖化の影響によって、2050年までに気温がセ氏2・1度上昇。その影響で、栽培可能な地域が著しく減少するというのです。

どういうことかと言いますと、ICPPの報告書では、この気温上昇により、栽培可能地域が現在の海抜100メートル〜250メートルの地域から、一気に450メートル〜500メートルの山岳地帯に上昇すると明記されていたのです。この山岳地帯は、熱帯雨林の貴重な動植物を保護するための特別区といい、簡単にカカオ豆の畑に開拓するわけにいかないのです。

平たく言えば、2050年までに、世界のカカオ豆の生産量の約5割を占める一大生産国の畑が、地球温暖化の影響によってほとんど消滅するというわけです。

一大事ですね。ところが、この恐ろしい危機を打開すべく、ある企業が立ち上がったのです。日本でもおなじみ、チョコレートを使ったスナックバー「スニッカーズ」を手がける年商350億ドル(約3兆7800億円)の米マーズ社が、バイオ関連の科学者たちと協力し、こうした気候変動にびくともしない強力なカカオの木を作ろうと奮闘しているのです。

マーズ社では既に、世界各国の工場などが排出する二酸化炭素(CO2=地球温暖化の主原因)の総排出量を60%以上、カットしようという国際的な取り組みに対し、昨年9月、10億ドル(約1080億円)を拠出すると明言するなど、社として温暖化防止対策に力を入れる考えを表明しています。

そんなマーズ社で長期的な事業戦略の中心を担う最高サステナビリティ責任者(CSE)を務めるバリー・パーキン氏は、前述のビジネスインサイダーに「世界がこうした二酸化炭素の削減策に期待しているが、その取り組みの速度はまだまだ遅い」と明言します。

そして、このマーズ社のもうひとつの取り組みが、米の名門カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)の遺伝子学者ジェニファー・ドーナ氏との共同研究です。これが、遺伝子技術を駆使して、2050年になっても現在の熱帯雨林の地域で元気に育つカカオの木を開発することなのです。

■“強力カカオ”開発に成功すれば、食糧危機も消える

ドーナー氏の研究室は「イノベーティブ・ジェノミクス・インスティテュート(革新的ゲノム研究所)」と名付けられ、優秀な大学院生たちが日々、バイオ関連の新たな技術研究にいそしんでいます。

そして、この研究室でドーナー氏が先ごろ、発明したのがCRISPRという遺伝子の改変技術です。この新技術は、これまで絶対に不可能だった植物のDNAの細かで精密な微調整が可能になったといいます。

この研究室では、発展途上国の小規模な農家で、この新技術を活用してもらうための取り組みを進めています。例えば、途上国で毎年、何百万人もが餓死(がし)するのを防いでいるといわれる主要作物キャッサバ(和名はイモの木)の保護です。

キャッサバは食べる前に毒抜き処理が必要なうえ、毒抜きのために皮や芯を取り除いたイモはその場で加工しないと腐って食べられなくなってしまいます。

そこでこの研究室では、CRISPRの技術を使ってキャッサバのDNAを微調整することで、気温の上昇とともに増える毒素の発生を抑制するとともに、気候変動に強いキャッサバを作ろうとしているわけです。

ドーナー氏はこの新技術を広めるため、自身で「カリブー・バイオサイエンス」という会社を起業。遺伝子組み換え作物(GMO)を扱う大手、米デュポン・パイオニアとライセンス契約を結び、既にトウモロコシやキノコなどでこの新技術を使っているといいます。

ドーナー氏はこの新技術が、マーズ社のような大手の食品メーカーから、個人の園芸愛好家に至るまで、あらゆる分野に多大な利益をもたらすと考えていますが、これからは、カカオの木で本格的に用いられるというわけです。

ちなみに、前述したように、カカオの木が将来、大変なことになろうとするなか、チョコレートの需要はどうなっているのかといいますと、途上国での需要の増加で、世界的に見ると、カカオ豆の備蓄は“赤字状態”に向かうとみられています。

西欧の典型的な消費者は、年平均、286本のチョコレートバーを食べているといいます。そして286本のチョコレートバーを作るには、ココアの木が10本必要になるといいます。つまりココアの木10本から取れるカカオやカカオバターが必要というわけです。

1990年代以降、中国、インドネシア、インド、ブラジル、旧ソ連の計10億人以上の人々がココアの市場に参入しましたが、需要に供給が追いついていません。

英ロンドンの調査会社ハードマン・アグリビジネスのダグ・ホーキンス氏は前述のデーリー・メールに、カカオの木を育てる農法は何百年もの間、変わらず、ココアの生産環境は厳しさを増していると説明。「ココア農家の90%は、遺伝子組み換えの木ではなく、(昔ながらの)未改良の木を育てる小規模な自給農家が生産している」と述べ「われわれは今後数年間、年10万トンの“チョコレート赤字”に直面するだろう」と警告しました。

遺伝子を組み換えたカカオの木の登場が待たれます。でないと2050年には間違いなく、われわれ庶民がチョコレートを食べられなくなります。

今年のバレンタインデーにチョコを手にした人は、西アフリカのチョコレートの生産農家に感謝してチョコレートを食べるべきだと痛感したのでした…。  (岡田敏一)

【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。

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