仰天統合!孫正義とヤフーがLINEを欲しがるたった1つの理由

仰天統合!孫正義とヤフーがLINEを欲しがるたった1つの理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/11/18
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「寝耳に水」の統合報道

11月13日の深夜、衝撃のニュースが飛び込んできた。

「ソフトバンク傘下のヤフーとLINEが経営統合」という話題だ。

報道によれば、「月内にも正式決定」とのことだが、記事を制作している11月17日現在、両社からは「経営統合を協議していることは事実だが、決定した事実はない」というコメントだけが発せられている。

両社の統合話は、どのような経緯で生まれたのか?

彼らはなぜ、統合を必要としているのか?

それを、特にヤフーの側に着目し、数字を示しながらきちんと分析してみたい。そして、統合の先にどのような可能性が秘められているのか、その点を考察してみよう。

(編集部追記:2019年11月18日、ヤフーの持ち株会社、ZホールディングスとLINEは、それぞれ取締役会を開き、経営統合について合意したと正式発表)

孫正義がLINEを欲しがる理由

「ソフトバンクがLINEを買収し、ヤフーと統合する」

いかにも突飛な計画に思えるが、じつのところ、「孫正義氏がLINEを欲しがっている」という噂は、数年前からささやかれていた。

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ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長 Photo by Getty Images

理由は、情報端末の主役がパソコンからスマートフォンへと変化し、ヤフーというブランドが弱くなってきたことにある。

ヤフー──正確にいえば、日本法人である「Yahoo! Japan」は、1996年に誕生した。時代はまさに、インターネット勃興期だ。

ネットを使うための起点となる「検索サイト」「ポータルサイト」として、米Yahoo!との提携によって生まれたサービスである。ブランド名こそ同じであるものの、日本のYahoo! Japanと海外のYahoo!は別のサービスであり、以後、「ヤフー」と記載した場合には、日本法人であるYahoo! Japanのことを指す。

ヤフーに訪れた転機

その後、2000年代に向けてブロードバンド環境の整備がはじまり、パソコンを主役とするインターネット事業は本格的に立ち上がっていく。

その過程で、ヤフーは強い影響力を握っていくことになる。ポータルサイトとして、圧倒的な存在感があったからだ。

ブラウザーを開けば自動的にアクセスされて、検索やニュース閲覧がおこなえる──。そんなポータルサイトは多数あったが、ヤフーの利用率は図抜けて高かった。

そのヤフーに、重大な転機が訪れたのはいつだったのか?

1996年よりインプレス(現・インプレスR&D)が発行している「インターネット白書」から、1997〜2008年の、「主に利用している検索サイト」に関する調査(複数回答)をもとにグラフにしてみた。

2009年以降は統計手法が大幅に変更されたため、同じグラフにまとめることはできないが、スマホが普及しはじめる直前にあたる2008年まで、ヤフーが日本のインターネットにおいて圧倒的な存在感をもっていた、という事実がおわかりいただけるだろう。

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1996年よりインプレス(現・インプレスR&D)が発行している「インターネット白書」から、1997〜2008年の「主に利用している検索サイト」に関する調査(複数回答)を抜粋。ヤフーがGoogleを圧倒しているのがわかる。グラフは筆者製作拡大画像表示

Googleの台頭

ただし、このデータはアンケートに基づくものなので、いわば“マインドシェア”の統計に近く、実際のアクセス数とは若干の乖離がある。

次に示すデータは、ネットのアクセスログを集計するサービスである「Statcounter」が公開している、2009年1月から2019年11月までのアクセスログをもとにした、「パソコンで使われている検索サイトのシェア」をまとめたものだ。Googleの利用率が上がり、ヤフー一強というわけではないことが見えてくる。

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ネットのアクセスログを集計するサービス「Statcounter」のデータを使い、2009年からの10年間における、日本の「パソコンでの検索サイト利用率」を集計した。Google(赤)がトップシェアになるが、ヤフー(緑)も健闘している拡大画像表示

ところが、これを「世界全体でのシェア」と比較すると、さらにまた違った姿が見えてくる。

どういうことか?

世界全体のシェアにおいては、Googleに対抗できる企業はまったく存在しない。ほぼ独占といっていい状態にある。

そうした状況下で、20〜30%台のシェアを維持しているヤフーが、世界的に見れば「異常なほど強い」サービスなのである。

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先と同じ統計を「全世界のすべてのインターネット機器」を対象に集計したもの。Google(赤)のシェアが圧倒的で、日本とはまったく異なる様相であることがわかる拡大画像表示

ちなみに、Googleに対抗できるサービスが存在する国は、中国とロシア、そして日本くらいのものである。

「ヤフトピ砲」と「ヤフオク」

検索サイトとして、ヤフーがこれだけ強いブランド力をもつ背景はなにか?

そこに紐付く「ポータルサイト」としての力が強く、集金力がある、ということだ。検索流入による広告収入はもちろん、ニュースサイトとしてのメディア力も圧倒的だ。

ヤフーニュースを日常的に見ている人はきわめて多く、どのニュースサイトも、ヤフーニュースへの転載からの顧客流入と収入を加味して成立している。

特に、「ヤフートピック」のトップページに掲載されたことによるページビューの拡大は、ウェブメディアに関わる人々が通称「ヤフトピ砲」とよぶほど、大きな効果をもつ。

オークションサイトである「ヤフオク」の力も大きい。特に2000年代はヤフオクの利用量が多く、出品料などの多額の直接収入をヤフーにもたらした。

筆者は、2012年6月まで同社の初代社長を務めた井上雅博氏に、2004年頃にインタビューしたことがある。そのとき彼は、「ヤフーを支えているのはヤフオク。結果的に、広告収入だけでないビジネスを構築できたことが、他のポータルビジネスとの差別化になり、財政基盤の強化に大きな役割を果たしている」とコメントしている。

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井上雅博氏(2007年撮影) Photo by Getty Images

「スマホネイティブ」に苦戦するヤフー

パソコンで使ううえで便利なサービスを備えており、Googleよりもユーザーにとっての価値がわかりやすく、しかも、パソコン購入時からウェブブラウザーの「スタートページ」に設定されていることも多かった──。

そのことが、ヤフーの存在を強くし、日本有数のネットサービスへと成長させていった。

しかし──、携帯電話とスマートフォンの登場が、ヤフーのもつ価値を少しずつ、だが確実に変えていくことになる。

前出・Statcounterによる検索サイトのシェアを、こんどは「モバイル」に特化して見直してみよう。

ヤフーが依然として大きなシェアを占めることに変わりはないのだが、パソコンにおけるシェアと比較すると、全般的に数値は低めだ。そして、あらためてパソコンの側を見てもらいたいのだが、時代が今に近づくにしたがって、ヤフーのシェアは急速に落ちてきている。

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Statcounterによる検索サイトのシェアを、日本のモバイル機器に特化して抽出したもの。ヤフーの存在感はあるが、パソコンよりいくぶん低めになっている拡大画像表示

総務省が発行している情報通信白書(令和元年版)によれば、スマートフォンの世帯普及率は79.2%で、パソコンの74%を超える。フィーチャーフォンとスマホを合わせたモバイル端末全体では95.7%と、さらに大きい。

日本のネット社会においてスマートフォンが占める影響力が大きくなるにつれて、「パソコンで便利だった」という理由からヤフーを使いつづける人は減っていく。

「24歳以下の女性」が鬼門

ニールセンデジタルが2018年4月に公開した情報によれば、日本でオンラインショッピングやオークションサービスを利用している人の数は、パソコンからのそれよりも、スマホからのほうがずっと多くなっている。利用時間のシェアはさらに大きい。

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ニールセンデジタルが2018年4月に公開した、ECサイトの利用率。同社のウェブ利用統計サービスをもとに集計。スマホでの利用率・利用時間が急増している拡大画像表示

特に影響が大きいのは、パソコンを経ずにスマートフォンからネットを使いはじめた「スマホネイティブ世代」だ。なかでも、24歳以下の女性のデータでは、ヤフーの存在感の低下が鮮明になっている。

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同じく、ニールセンデジタルの2018年4月の調査より。24歳以下の女性では、メルカリやZOZOTOWNの力が強く、ヤフーの存在感が低いことが鮮明に拡大画像表示

ここから見えてくるのは、「メルカリ」に代表されるような、スマホとともに生まれ育ったサービスの価値の大きさだ。

ヤフーに、対抗すべき手段はないのか?

もちろん、ヤフーも手を打ってこなかったわけではない。

2012年に経営体制をあらため、社長が宮坂学氏に交代した後は、「モバイルファースト」を掲げてサービスの刷新を進めてきた。その結果、現在も「モバイルにおけるヤフーのアクセス数を維持できている」といってもいい。

今秋、ファッションのオンライン通販大手「ZOZOTOWN」を買収し、傘下に収めたのも、「スマホネイティブ強化」の一手だ。

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2019年9月、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長(左)とZOZOの前澤友作・前社長

それでもなお、スマホネイティブなサービスの隆盛、そして、GoogleやアップルなどのスマホOSをもつプラットフォーマーの影響は避けられない。

スマホでは、「アプリ」と「SNS」が起点になってアクセスが増える。アプリという新たなエコシステムのなかでは、ヤフーのブランドも「知名度の高いサービスの一つ」にすぎず、パソコン時代のような圧倒的な優位性は発揮できないのだ。

「ヤフー」ブランドを捨てる!?

そこで重要になってくるのが、まさに「アプリ」と「SNS」を起点としたサービス転換である。

まず、「アプリ」の面では、誰もが必要とするアプリを軸にサービスを組み立てなおす必要がある。その武器となるのが「決済」だ。

アプリをフックとしたモバイル決済では、その決済サービスを使う人すべてがアプリを見ることになる。広告もショッピングも、オークションもコンテンツビジネスも、決済アプリを介することで利用導線を強化できる。

だからこそ、ソフトバンクグループは、スマホ決済サービス「PayPay」を立ち上げたのだ。同社は、PayPayを「スーパーアプリ」と定義し、さまざまなサービスのゲートウェイにしようとしている。

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ソフトバンクの2020年3月期・第2四半期の決算説明資料より抜粋。PayPayを「スーパーアプリ化」し、窓口として活用する

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ヤフーは、2019年10月1日に持ち株会社名を「Zホールディングス」に変更した。このことには、重大なメッセージが含まれている。

「ヤフー」というブランドへのこだわりを捨てようとしているのだ。

福岡ドームを改称する理由

PayPayがスーパーアプリ化するなら、ソフトバンクにとっての新たな顔は、ヤフーからPayPayに移動することになる。

福岡ドームのネーミングライツ(命名権)を取得し、2013年以来つづいた「福岡 ヤフオク!ドーム」の名前を、2020年から「福岡PayPayドーム」に改称するのも、その現れだ。

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2020年から「福岡PayPayドーム」となる Photo by PhotoAC

とはいうものの、「起点」としてはまだ弱い。

スマホ業界には、「スマホネイティブ」なサービスで成功し、それをスーパーアプリ化しようと戦略を進めてきた先達がいる。

それこそが、「LINE」だ。

大成功したLINEがそれでも抱える「課題」

2011年6月にサービスを開始したLINEは、スマートフォンの普及と歩調を合わせて利用率を拡大し、現在は月間アクティブユーザー数が8200万人以上(同社2019年度第3四半期決算資料より)、スマホユーザーの利用率が80%以上という、圧倒的なシェアをもつサービスに成長した。

LINEは無料サービスだが、その上に「LINE NEWS」「LINEマンガ」「LINE MUSIC」などのコンテンツサービスを追加し、さらには「LINE Pay」のような決済サービス、「LINE証券」などの投資サービスへと領域を拡大してきた。

一方で、LINEはその戦略を完全に成功させてはいない。

圧倒的なシェアを活かし切れず、広告ビジネス以外の収益性がなかなか上がらないのが実情なのだ。

特に厳しいのが、LINE Payだ。

各社が繰り広げるキャンペーン攻勢のなかで消耗戦に突入した結果、一足先にそこから降りる決断をした。ユーザー数は500万人を超えたものの、一人勝ちの様相を呈してきたPayPayの勢いの前に飲まれたかたちだ。

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LINE Payは500万ユーザーに到達したものの、赤字を危惧してマーケティング投資額を絞った結果、伸び悩んでいる。一方でPayPayは、積極策で1900万ユーザーを超えた拡大画像表示

孫正義が「今」動いた理由

ではどうするか?

ここで、冒頭に話が戻る。

孫正義氏は、以前からLINEを欲しがっていた。スマホネイティブ市場への足がかりとして有望だからだ。

ヤフーやPayPayとの統合を実現できれば、文字どおり、日本国内向けの「スーパーアプリ化」が完成する。LINEがいくぶん弱体化し、ソフトバンクも投資案件で失敗がつづいたこともあって、「ここで勝負に出るべき」と判断したのではないか。

だからこそ、IT業界関係者の両社の経営統合ニュースに対する驚きは、「まさか」というより、「ついに」「今か」というものであった。

問題は、どう統合するか、だ。

両社のビジネスは重なる領域も多く、独自開発案件も少なくない。枝葉を切って統合するとしても、大ナタをふるうことが必要だろう。

「2020年の統合を目指している」と報道されるが、その舵取りは相当に困難だ。成否のほどはまだわからないが、歴史に残る企業統合になることだけは間違いない。

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