猫島に住む猫アレルギーの男、祐太と居候猫のスジコ

猫島に住む猫アレルギーの男、祐太と居候猫のスジコ

  • @DIME
  • 更新日:2017/11/14

■連載/ペットゥモロー通信

ニャン生いろいろ田代島 猫島に住む猫アレルギーの男とスジコ。

元祖猫島と言われる田代島。正直、自分もこの島に移住してみたいなんて思うこともしばしある。そんな思いを抱きながら「猫島に暮らす」ということを、この島に移り住んだひとりの男を通して、ちょっとだけ覗いてみた。

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彼の家に行くと、入り口の階段に2匹の猫がまるで門番のように待ち構えている。そしてその関所を通ると、縁の下からピョコピョコと様子を伺いながら何匹かの猫が出迎えてくれる。

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あれはスジコで、これはウニ。ジャンボにコタツ、ナナオ、マサミ、そしてベッキーと彼は紹介してくれる。最近ではガンモにチクワ、そしてチクワブも加わったからもう覚えきれない…。

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彼の名前は祐太。この島で友達として付き合っている一人で漁師をやっている。そしてフェリーが入港する際の「綱取り」という仕事も。綱取りとは彼がデカいからといってお相撲さんのことではなく、大型船が港に停まる際、船からロープを受け取り、ビット(船を繋ぐ係船柱のこと)に繋ぐ仕事。

おそらく田代島へ着くと一番はじめに目にする男だろう。ちなみに彼はこの島が猫島と知らず移り住んだ移住者で、さらに猫アレルギーだと言う。

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スジコとの出逢い。

この島に渡ると彼の家に何度も足を運ぶ。波の音と心地よい風、天気の良い穏やかな日は特に時間の経つことを忘れる。そしてこの絶景を見ながらいろんな話しをするのが楽しみ。

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彼はこの島に移り住む前、水商売の世界にどっぷりと身を置き、甘いも辛いも経験してきた。いつしか地に足をつけた人生を歩みたいと思っていた矢先、「漁師の勉強をしませんか?」と言う求人に出会ったと言う。

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これをきっかけに2010年6月、体験アルバイト期間を経て田代島へ移住。住居を借りてリフォームをしながらの生活の中、あの東日本大震災が起こった。大泊港側にあった彼の家は津波に流され跡形もなくなったが、島の人の支援のおかげで仁斗田港側に現在の住居を借り住んでいる。

その時、リフォーム中の縁の下から顔を覗かせていたのがスジコ。お腹をすかしていたスジコに餌をあげるようになり次第とその距離を縮めていった彼。

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タイトルで「猫アレルギーの男」と書いたが、冗談ではなく猫が近づくとタラーッと鼻水を垂らす。とにかく生活を一新し、人生のリセットを思いこの島に移り住んだわけだが、まさか猫島だったとは知らなかったらしい。さらに追い打ちで猫アレルギーだったとは。

スジコの家族。

以前、彼のフェイスブックで「夜中に天井が落ちてきた!」という衝撃的な記事がアップされた。よくよく話を聞いてみると、天井裏に忍び込んだ猫が、老朽化した天井もろとも降ってきたとのこと。その天井はどうした?と聞くと「島には大工さんいないでしょ。自分で直すしかないよね。」と。

島の人たちは家の修理やらリフォームは材料を船で運び、すべて自分で行うそうだ。器用でなきゃ住めないかも。

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その天井から落ちてきた猫がスジコ。とても人懐こく、彼の家の中に入って遊んでいた唯一の子。室内飼い?と聞くと「居候さ。」と一言。

「くしゃみが出るけど我慢して布団で一緒に寝たよ。ただ外の生活が長いからトイレはダメなんだよね。その時は外にお帰りいただくけどね。」布団やあちこちにオシッコをされたそうだけれど、それでも一番相性が良かったと言う。

彼の家にいる猫のほとんどはスジコの仔。ナナオ、ベッキー、マサミ…初めて聞いたときには独身男の寂しさから名付けた女優シリーズ?と思ったけれど、ここは深くは問い詰めないことにしよう。

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名前を決める時って、その時々のタイミングだと彼は言う。例えば、ウニ剥きのシーズンに出会ったから「ウニ」、寒い季節に産まれたから「ガンモ」など、おでんシリーズになったりと。ここは猫島、数多くいる猫の名前を付けるにも一苦労。大泊港方面には高級外車の名前を持つ猫もいるという話しを聞いたが、この話しはまた後でね。

スジコの仔たちはチビッコの頃から撮っているけれど、一番のお気に入りはコタツかな。この仔は頭に「!」マーク、背中には小さな天使の羽を背負っている。ちょっとビビりで、猫風邪もよくひく一番痩せた小さい仔。でもこれが元気いっぱいに一番よく遊ぶ。そんなところに引かれたのかな。スジコ母さんよくぞこの仔を産んでくれました!という感じ。

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そんなスジコも今年の5月16日に亡くなった。「本日、スジコが旅立ちました。」と彼からのメールでそのことを知った…。3月に会ったときは元気だったけれど、厳しい自然の中で生きると言うことはそういうことなのだと、改めて実感した悲しい日でもあった。

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猫?飼っていないよ。

田代島を「猫島」と知らずに移住した祐太。しかも猫アレルギー。そんな彼に「猫好きなの?」とストレートに切り出してみた。するとしばらく沈黙が続き、そして重たい口を開いた。

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「子供の頃、家にラッキーってとっても懐こい三毛猫がいたんだ。」とちょっと寂しそうな顔を見せた。ラッキーは、福(白さば)、吉(黒キジ)、幸(三毛)の縁起の良い名前を貰った三匹の仔猫を出産し、すぐに亡くなったとのこと。

「残された三匹を、ねーちゃんと一緒にミルクを飲ませて育てていたけれど、いつの間にか親父が捨ててきちゃったんだよね。きちんと面倒を見られなかったという負い目もあったし、ラッキーとの別れも辛すぎたから、もう猫は飼わないとそのとき決めたんだ…。」と切ない想い出を話してくれた。

今、彼の家にはコタツをはじめ何匹かの猫はいるが、その口から「飼い猫」と聞いたことはそういえば一度もない。

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「可愛いから餌をあげているとか、世話をしているとかじゃないよね。この島での生活のひとつだから…ね。」

確かにこの島の人たちにとって猫は生活の一部。猫はペットではなく、昔からいる共存者なのだろう。

「いまだに思うよ。ラッキーはホントいい猫。この世で一番ね…。」

彼はラッキーのために、ほかの猫とあえて一線を引いているようにも見えた。

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花があったら水をやる。

以前、この島で育った方に話を聞いたことがある。

元祖猫島と言われるこの島も、かつては1家庭1匹が原則だった。もともと蚕の養殖が盛んでネズミよけに飼われたのがきっかけ。仕事をする猫たちは大変かわいがれていたと言う。

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今もこの島には動物病院はないが、大昔は動物の避妊・去勢なんて話はない。当然、自然繁殖があり、間引くことも必要だったと言う。

「こんなこと言っちゃ今は大問題になるけれど、俺が子供の頃は生まれた子を海に流しに行くのは子供の仕事だった。そりゃ辛いさ。」と、その方は重い表情を浮かべながら聞かせてくれた。

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時代が変われば、生活を支える産業も変わる。産業が変われば、島を離れる人もいる。同時に猫の生活も変わってくる。すると猫は自然の中で繁殖し、現在の「猫島」になってくる。

この島の人たちにとって、猫との暮らしはどんなものなのだろうと聞いてみたかったが、祐太の言葉からとてもシンプルな答えを見つけた。

「花があったら水をやる。」

猫島だからといって島の人たち全てが猫を家で「飼っている」わけではない。もちろん心から猫が好きで猫のために一生懸命尽くす人もいれば、猫が嫌いな人だっている。猫がいてこの島があるのではなく、この島があって、生活の一部に猫がいるのだから、当然のことだと思う。

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「お腹を空かしていれば手を差し伸べることは人として当然のことでしょ。」と。

島民になるには3年かかる。

この島から「猫」を差し引いても、のんびりとした時間の流れに充分な魅力を田代島には感じることができる。ここで余生を過ごしたいと思うが、「移住」って口で言うほど簡単なものではない。

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祐太の生活を覗いてみると、漁業、綱取りの仕事だけでなく、水道品質管理、油(ガソリンなど)の販売、衛生係、港の係などを掛け持ち、そして年配者へのサポートも率先して行なっている。

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島民になるには3年かかると彼は口癖のように言う。役所で住民票を移すのに3年かかりますよ的なことではない。小さな努力や貢献で信用を積み重ね、「人となり」を認めてもらいはじめて島民の仲間入りができるという訳だ。

年配者が多いこの島では、荷物が沢山あると言われれば家まで運んだり、船に乗りたいと言われれば港まで送迎したり、島を守る消防団だってもちろん例外ではない。この積み重ねこそが先住者との絆になってくる。

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人との関わりを大切にする彼ならではの、信条と努力がそこにはあった。

俺は「猫の島」としてここにきていないしね。

たまたま「猫の島」だっただけのことだよ。

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なんだかんだと言っても、人一倍、情の厚い男。

また来るね。祐太。(^^)/

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文・写真/ケモノの写真作家 小山 智一(NeCozou)

2017年11月記

●ケモノの写真作家 小山 智一(NeCozou)
クリイティブディレクター、コピーライター、グラフィックデザイナー、エディター、そしてフォトグラファーとその全てをひとりで熟す異色の写真作家。
http://ne-cozou.com

構成/ペットゥモロー編集部

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