コーヒーや紅茶のカフェインをトリガーに「糖尿病を治療できる」という研究結果が発表される

コーヒーや紅茶のカフェインをトリガーに「糖尿病を治療できる」という研究結果が発表される

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  • 更新日:2018/06/22
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byZach Inglis

コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインには「目を覚ます効果がある」とされている一方、過剰に摂取すると体に悪影響を及ぼすとも言われています。そんなカフェインを特殊な合成遺伝子を組み込んだ糖尿病の動物に投与することで、カフェインを細胞のトリガーとして「糖尿病を治療できる」という研究結果が発表されました。

Caffeine-inducible gene switches controlling experimental diabetes | Nature Communications

https://www.nature.com/articles/s41467-018-04744-1

Scientists use caffeine to control genes—and treat diabetic mice with coffee | Ars Technica

https://arstechnica.com/science/2018/06/can-coffee-treat-diabetes-it-can-in-mice-with-this-synthetic-genetic-implant/

チューリッヒ工科大学でバイオ工学の研究を行っているMartin Fussenegger教授が率いる研究チームは、動物の体内に特定の物質が投与されることをきっかけに合成遺伝子のシステムが発現し、体に作用する仕組みについて研究しています。体内に投与する物質を選定する際に、細菌や強烈な抗生物質といった体に副作用を与える可能性があるものを避けたいと考えたFussenegger氏らは、毒性もなく安価に製造できる身近な物質として「カフェイン」をトリガーに使うことを考えました。

カフェインを動物の体内で検出する遺伝子を作成するため、研究チームはラクダの体内にある「カフェインに反応する抗体(aCaffVHH)」を利用しました。aCaffVHHはカフェインに反応して2つのaCaffVHHが1つに結合(二量体化)し、その中にカフェイン分子を抱き込むという特性を持っているとのこと。研究チームはaCaffVHHの「カフェインを検知すると二量体化する」という特性を利用して、aCaffVHHに「二量体化することで機能する」タンパク質を融合させ、カフェインをトリガーにして動物の体内で特定の働きを行わせる実験を行いました。

研究チームはシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)という細胞増殖を制御するタンパク質が二量体化すると、SEAPという酵素を産生するように遺伝子を改変し、抗体に埋め込むことにしました。SEAPは細胞の上に直接散布させることが可能な特定の基質を切断することが可能であり、その基質はSEAPによって切断されると発光します。つまり、研究者らは遺伝子改変済みのSTAT3を融合させた抗体を細胞に埋め込み、細胞が発光する様子が確認できれば、「STAT3が二量体化したことで活性化し、SEAPを産生した」ということを確認できるわけ。

研究チームは不死化した幹細胞に遺伝子改変したSTAT3を組み込んだ抗体を埋め込んで実験を行い、スターバックスのコーヒーやレッドブル、コカ・コーラといった飲料に含まれるわずかなカフェインでも、幹細胞は敏感に反応して発光することを実証したそうです。

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bywinhide

続いて研究チームは、「より有用な遺伝子を組み込んだ抗体を使い、カフェインが働くかどうか」を調べることにしました。研究チームが目を付けたのは、糖尿病の治療薬としても使用されるGLP-1というインスリンの分泌を促すホルモン。STAT3が二量体化することでGLP-1を産生するように遺伝子を改変し、aCaffVHHに遺伝子改変済みのSTAT3を融合させた幹細胞を、浸透性のカプセルに入れて2型糖尿病を発症しているマウスの体内に埋め込みました。

浸透性のカプセルを埋め込んだマウスに対し、継続的にエスプレッソマシンのネスプレッソで作られたコーヒーを投与し続けた結果、カフェインはカプセル内に浸透してSTAT3を活性化させGLP-1を産生しました。GLP-1の効果でインスリンの分泌が促された2型糖尿病のマウスは、正常なマウスとほぼ同様の血糖値まで血糖値が下がったとのこと。

Fussenegger氏は今回の研究結果について、「継続的にコーヒーを投与されたマウスは、心拍数の上昇や血糖値が危険な値にまで下がるといった問題を生じさせなかった」と述べ、カフェインをトリガーとする糖尿病治療は安全性が高いとしています。また、カフェインが入っていない飲料ではインスリンが分泌されないことも実証済み。マウスによる実験の段階から実際に人間の治療に使われるまでには、長いステップが必要なことは間違いありませんが、Fussenegger氏は「やがて人々が日常的に口にする飲料をトリガーに、病気の治療が可能になるだろう」と考えています。

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byRafael Saldaña

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