「今までと違う」サンフレッチェ広島のスタイルとは? 新監督の“申し子”、背番号39が躍動する理由【コラム】

「今までと違う」サンフレッチェ広島のスタイルとは? 新監督の“申し子”、背番号39が躍動する理由【コラム】

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  • 更新日:2022/05/14
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【写真:Getty Images】

●サンフレッチェ広島の「今までと違うところ」

明治安田生命J1リーグ第13節、浦和レッズ対サンフレッチェ広島が13日に行われ、0-0の引き分けに終わった。連勝こそ逃したものの、ミヒャエル・スキッベ監督が浸透させている戦い方は、徐々に浸透してきている。ここ数年の広島とは何が違うのか。躍動する背番号39の言葉とともに、新スタイルに迫る。(取材・文:元川悦子)
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【動画】サンフレッチェ満田誠が躍動! 浦和戦ハイライト

2000年代初頭にドイツサッカー連盟(DFB)で育成改革を手掛け、ルディー・フェラー監督体制のドイツ代表・戦術トレーニング担当として2002年日韓ワールドカップ(W杯)にも参戦しているミヒャエル・スキッベ監督。偉大なキャリアを持つ彼を今季から招聘し、新たなスタートを切ったのがサンフレッチェ広島だ。新指揮官が新型コロナウイルスによる入国制限で不在だった2~3月にかけてはやや苦しんだが、4月以降は順調に勝ち星を重ね、上位に浮上してきた。

直近の5月7日の鹿島アントラーズ戦では目下、首位を走る相手に対し、巧みなゴールラッシュを見せ、3-0で完勝。チーム全体が勢いに乗った状態で13日の敵地・浦和レッズ戦に挑んできた。鹿島戦から採用しているジュニオール・サントスとナッシム・ベンカリファを2トップに並べる3-1-4-2の新布陣を今回も踏襲。より攻撃的な戦いで浦和を凌駕しようとした。

大雨のナイトマッチという戦いづらい環境下ではあったが、広島は序盤から戦術的な狙いを前面に押し出した。

「今季は攻撃的なところで言えば、GKからしっかりビルドアップして、後ろから形を作りながら相手の陣地に攻めていくことをテーマにしている。守備面で言えば、前線からプレスをハメて、前で奪ってショートカウンターという形をキャンプからずっと取り組んでいる。うまくいかない試合があっても立ち返るところがあるのは今までと違うところ。すごくうまくいってる感覚があります」

守護神・大迫敬介がコメントするように、彼らは確固たるベースを持ちながら戦っているのだ。

●躍動する新体制の申し子

開始14分に浦和・馬渡和彰の直接FKを決められたが、オフサイドで取り消しになる。そういった追い風もあって、広島はそこからグイグイと縦へ仕掛けていった。けん引役となったのが、2列目に入った大卒ルーキー・満田誠。ペナルティエリアやや外側の位置から思い切って放ったミドルが左ポストを叩いた27分の決定機に象徴される通り、神出鬼没な動きとゴールへの貪欲さが大いに光ったのだ。

「人数をかけてサイドと中の選手の意思疎通ができて、いい崩しができた。だからこそ、チャンスも作れたと思います」と今季3ゴール3アシストのキーマンは手ごたえを感じた様子だった。

確かに今季を見ていると、この背番号39が出番を増やし、目に見える数字を残すとともに、チームも右肩上がりで推移している。

「2トップの選手が攻撃時はしっかりと相手ディフェンスラインを下げてくれるので、自分はドリブルだったり、プレーエリアの確保がしやすくなる。特徴もしっかり出せて、この結果につながっている」

本人も躍動の理由をこう振り返る。同じ2列目でスタートした森島司も同様だが、以前にも増して前への推進力や迫力が増し、ゴール前で脅威になる場面が増えていた。

こうして中央のタレントが敵を引き付けてくれる分、サイドも空いてくる。右の藤井智也は明本考浩の背後を突くシーンを何度も見せ、左の柏好文も近年にはなかったイキイキとしたプレーぶりを印象付けた。選手個々の長所を最大限発揮できるような形に持っていけるのが、百戦錬磨の指揮官の力なのだろう。

●迅速な采配を見せたスキッベ監督

前半45分間のシュートは浦和の5本に対し、広島は9本。数字的に上回ったが、スキッベ監督は「中盤が今一つ機能していない」と判断し、警告を受けたベンカリファを下げ、松本泰志を投入。これまでの基本布陣である3-4-2-1に戻して後半を戦った。これにより満田と森島の2シャドーはよりスムーズにプレスに行くことができるようになったという。

一方で、後半に入ってギアを一段階上げてきた浦和もゴールに襲い掛かる。ダヴィド・モーベルグが後半10分に放った左足シュートなどは得点になってもおかしくなかったが、守護神・大迫のナイスセーブでゴールを割らせない。直後の16分には江坂任、キャスパー・ユンカーの攻撃カード2枚が出てきて、浦和の攻撃圧力はさらにアップ。江坂も強烈シュートを何本もお見舞いしたが、広島の粘り強い守備組織は崩れなかった。

そのうえで得点への意欲を示し続け、松本のミドルシュートのこぼれ球に満田が詰めた後半24分の得点機、松本の右クロスに柏が飛び込んだ34分のビッグチャンスなど、点の取れそうなシーンを何度も作った。最終的には0-0で終了し、白星こそお預けになったが、スキッベ監督は「レベルの高い2チームが競い合った素晴らしい展開だった」と一定の満足感を口にしていた。

●サンフレッチェ広島はここから強くなる

17本対11本とシュート数で上回り、内容面に自信と手ごたえをつかめたからこそ、そういった発言が出たのだろう。攻撃姿勢を鮮明にする今のスタイルを続けていけば、広島はここからかなり強くなりそうだ。

日本代表の森保一監督が指揮し、2012~2015年に3度のリーグ制覇を達成した時代を彼らが上回っていくためには、やはり確固たる得点源が必要不可欠だ。今季の広島は森島の4ゴールが最高で、売り出し中の満田と柏が3点ずつ挙げているが、ジュニオール・サントスが1点、ベンカリファが無得点とFW陣がやや心もとない。彼らが確実に結果を残し、その背後にいる満田と森島もさらに爆発力を高めていけば、分厚い攻撃のできる集団に変貌できる。対戦相手に脅威を与えられるようになるはずだ。

攻守の切り替えや強度の部分が確実にアップしているのも前向きな点。試合の終盤、ボランチの野津田岳人が平野祐一に激しくチャージし、イエローをもらったシーンがあったが、以前の彼はそこまでデュエルに行くタイプではなかった。そういう激しさを示さないと試合には出られないのだろう。

まさに「世界基準」をチーム全体が理解し、体現しつつあるのは大きい。満田のように指揮官の意図を体現できる選手が1人、また1人と増えていけば、総合力が高まり、多様な戦い方もできるようになる。ここからの背番号39と広島の進化が非常に楽しみだ。

(取材・文:元川悦子)

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元川悦子

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