27歳の娘は働くのも難しい...50代夫婦が抱える、将来への「深刻な不安」

27歳の娘は働くのも難しい...50代夫婦が抱える、将来への「深刻な不安」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/07/22
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「娘は現在27歳ですが、病気のため働いて収入を得ることが難しい状況です。今は私たち両親と同居しているので無収入でも何とか生活できていますが、親亡き後はお金に困ってしまうことでしょう。娘のために貯蓄をしたいとは思っているのですが、毎日の暮らしで精一杯でそう簡単にもいきません…」

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筆者のもとに相談に訪れた山下和子さん(55歳・仮名、以下同)は、暗い表情でその胸の中にある不安を口にしました。夫の重彦さんももうすぐ定年を迎えるそうですが、老後の生活設計もままならないようです。そこで社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの筆者は、娘さんについて詳しく話を聞くことにしました。

相談者の家族構成(当時)
山下重彦(57歳) 和子さんの夫で会社員
山下和子(55歳) 専業主婦
山下紀香(27最) 重彦さんと和子さんの娘、現在実家で両親と同居している

変化が生じたのは中学3年生

小学生の頃の紀香さんは、勉強やスポーツはあまり得意な方ではありませんでしたが、自分なりに頑張っていろいろなことに取り組んでいたそうです。友人は多くなかったようですが、何とか付き合っていて、特にトラブルもなく学生生活を送っていました。

そんな彼女に変化が現れたのは中学生3年生の頃。イライラすることが増え、食欲は減り、夜もあまり眠れなくなっていきました。両親は「高校受験も近いし、そのストレスによるものだろう。受験も終われば落ち着くのではないか?」と考え、様子を見ることにしたそうです。

しばらくすると、紀香さんが、「学校で先生や同級生に陰口を言われて馬鹿にされている。皆からいじめられている」と母親に何度も訴えてくるようになりました。
びっくりした和子さんは学校に相談しましたが、特にいじめられているような事実は確認できませんでした。

そのことを紀香さんに伝えると、「何で分かってくれないの? お母さんなんか信じられない!」と大声を張り上げ、怒りを爆発させました。学校へ行くよう促しても彼女は全く聞き入れず、「もう学校には行きたくない!」と大声で叫び続けたため、しばらく休むことにしました。

学校を休むようになった紀香さんは、一日のほとんどを家の中で過ごすようになったそうです。しかし、休んでいても一向に状況は改善しませんでした。その後、紀香さんは毎日のように、「食事に毒が入っている」「両親から虐待されている」「部屋の中に監視カメラが仕掛けられていて、私を監視している」といったことを訴えてくるようになりました。

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和子さんは当時のことを次のように振り返ります。

「夫からは『お前の育て方が悪かったんだ!』と言われていたので、私も娘をどうにかして元に戻そうと意固地になっていたのだと思います。

当時はそれが病気の症状だということも知らなかったので、『何を馬鹿なことを言っているの? そんなことないじゃないの!』と反論するだけで、娘の訴えを無視していました。もっときちんと受け止めて、早く病院に連れていってあげればよかったと、今でも思っています…」

和子さんは固く目を閉じ、自分のしてきたことを悔やんでいるようでした。

17歳になって、ようやく気付いた

紀香さんが17歳の時、風邪をこじらせていまい近所の内科を受診しました。そこで彼女の異変に気づいた内科医が、付き添いに来た和子さんに精神科を受診するよう勧めました。そこで初めて、紀香さんの言動は精神疾患によるものではないかと考え始めたのです。

大学病院の精神科を紹介されて受診した紀香さんは、そこで統合失調症と診断されました。統合失調症は精神疾患のひとつであり、主な症状としては幻覚や妄想などがあります。服薬を開始した彼女は、大分落ち着きを取り戻すことができました。その後、その病院の医師との折り合いが悪くなり、かかりつけの病院をいくつも変えることがありましたが、それでも服薬は継続していったそうです。

服薬により落ち着きを取り戻したかのように見えた紀香さんですが、ある日、その容体が急変してしまいました。「頭の中から中学校の同級生や先生が私の悪口をしゃべっている声が聞こえる。もう駄目だ!」彼女は両手で頭を抱えながら、大声でそう叫び続けたそうです。

和子さんはすぐさま娘を入院させることに。入院先の病院で紀香さんは20歳の誕生日を迎えました。

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その後も紀香さんは入院や通院を繰り返しましたが、服薬治療によりその後幻聴は現れていないそうです。しかし、彼女には統合失調症による別の症状が根強く残ってしまいました。その症状とは認知機能障害。紀香さんに現れた主な症状は、記憶力と判断力の大幅な低下です。

例えば親子でテレビを見ている時、紀香さんから「この人の名前は何だっけ?」とテレビ画面に映った芸能人の名前を聞かれ、和子さんが「〇〇さんよ」と答えます。すると数分後に、再び「この人の名前は何?」と同じ質問をされるのです。それが多い時で一つの番組の間に10回以上。

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何度も繰り返される質問に、和子さんも頭では「これは病気による症状だ」と分かってはいるのですが、疲れ果てているときは「さっきも言ったでしょ?」と口を滑らせてしまうこともあるそうです。そうなるともう大変。紀香さんは怒りの感情を爆発させ母親に詰め寄ります。そして気が済むまで、何度も何度も母親に謝罪をさせるそうです。

また、紀香さんは過去の自分の記憶と照合して、適切な判断を下すことも難しくなってしまいました。例えば通院するために電車に乗った際、まったくの別人なのに年恰好が似ているだけで自分の知り合いだと思い込み接してしまいます。それを横にいる和子さんが制止する、といった状況が頻繁にあるとのことでした。

治療を継続してもそのような症状が一向に改善しないため、日常生活に大きく支障をきたしている状態なのです。

紀香さんとの日々の暮らしで手一杯の和子さん。夫の重彦さんの定年退職も数年以内に迫ってきていて、仮に夫婦どちらかが倒れてしまったら、生活もままならなってしまいます。そんな山下家に向けて、筆者が解決策を提案した【後編】27歳娘と同居する50代夫婦が、「老後の不安」から解放された「特殊な事情」をご覧ください。

※登場された方のプライバシーに配慮し、実際の事例を一部変更、再構成しています。

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