妻や子供との思い出も。日本酒のラベルに書かれたポエムの意味、製造者を直撃

妻や子供との思い出も。日本酒のラベルに書かれたポエムの意味、製造者を直撃

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2021/05/01

4月上旬、Twitter上に投稿されたある写真が大きな反響を呼んだ。その写真は酒瓶の裏貼り(ラベル)を映したものなのだが、そこには以下のようなポエムが綴られていたのだ。

<尊敬する上野教授は、PCの電源の入れ方も分からなかった。しかし、PCが何が出来、誰が何が出来るかを把握していた。『立川、これの概略図を作っておいてくれ! 中西、これをグラフにしておいてくれ!』「先生、私は何を?」『杉原は…。美味しいコーヒーの入れ方検索して、コーヒーを入れてくれ!』「はい!喜んで!」先生、今は日本酒造ってます。まだ、天国には行けませんが、いつか、一緒に飲んでやって下さい。慶樹>

詳しい背景は分からないにしても、妙に引き込まれる文章だ。話題になった裏貼りは、杉原酒造株式会社が製造している「射美」という商品に貼りつけられていた。そこで今回は、「射美」の製造者で裏貼りにもその名が書かれていた杉原慶樹さんを直撃してみた。

◆不思議なポエムが書かれた理由は“製造者の顔を見せるため”

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昔ながらの製法で作られた、こだわりの『射美』(画像は杉原慶樹さん提供)

杉原酒造は岐阜県揖斐郡大野町にある酒蔵で、日本酒の製造のほか、小売部で販売も行っている。明治時代の1892年に創業し、来年で130周年を迎えるとその歴史は深い。慶樹さんはその5代目の跡取りで、現在の代表取締役の息子にあたる。

今回話題になった裏貼りは、いつ頃から商品に貼られているのだろうか。

「『射美』は13年くらい前に発売したのですが、発売当初から裏貼りでは商品に関することや日記を書いています。

『射美』は弊社の小売部で販売しておらず、今は全国で28店ほどの酒販店のみで販売させていただいています。そうなると私が店頭で直接販売し、お客様と顔を合わせる機会はないので、製造者の顔が見えればいいな、という思いで貼りつけ始めました」

なるほど、あのポエムは顔の見えない消費者に向けた挨拶代わりだったのか。

◆エピソードの多彩なバリエーション

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ポエムのような商品の説明にもバリエーションが(画像は杉原慶樹さん提供)

裏貼りに綴られているエピソードは全て慶樹さんが体験したもので、その種類は無数に存在するという。

「裏貼りの文章は『射美』が完成してから書くんですが、時間があればできるだけ日記を書くようにしていて、一升瓶にも四合瓶にも書いているので、もう数限りないと思います」

◆愛妻との出会いを描いた4部作も

ほかにどんなエピソードがあるか伺うと……。

「子供が芋掘りの絵を描いたときに、大きな芋を表現しようと芋の部分だけ紙を付け足して作って金賞をとって以来、付け足しが入った絵ばかりになったとか、本当に些細な話ばっかりですよ。

あと、妻との出会いを4部作にして、1個の種類の四合瓶につけたこともありました。いきなりパート3の瓶を買ってしまうということも起こり得るのですが、インターネット上で4部作それぞれ共有し合って読めるようにするような動きが生まれたと聞き、お客様同士がつながる嬉しさを感じましたね」

◆厳しい今の世の中でも“少しでもクスっとしてもらえれば”

数ある裏貼りのなかで今回注目されたのが前述の上野教授とのエピソードだが、慶樹さんにとっては多大な影響を受けた恩師なのだという。

「僕は今年45になるんですけど、年をとると昔のことを思い出すんですね。上野先生は僕に大きな影響を与えてくれた教授で、先生とのご縁で青年海外協力隊やJICA(ジャイカ)へ進みました。

お酒を造るようになったのは先生が亡くなってからなので、今はお酒を造っていますという感謝の気持ちを込めて、昔を思い出しながら書きました」

最後にこれから「射美」に出会うかもしれない人へのメッセージを伺った。

「こんなご時世だから、ひとりでお酒を飲まれることもあると思うんです。そんなときに裏貼りを見て、少しでもクスっとしていただければ、作り手冥利に尽きます。今後も裏貼りを肴に飲んでいただければ、と思いますね」

――ちなみに、「射美 ラベル」で検索すると多くのエピソードが出てくる。取り留めのない日常の風景から、思わず目頭が熱くなるようなものまであるようだ。<取材・文/福永全体(A4studio)>

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