ヴァージン、銀ピカに輝く次世代宇宙船「スペースシップIII」を発表

ヴァージン、銀ピカに輝く次世代宇宙船「スペースシップIII」を発表

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/04/07
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●その名は「VSSイマジン」、宇宙旅行の実現を目指すサブオービタル宇宙船

小型衛星打ち上げの新たな旗手、空中発射ロケット「ローンチャーワン」誕生

米国の宇宙企業ヴァージン・ギャラクティックは2021年3月30日、次世代宇宙船「スペースシップIII」の1号機「VSSイマジン」を発表した。

同社は今後試験を行うとともに、同型の2号機「VSSインスパイア」の製造も進め、サブオービタル飛行による宇宙旅行の実現を目指す。しかし、宇宙旅行の実現時期はまだ未定であるなど、その今後には不透明なところも多い。

スペースシップツーからIIIへ

ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)は、実業家サー・リチャード・ブランソン氏らによって立ち上げられた宇宙企業で、サブオービタル飛行と呼ばれる、地球を回る軌道には乗らない形での宇宙旅行の実現を目指している。

サブオービタル飛行は、地球の軌道に乗る宇宙船とは大きく異なり、宇宙空間にいられるのはわずか数分間しかない。それでも、窓から青い地球や黒い宇宙空間を眺めることができ、また船内は微小重力(いわゆる無重力)状態になるため、最低限、宇宙にいる感覚を味わうことができる。

同社はこれまでに「スペースシップツー(SpaceShipTwo)」と名付けた宇宙船を開発し、試験飛行を繰り返してきた。スペースシップツーは全長18.3m、高さ5.5m、翼長8.3mの、小型のスペースシャトルのような形の機体で、2人のパイロットと6人の乗客、あわせて8人が乗ることができる。

スペースシップツーは、「ホワイトナイトツー」と呼ばれる双胴機に吊るされて高度約5万ft(約15km)へ運ばれ分離。そこから機体後部に搭載した、ハイブリッド・ロケットを噴射して上昇する。ハイブリッド・ロケットは安全性が高く、民間人が乗ることを前提とした、同機の売りのひとつにもなっている。

やがて機体は高度80~100kmの宇宙空間に到達。その後降下し、そして、主翼の後ろ半分を約60度ほど折り曲げる「フェザー・モード」に移る。これにより、機体を安定させつつ、スピードを抑えながら、安全に降下することができる。バドミントンのシャトルが、羽根によってつねに球の部分を前にして飛ぶのと同じ理屈であり、フェザー(feather)というのも同じ羽根という意味である。

そして、ある程度降下したところで翼を元の状態に戻し、グライダーのように滑空飛行して、滑走路に着陸し、帰還する。

スペースシップツーはこれまでに2機が製造され、2014年には1号機「VSSエンタープライズ」が墜落する事故が発生したが、2018年に2号機「VSSユニティ」が試験飛行で宇宙空間に到達した。

ただ、設計変更やトラブルなどを繰り返しており、いまなお宇宙旅行の実現時期の見えない、足踏み状態が続いている。

スペースシップIIIへ

そんな中、同社は今回、スペースシップツーの後継機となる次世代宇宙船「スペースシップIII(SpaceShip III)」の1号機「VSSイマジン(Imagine)」を発表した。

基本的な姿かたちはスペースシップツーと同じであり、乗員数や到達できる高度などの性能もほぼ同じである。また、同社の宇宙船の特徴でもある、飛行機から空中発射するという打ち上げ方法も同じである。

一方、目立つ違いはその塗装で、スペースシップツーは基本的に白色に塗られていたが、スペースシップIIIは全体が鏡のように反射する鏡面塗装になっている。同社によると、この塗装には耐熱効果があるとし、また「地球から空、そして宇宙へと飛行する間に、反射した色が変化し続ける様子を楽しんでほしい」としている。

最も大きな違いは、製造効率や飛行頻度、メンテナンス性の向上を目指し、モジュール式の設計を採用したところだという。詳細は明らかにされていないが、胴体や翼、ロケット・モーターなどが簡単に付け替えられるようになっているものとみられる。

鏡面塗装にしたということは、スペースシップツーでは耐熱が不十分だったことを示唆している。また、姿かたちは似ているとはいえ、内部が大きく変わっているということは、まったく別物の機体といえる。

また細かい点だが、スペースシップツーは数字の部分が“Two”と表記されていたが、スペースシップIIIではローマ数字の“III”となっている。

同社によると、スペースシップIIIはより将来の宇宙船の設計、製造の基礎になるものだとし、また各宇宙港ごとに年間400回の飛行を目指すうえでの重要なマイルストーンだとしている。

ヴァージン・ギャラクティックのCEOを務めるマイケル・コルグラジエ(Michael Colglazier)氏は「このスペースシップIII級の機体は、ヴァージン・ギャラクティックにとって“艦隊”の始まりを意味します。VSSイマジンとVSSインスパイアは、未来の宇宙飛行士を宇宙への素晴らしい航海に連れて行ってくれる優れた船であり、その名前は有人宇宙飛行の向上心を反映しています」と語る。

VSSイマジンは今後、地上試験を始め、そして今夏にもニューメキシコ州にあるスペースポート・アメリカを拠点に滑空飛行を行う予定だという。

また並行して、スペースシップIIIの2号機である「VSSインスパイア(Inspire)」の製造も進んでいるとしている。

●宇宙旅行の実現時期は? スペースシップIIIと同社の今後をめぐる明暗
悲劇を乗り越え前進

ヴァージン・ギャラクティックが設立されたのは、いまから17年前の2004年のことである。この当時、宇宙旅行の開始は2012年ごろとされていた。

しかし、度重なる設計変更、そして事故により、計画は大きく遅れている。たとえば2007年にはロケットモーターの試験で爆発事故が発生したほか、2014年の初めにはホワイトナイトツーの主翼に亀裂が発生した。

そして2014年10月には、スペースシップツーの1号機であるVSSエンタープライズが試験飛行中に空中分解し、墜落。搭乗していた副操縦士のマイケル・アルスベリー氏が死亡し、機長のピーター・シーボルド氏はパラシュートで脱出したものの、重傷を負った。

2015年にはスペースシップツーの2号機VSSユニティが完成し、試験飛行を何回も繰り返している。ただ、これまで宇宙空間に到達したのは2018年12月と2019年2月の2回のみである。昨年末にも試みられたが、トラブルで中止となった。

同社によると、このトラブルの原因は電磁障害(EMI、Electromagnetic Interference)だったとし、その発生源や影響をできる限り減らすため、現在も対処を続けているとしている。

今回、スペースシップIIIが登場したが、同社は当面、VSSユニティの試験飛行も継続するとしており、今年5月にも次の試験飛行を行うという。また、早ければ今年の夏に行うVSSユニティの試験飛行で、サー・リチャード・ブランソン氏が自ら搭乗し、宇宙飛行の安全性を実証したのち、チケットの販売を再開するとしている。

同社の宇宙旅行のチケットは、かつては販売が行われており、スポーツ選手や俳優、デザイナーなど、700人以上が予約したことが知られている。しかし、開発の遅れによって、現在は販売が中止されている。販売再開後のチケットの価格は不明だが、以前販売されていた際には25万ドルとされていた。

同社による宇宙飛行は、NASAも宇宙実験に使えるとして注目している。すでにVSSユニティの試験飛行の機会を活用し、 NASAの実験装置による微小重力環境を利用した実験を実施している。

これに関連し、昨年10月には、米サウスウエスト研究所の惑星科学者で、冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」の主任研究員を務めるアラン・スターン氏が、同社の宇宙船で宇宙に行くことが発表されている。これもNASAのミッションで、スターン氏は機内から低光量カメラによる天体観測や、生物医学実験を行うという。

ヴァージン・ギャラクティックの今後は

今回、スペースシップIIIが登場したこと、また今後の飛行やチケットの販売再開などに向けた前向きな発言がなされていることは、トラブルや設計変更、事故など幾多の後退があっても、宇宙旅行の実現に向けた前進は未だ止まっていないことを示している。

しかし、こうした明るい側面がある一方で、商業飛行、すなわち宇宙旅行の実施時期、そして今回発表されたスペースシップIIIの位置づけなどをはじめ、ヴァージン・ギャラクティックの今後には不透明なところが多い。

前述のように、スペースシップIIIで鏡面塗装にしたり、構造を抜本的に見直したりしたということは、VSSユニティは商業飛行に適しておらず、試験機としてのみ使うということかもしれない。また、いくら姿かたちが似ているとはいえ、とくに構造を大きく改修したことで、試験のやり直しや追加を行う必要も生じるだろう。

そうなると商業飛行の実施は、スペースシップIIIの試験、米連邦航空局(FAA)の審査の完了を待たねばならず、その実施時期が明言されなかったのも合点がいく。商業飛行の実施は、すでに当初の予定から9年も遅れているが、さらに大きく遅れる可能性もある。

くわえて、同じサブオービタル宇宙旅行の分野で競合となるブルー・オリジンの「ニュー・シェパード」宇宙船の存在もある。ニュー・シェパードは順調に試験飛行を重ねており、早ければ今年からチケットの販売、あるいは商業飛行を行うという話もある。設計思想などの違いで、ニュー・シェパードはまだ人を乗せて飛行したことはないが、無人飛行ではすでに13回の宇宙到達、そしてカプセルの回収成功をなしとげており、実績や信頼性は高い。

大々的にお披露目されたスペースシップIIIは、今後こうした技術的な問題、そして競合他社との競争というビジネスの問題のふたつに立ち向かっていかなければならない。

はたして同社の想像は、頭上に広がる宇宙に向かって舞い上がることができるのか。それとも夢想家のままで終わるのか。今後の行方に注目である。

○参考文献

・Virgin Galactic Unveils VSS Imagine, The First SpaceShip III In Its Growing Fleet - Virgin Galactic

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら

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