「全摘後に見た大腸は、牧志公設市場で見た豚のと似ていた」 “20代は治療とマンガで終わった”ストーマ保有者がLINEで男性から送られた“ある写真”

「全摘後に見た大腸は、牧志公設市場で見た豚のと似ていた」 “20代は治療とマンガで終わった”ストーマ保有者がLINEで男性から送られた“ある写真”

  • 文春オンライン
  • 更新日:2022/06/23

「切れ痔になっちゃったのかなと思い込んでた」19歳で潰瘍性大腸炎、10回の手術をした30歳マンガ家が“大腸全摘”するまでから続く

指定難病の潰瘍性大腸炎の闘病エッセイをマンガ『腸よ鼻よ』で綴っている島袋全優さん。繰り返す入院を「取材のようだった(笑)」と語る島袋さんに、ポジティブな作風への思いについて語っていただきました。(全2回の2回目。前編を読む)

【マンガ】『腸よ鼻よ』を読む

◆◆◆

入院はまるで「取材」のようでした(笑)

──なぜご自身の潰瘍性大腸炎の実体験をマンガにしようと思ったのですか?

島袋全優さん(以下、島袋) こんなつらい思いをさせられたからには、おまえで金儲けさせてもらうぞ、という執念です(笑)。学生の時に発病して、「病気が治ったら描いてやろう」と思っていたのですが、治らないうちに『腸よ鼻よ』(ganma.jp/chohana)の話が来たので、「治らなくてもいいや」と思って描き始めました。

あまりにも体調がきついときは、写真を撮る余裕もないので、ポコッと抜けていたりするんですけど、病気に関することはすべて「ネタ」としてノートに描いていましたし、点滴風景とか病院食の写真も「資料」と称してたくさん撮っていたので、入院はまるで「取材」のようでした(笑)。大腸を全摘したときは、ICUに家族が入って来た瞬間に「いまの私の姿を撮って」と頼み、父に写真を撮ってもらいました。

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デーモン閣下ばりの白塗りメイクをほどこした島袋全優さん。今日のメイクは『デビルマン』リスペクトのオリジナルバージョン。

自分の大腸の写真を見てすごい感動

──摘出した大腸をほしいとおっしゃったのも、「資料」としてですか?

島袋 いや、記念にほしかっただけです。塩漬けにしたら保存できるかと思ったんですが、さすがにあげられないと言われたので、かわりに写真を撮ってもらいました。大腸本体がほしいと言われたのは初めてだと驚かれました(笑)。

──手術後、ご自身の大腸の写真を見て、「牧志(まきし)公設市場で見た豚のと似ている」とおっしゃっていましたが、どんなお気持ちでしたか?

島袋 すごい感動したので、誰かと感動を共有したかったんですけど、SNSに載せるわけにはいかないので、母に「見て見て、わたしの大腸」と写真を見せたら嫌がられました。

自分から「見たい」と言ってきた姉にも見せたんですけど、妹のお腹から出てきた内臓だと気づいたら急に生々しく思えたようで、貧血を起こして顔が真っ白になっていました。身内とはいえ、自分の内臓を無理やり見せてはいけませんね……。

実はコミックス6巻のカバー下表紙背景にも大腸の写真を載せているので、興味のある方は、ぜひコミックス買って見てください。……って、「モツハラ」になってしまうので強要はできませんけど(笑)。

笑って読んでいただきたい一心でギャグをふんだんに入れた

──「サタデー大腸ナイトフィーバー」ですね。『腸よ鼻よ』は、病状や治療経緯がかなりリアルに描かれているのに、ギャグ要素がふんだんに盛り込まれているせいか、深刻な場面でもうっかり笑ってしまいます。

島袋 それ、狙っているところなので、うれしいです! 1巻のあとがきにも描いたんですが、『腸よ鼻よ』は難病について描いたマンガとはいえ、できれば笑って読んでいただきたい一心でギャグをふんだんに入れているんです。なので、「居酒屋で飲んでいたら隣のテーブルから聞こえてきた不幸自慢」くらいの感覚で、読んで笑ってもらえたら最高です。

──明るい闘病エッセイにしたのは、ギャグマンガ家としての思いもあるんですか? 島袋さんは、もともとギャグマンガ家を目指しておられたのでしょうか。

島袋 もともとはギャグがふんだんに盛り込まれたストーリーマンガが描きたかったんです。妖怪とかオカルトチックなのが好きで、専門学校に「出張編集者」としてMさんが来たときに妖怪ストーリーを見せたんですけど、反応が薄くて……。「じゃあこれなら」とそのとき描いていたギャグマンガのネームを見せたら「これいいね、ギャグだね!」と太鼓判を押してもらって、4コマのギャグマンガ『蛙のおっさん』でデビューさせていただきました。

闘病エッセイマンガをギャグで描こうと思ったのは、「ギャグが面白い」と担当さんに褒めてもらったことも大きかったですが、それ以上に闘病エッセイってだいたい、読んでいるほうがつらくなったり「かわいそう」と気持ちが落ち込んだりして、読めなくなってしまうものが多いじゃないですか。

私は、描くからにはたくさんの人に読んでほしいと思っていたので、「かわいそうな闘病エッセイマンガ」が読まれないんだったら、「かわいそうじゃない闘病エッセイマンガ」か、「かわいそうだけど、思いっきり笑える闘病エッセイマンガ」を描こうと決めて描き始めました。

高尚な作品を目指しているわけではない

──実際に、同じ病気で悩んでいる読者からの反響も多いと聞きました。

島袋 同じ病気の人から「元気が出た」とか、「ずっと下血が続いていたけど、『腸よ鼻よ』を読んで病院に行ったら早期発見できました」というような感想をいただくと、「私のマンガも役立ってんな~」と思えてうれしいですね。

でも看護師を目指している方から、「潰瘍性大腸炎のところとストーマのケアに関して満点とれました。『腸よ鼻よ』のおかげです!」と言っていただいたりすると、うれしい反面、「私のマンガで勉強になるのか……?」って、ちょっとびくつきますね。

先ほども言ったように、そもそもの目指しているところが「ストーマを知ってもらう架け橋になりたい」とか「潰瘍性大腸炎と闘う患者に希望を届けたい」という高尚なものではなく、「読んで笑ってもらいたい」なので、「潰瘍性大腸炎/マンガ」と検索すると「島袋全優」『腸よ鼻よ』が上位に出てくるようになったのは畏れ多いくらいです。

マンガって多分、Twitterやブログ、YouTubeよりもハードルが低いと思うので、一人でも多くの人に知っていただき、読んで笑ってもらえたらうれしいですね。

──登場人物がみな強烈ですが、笑ってもらうために、デフォルメされている部分はありますか?

島袋 主要キャラクターに関しては、私の印象に忠実に描いているところがあります。たとえば初代担当のMさんは、最初にお会いした時、ぎっくり腰で動き方がエヴァンゲリオンの初号機みたいだったのがすごく印象的で……。でもそのまま描くわけにはいかないので、シルエットで表現したらあんなふうになりました。

家族と掲載許可が取れた人は本人に似せて描いていますが、許可が取れない人や連絡のつかない人は、中身は忠実に描きながら外見をまったく変えています。

フォントのツイートがバズる

──こだわりといえば、フォントまでこだわりをお持ちだという Twitter の投稿もバズっていましたよね。

島袋 フォントを変えることでキャラクターの声色やテンションを伝えやすくなるので、ギャグ漫画におけるフォントって結構重要だと私は思っているんです。なので、担当さんに「そんなにこだわりがあるわけではございませんが、見ていただけたら」と自分なりのフォント愛を画像にして送ったのをTwitterにあげたらバズって驚きました。

フォントワークスさんからも「使っていただいてありがとうございます」とお礼を言われて、フォント会社からお礼言われるなんて、Twitterってすごいなとあらためて思いました(笑)。

──ほかにも時々島袋さんのTwitterがバズっているのをお見かけします。

島袋 Twitterはもともと、病気になってから日記代わりに病気のことをつぶやこうと始めたんですけど、だんだん仕事用の投稿が増えて、フォロワーさんも増えてきたので、いまは「どうでもいいこと」をつぶやくのに使っているだけなんですよ。「今日のヤマトヌマエビ」とか。

なのに最近は、友達に「姿見が欲しい」とつぶやいた時の投稿がバズって、ネットニュースから取材依頼まで来たりして、本当に驚きました。

西野カナさんの「トリセツ」を猫目線の歌として聞いたら泣ける、という投稿もめっちゃバズって、「なんで?」と思いましたね。マンガ本の宣伝は、Twitter用に描き下ろし漫画まで描いているのにそれほどバズらないのが不思議ですけど、Twitter大好き人間なので、「全優面白れぇ!」って思っていただけたら、まあうれしいかな……。

どこまでボケていいのか最初ちょっと悩んでいた

──作品に登場する「現在の島袋全優」も捨て身のキャラクターですよね。あの「バブル全優」は、どのような意図で描かれているのですか?

島袋 バブリーなスタイルと那覇の夜のバーという設定は、初代担当Mさんのアイデアです。「笑える闘病エッセイを描く」と決めたのはよかったんですけど、私、根が真面目なので、どこまでボケていいのか最初ちょっと悩んでいたんですよ。そんなときに、Mさんが、「徹底的にボケていい」と言って背中を押してくださったので、ツッコミどころ満載のキャラクターに仕上げました。「闘病中」の私を美少女にしたのは、単純にそのほうがかわいいからと、自分に似せて描くのがイヤだったという理由からです。

白塗りメイクをしている理由

──表に出るときはいつも白塗りメイクをされていますが、それも身バレ防止のためですか?

島袋 そうです。デーモン閣下をリスペクトしていたのもありますが、恥ずかしいからという理由が大きいですね。顔を隠すなら仮面か白塗りメイクにしようと思っていたんですけど、仮面だと表情が伝わらないので、白塗りメイクにしました。ちなみに今日のメイクは、『デビルマン』リスペクトのオリジナルバージョンです。

私は結構楽しんでやっているんですが、祖母に初めて白塗りメイクを見せたときは「なんでぇ~~~! こんな顔して~~~~」と泣かれて少し心が痛みました。

母にも「婚期が遠のく」と嘆かれました。いま、髪の毛もサイドを刈り込んでいるんですけど、「あんたのそり込みが短くなるたびに婚期が遠のいている」と文句を言われています。

恋愛したら頭の片隅で「ネタになるかな」と考えてしまうと思う

──「20代は治療とマンガで終わった」とおっしゃっていましたが、体調も落ち着かれて、これからは恋愛も楽しめますか。

島袋 恋愛に興味がないわけではないんですけど、これまでにちゃんとした恋愛をしたことがないんですよ。恋愛って自分の生活を多少なりとも犠牲にしないとできないって言うじゃないですか。私はいままでずっと一人で治療とマンガの生活をしてきたので、毎週どこかに行こうと誘われたら、対応できるかな~と不安に感じています。あとこまめに連絡返せないタイプなので、それもまずいですよね……。

それに、もし恋愛することになったら、頭の片隅で「ネタになるかな」ときっと考えてしまうと思うので、「私とつきあう=ネタにされる」覚悟のある人じゃないと、というのもあって……。もちろん、「描かないで」と言われたら描きませんけど……。

LINEを交換した男性からある日急に退職届の写真が送られてきて…

──いままでどんな方との出会いがあったのか、差し障りのない範囲で教えていただけませんか?

島袋 私、男運がないんですよ。以前、仕事で東京に行った時に出会った方と意気投合してLINEを交換したことがあったんですけど、ある日急に退職届の写真が送られてきて「今から沖縄に行きます」と言われて……。恋愛経験の豊富な友達に「これって普通は喜ぶもの?」と聞いたら「いや、怖い。その人危ない」と言われて、グラップラー刃牙の「言ってることがワカらねェや」というスタンプを送ったら連絡が来なくなりました。

あとは、私をお姫様抱っこしようとして支えきれず、自信喪失してフェードアウトした人とか、歌舞伎町で会ったやばいメキシコ人とかいろいろ武勇伝はあるんですけど、しらふではとても話せません……。いつかどこかで描けたら公開するかも……。いや、しないかな(笑)。

──島袋さんの武勇伝、読みたいです! 次作でぜひお願いしたいくらいですが、『腸よ鼻よ』の今後の展開も気になります。

島袋 『腸よ鼻よ』は、最初から最終回はここにしようと決めているので、そこに向けて描いています。まだまだ描かせてもらいますけど、連載が終わったら、次はTwitterで1コマ、2コマの連載もいいな~と思っているので、いろいろなやり方を試していきたいですね。

気がついたら、漫画家としてデビューして半分以上の年月、『腸よ鼻よ』を描いているんです。『腸よ鼻よ』で知名度もあがり、お仕事もいただけるようになったので、『腸よ鼻よ』自体が私にとっての恩人というか……。なんというか、生み出せてよかったなというところです。でも恥ずかしい部分も隠したかったところも全部描いちゃったので、私にとっては「素っ裸」みたいなものかもしれないです。それでも、私の素っ裸を読んでみなさんが楽しんでいただけるなら、こんなうれしいことはないので、これからも「素っ裸」の全優を、どうぞよろしくお願いします。

「一日30回以上トイレ」「毎回便器血まみれ」 潰瘍性大腸炎になった19歳学生の“肛門処女喪失”の瞬間へ続く

(相澤 洋美)

相澤 洋美

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