若年性認知症の父と家族に感じる「リアル」 密着Dが見た“父ちゃん”を丸ごと受け止める姿

若年性認知症の父と家族に感じる「リアル」 密着Dが見た“父ちゃん”を丸ごと受け止める姿

  • マイナビニュース
  • 更新日:2022/05/14
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●介護施設への入所…家族の負担と忘れられることの葛藤

若年性認知症の父が施設に入って4カ月…少しずつ生まれる家族との距離

フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、昨年10月に放送された『ボクと父ちゃんの記憶 ~家族の思い出 別れの時~』が、国際メディアコンクール「ニューヨークフェスティバル」のドキュメンタリー・普遍的関心部門で銅賞を受賞した。若年性認知症の父を介護する17歳の息子と家族の日々を追った作品で、家族の「その後」の新撮も加えた『ボクと父ちゃんの記憶 ~別れのあと 家族の再会~』が15日に放送される。

今回の受賞に、「国や言葉を越えて、とても心に刺さるものがあったんだと思います。それは僕も現場で感じました」と語るのは、密着した山田貴光ディレクター(ドキュメンタリーSAMURAI)。この家族から感じた「リアル」とは――。

○■数年ぶりの再会で「症状の進行具合に驚いた」

この家族と山田Dの出会いは、2015年に放送された「脳科学」をテーマにした特別番組での取材。若年性アルツハイマー病と診断された父・佳秀さんとその家族に密着した。

これをきっかけに付き合いが始まり、佳秀さんの認知症が進行すると、ハードディスクに入っている家族との写真や映像を取り出すのを手伝ったり、佳秀さんが映像制作の仕事で使っていた機材を譲り受けたりする関係となった。

当時の佳秀さんへのインタビューでは、苦労をかける家族を愛する思い、そして自身が父親から厳しく言われてきたことから、子どもたちには自由に生きてほしいという思いを語っていたのだそう。その後、数年会わない間に、介護施設への入所という話が持ち上がり、久々に訪ねてみると、「佳秀さんの症状の進行具合に驚いたんです」(山田D、以下同)と、コミュニケーションが困難な状況になっていた。

それでも、「家族をすごく愛しているのが節々に感じられたので、前回は病気の目線で取材をしたのですが、『ザ・ノンフィクション』で家族愛や、施設とのマッチング、ヤングケアラーといった社会問題をテーマにして、また取材させていただきたいとお願いしました」と、この番組が走り出した。
○■「僕が父ちゃんの病気をがんばって食い止める」

主人公の1人である息子・大介さんは、佳秀さん譲りの明るい性格で、いつも父を思いやる好青年。「彼に出会ったのは小学5年生でしたが、その頃から周りを明るくして愛される子でした。『お父さんの認知症をどう思っている?』という厳しい質問にも『僕が父ちゃんの病気をがんばって食い止める』と言っていたのを覚えています」と振り返る。

カメラを回していても、家の中でいつもパンツ一丁なのは、山田Dを幼い頃から知っている信頼の表れで、番組では自然体な彼の姿が映し出されている。

客観的には、未成年ながら父の介護を続ける、いわゆる「ヤングケアラー」という立場だったが、彼自身はそのように捉えていない様子がうかがえたという。

「彼らにとってお父さんの認知症というのは当たり前のことであって、グラデーションのように進行していくことも丸ごと受け止めて“父ちゃん”なんですよね。それが、すごくリアルなことなんだと感じました」

ただ、それぞれに話を聞いてみると、子どもたちからは母親の負担、母親からは子どもたちの負担を心配し、お互いのことを気遣い合う構図があったという。しかし、施設に入れば、認知症が一気に進行する心配もあり、コロナ禍もあって半年以上、家族との面会が許されず、父の頭の中から家族の存在が完全に消え去ってしまうのではないか……番組ではその葛藤が描かれている。

●父を介護施設に送る車中の涙

番組の中で印象的なのは、佳秀さんを施設に送る車中のシーン。大好きだった吉田拓郎の曲を流し、運転する母親は涙、そして佳秀さんの横に座る大介さんも父の肩をたたきながら涙し、別れのつらさがこみ上げてくる象徴的な場面だった。

「きっと昔はお父さんも、いつも大好きな歌を歌っていたと思うんですよね。だから、大介さんは最後に一緒に歌ってほしいという思いがあって、肩をたたいていたんだと思い、その手にズームアップしました。それと、父ちゃんをハグしたいという気持ちも感じられましたね」

取材において、佳秀さんがカメラを回すことを拒否したり、不機嫌になったりすることはなかったという。その中で、「カメラを向いて『ありがとう』と言った瞬間があったんです。どこまでカメラというものを認識しているか分からないですし、僕に言ったのか、他のディレクターに言ったのかも分からないですし、どういう意味での『ありがとう』なのかも分からない。でも、こちらから見ると、僕に言ってくれたのかなとも思い、不思議な気分になりました」という出来事もあったそうだ。
○■家族に言われた「ノンフィクション過ぎる」

前回の放送後、家族からは、あまりにリアルな日常が映し出されていたことに、「ノンフィクション過ぎる」という表現で感想を受けたそう。また、それぞれへのインタビューを見て、互いが胸の中に抱えていた本心を知ることもできたようだ。

また、放送を見て、認知症の家族を持つ人たちからも反響があったという。

「『うちの旦那と一緒です』と言って自治体に相談されたというお話も聞きましたし、『あのときの気持ちが分かります』と苦労を振り返るような声もありました。なかなかあそこまで家の中を取材させてもらえることはないので、共感された部分もあると思いますし、またこれだけ認知症のご家族を抱えている方が周りにいるんだというのを、僕も逆に知りました」

今回の放送では、施設に入所してから4カ月後の家族の姿が描かれる。介護生活から変わって時間に余裕ができたが、「やはり家族の生活も変わっていくし、お父さんとの距離というものを感じました」という中で、父親の誕生日を祝うため、家族がケーキを差し入れに行くシーンも登場する。

今後も引き続き、この家族を追っていく予定で、「皆さんがどこに向かっていくのか、お父さんの存在がどうなっていくのか。家族にはお父さんとまた一緒に暮らしたいという思いもあるので、その行く末を見守っていき、お付き合いさせてもらいたいと思います」と話した。

●山田貴光1970年生まれ、千葉県出身。制作会社・ドキュメンタリー SAMURAI代表取締役。『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)では『ボクと父ちゃんの記憶』のほか、『ボクらの丁稚物語』『ここが わたしの居場所』などを手がける。ほかにも、『ドキュメント にっぽんの現場』(NHK)、『ガイアの夜明け』(テレビ東京)、『奇跡の地球物語』(テレビ朝日)、『夢の扉プラス』(TBS)といったテレビ番組のディレクターや、『わたし家具職人になります』、『あい ゆめ わ 出会いのアート』といった映画の監督を務める。

中島優

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