TBS海外戦略の新会社が目指す世界のOTTトップ10入り~THE SEVEN菅井龍夫社長インタビュー【後編】 / Screens

TBS海外戦略の新会社が目指す世界のOTTトップ10入り~THE SEVEN菅井龍夫社長インタビュー【後編】 / Screens

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  • 更新日:2023/01/25

欧米ではクリエイティブとビジネスをプロデュースするスタジオ組織が勢力を伸ばす。TBSホールディングスが出資し、設立されたTHE SEVENはまさにそんな欧米型スタジオだ。総額300億円規模の製作予算を準備し、Netflixと戦略的提携契約を締結するなど、本格稼働が進む。日本をリードするプロデュース集団としてこれから何を仕掛けていくのか。THE SEVEN代表取締役の菅井龍夫氏(TBSテレビ専務取締役)に話を聞いた。前編に続き、お伝えする。

【前編】日本初のTBSスタジオ組織が世界市場で何を目指すのか

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THE SEVENオフィス

■クリエイター人材が働きやすい労働環境に

――プロデュース集団を掲げ、Netflixオリジナル『今際の国のアリス』を手掛けた森井輝氏やVFXプロデューサーとして活躍する赤羽智史氏が所属していますが、このお2人を中心にどのような活動が現在行われているのでしょうか。

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左から森井輝氏、赤羽智史氏、菅井龍夫氏

菅井氏:森井さんを中心としたプロデュースチームは現在、グリーンライトが灯るべく各OTTと話し合いを進めています。大まかなスケジュールとしては緑山の専用スタジオの完成が今年の秋に予定していますので、それ以降、収録が始まっていくというイメージです。このプロデュース部門を活発化させていく一方で、赤羽さん率いるVFX部門も大きな柱の1つにあります。テレビ局各局や映画会社のブロックバスター作品を赤羽さんが請け負っていますので、このVFX部門の収益が先に上がっていく見込みです。

最近の傾向として、大型作品になればなるほど、VFXに頼る比重は高くなっています。けれども、日本の作品はコストと技術の両面で課題があります。VFXに対して十分にコストをかけられず、技術力が追い付いていないところがあるのです。これらを解決していくことで、作品の世界観を表現する力は高まります。THE SEVENが日本のVFXをリードし、新しいVFXを開発するハブになることを目指したいです。

――クリエイター人材の規模を今後拡大していく計画はあるのでしょうか。

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THE SEVEN 代表取締役 菅井龍夫氏

菅井氏:実はTBSと別会社の形態にしたのはクリエイター人材が働きやすい労働環境にしたかったことも大きいです。森井さんも赤羽さんもTHE SEVEN独自の労務形態で活動してもらっています。今後、作品ごとにクリエイターの方々と契約を結ぶなど、多岐にわたる雇用契約を用意したいと考えています。最近の若いクリエイターの方は自分たちが取り組みたい作品をより良い環境で、より沢山の人に観てもらいたいと思う意識が高い。そういう意味でこういう会社があってもいいのではないかと思うのです。

■製作レベルの高い韓国を追っかけていく

――THE SEVENプロデュース作品として年間どれぐらいの本数が動いていくのでしょうか。

菅井氏:目指すは年間、複数本です。TBSのIR説明会でも興味を持っていただき、売上高や本数について問われますが、申し訳ないのですが、現段階では確約している本数をお伝えすることができず。まずはグリーンライトが灯った時点で動いているラインナップを含めて発表していくことを目指しています。

――では、クリエイターに対して掲げている数値的な目標があれば教えてください。

菅井氏:KPI設定として、制作陣のスタッフに課しているは世界のOTTトップ10に何本ランクインできるのかということです。達成まで何年もかかるかもしれませんし、なかなか難しいことだと思いますが、世界標準のクオリティ作品を作り上げることによって、日本のクリエイターや原作、そしてTHE SEVENを知ってもらい、評価されることが目的であり、目標です。

――たとえばNetflixでは世界トップ10ランキングに「イカゲーム」の世界的ヒット以降も韓国作品がいくつもランクインしていますよね。

菅井氏:韓国作品の凄さはトップ10にランクインしている作品がシーズン2だけではなく、常にシーズン1が入っていることにあると思います。全く違うテイストの原作を掘り起こし、見せ方も投げかけている問いもそれぞれ違う。この5年で恐ろしい程にレベルが上がっています。資本力のあるCJが本格的にこの分野に参入したことが大きいと感じています。さらに韓国政府の応援もあると聞いています。まずは韓国を追っかけていきたいです。

■TBS発ウェブトゥーン原作も魅力の1つ

――改めてお聞きします。日本のテレビ局初のスタジオということで、海外から何を期待され、また強みになると思いますか?

菅井氏:昨年11月にNetflixと戦略的提携契約を締結したことを同時リリースしたところ、70を超える国内外のメディアで取り上げられました。海外から興味を持たれているのは確かです。特に日本の原作権についてです。アニメに限らず、小説を含めて欧米の原作とは視点が違うものが日本には多々あるからです。欧米各社にとって、我々と一緒になって動く方が日本の原作権を獲得しやすいと考えられていることもあり、興味を示してくれているのだと思います。

またTBSグループが保有するウェブトゥーンにも興味を持ってもらっています。TBSは昨年の夏に韓国最大のIT企業であるNAVERらと合弁のウェブトゥーン制作会社「Studio TooN(スタジオ・トゥーン)」を作り、これも中期経営計画「TBSグループVISION 2030」のEDGE戦略に沿った事業の1つです。映像化にあたり、ここで新たに作られるウェブトゥーン原作を確保できることも魅力にあるようです。

――最後の質問になります。日本のTHE SEVENとして世界に向けてどのような作品を打ち出していきたいと考えていますか?

菅井氏:具体的な作品内容については現段階ではお伝えできませんが、今の日本のアニメ作品で多く取り扱われているジャンルや地上波では実現できないような高額予算の作品などをヒントに、探っているところです。世界に通用するようなスケール感のある作品になることは間違いないです。森井さんが手掛けた「今際の国のアリス」が世界的にヒットし、次のステップに繋がるような動きが出始めていますから、作り手たちがなるべく早く勝負できるように我々が世界への扉をこじ開けていきたいと思っています。世界との制作能力の差が埋まらずに「悔しい」と思っていられるうちに、追いかけ並びたい。たくさんの方に観て頂けるような作品を目指し、頑張ります。

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TBSのリソースを活かしながら、世界標準のクリエイティブ体制とビジネスモデルを追求した欧米型スタジオTHE SEVENが立ちあがった背景には世界のOTTの躍進があり、世界の映像コンテンツ市場が変革期にあることも大きい。事業の取り組みは始まったばかりだが、日本の映像業界に一石を投じる役割があることも十分に意識しているように見える。

日本初のTBSスタジオ組織が世界市場で何を目指すのか~THE SEVEN菅井龍夫社長インタビュー【前編】

テレビ業界ジャーナリスト 長谷川朋子

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