暗いニュースだけじゃない、コロナ禍で生じた前向きな変化/鴻上尚史

暗いニュースだけじゃない、コロナ禍で生じた前向きな変化/鴻上尚史

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2020/09/16

―[連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史>]―

◆暗いニュースだけじゃない、コロナ禍で生じた前向きな変化

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行きつけだったお寿司屋さんが閉店しました。表向きは線路の高架化のために移転と発表されていましたが、職人さんに聞けば、コロナでチェーン店全体の売り上げが落ちた結果、店舗を売却しての撤退でした。

倒産件数が予想より少ない、なんて言い方をしている人がいますが、廃業とか撤退とかいれたら、かなりの数になるんじゃないかと思います。

コロナは哀しいことが多くて、なかなか気が晴れません。

でもね、例えば、「政府の教育再生実行会議は、『ポストコロナ期』の小中学校や高校の教育を議論」し、「来年度の予算編成において、関係省庁に対して少人数学級の導入の検討を促すことで合意した」なんていうニュースは、希望だなと思います。

コロナがきっかけで、日本も先進諸国並の20人前後の少人数学級になれば、子供達も、コロナで苦しんだだけじゃなくて、少しは救われるのではないかと思います。

◆災害の避難も日本は「体育館でざこ寝」

災害の避難もそうです。

ずっと日本は「体育館でざこ寝」が続いています。

海外では、体育館に整然と家族別の簡易テントが並んだ写真なんかが紹介されて、溜め息をついたりしました。プライバシーを守ることがなによりも、「自我」を大切にする人達には重要問題だからですね。

でも、日本は、個人の「自我」ではなく、「集団我」(©社会心理学者・南博)ですから、集団を自分のアイデンティティーにして、わりと自分を犠牲にすることに耐えられるわけです。プライバシーがなく、周りから見られても、耐えがたい苦痛にはなかなかならないので、ざこ寝が繰り返されているわけですね。

それが、台風10号の時もそうですが、体育館の三密を避けるために定員を制限するようになりました。

対策として、自治体としてもホテルへの避難を促すようになりました。

その結果、例えば、愛媛県宇和島市は分散避難を後押しするため、宿泊費の補助制度を創設しました。

障害者や75歳以上の高齢者のみの世帯が、指定された宿泊施設に避難した場合、宿泊費を補助するもので、7月分からは対象者を75歳以上の者すべてへ、上限額を5600円までと、拡充したそうです。

広島県大崎上島町は町内のホテルと協定を結び、指定避難所に定員を超える避難者が集まると判断したら、部屋を貸してもらうことにしました。避難所から送迎バスでホテルまで運び、宿泊費は町が負担するそうです。

◆「自助・共助・公助」のうち“公助”はどこまで補償されるのか

そもそも、災害大国なわけです。

毎年、この国ではどこかの町では体育館に避難している人がいます。

もう何十年も続いている風景です。

いいかげん、「簡易テント、用意しようよ」とか「ホテルに宿泊補助か全額支援しようよ。それが経済を回すことになるし」と言い出す人達が出てこないとおかしいと心底思います。

菅官房長官(本稿執筆時点)は「自助・共助・公助」と仰いましたが、体育館でざこ寝をするのは「自助」でしょう。

そこで避難した人同士助け合い、水や食料を分け合ったり、お互いの身体を心配するのは「共助」でしょう。

そして、ホテルの宿泊代を援助したり、完全にプライベートを守れる簡易テントを体育館に並べるのが「公助」だと思います。

体育館にブルーシートを敷いて、毛布を貸し出すことを何十年も続けることを「公助」と呼ぶのは、災害大国には相応しくないと感じます。

◆「公助」を求めるのは申し訳ない

日本人は優しいので、充分な「公助」がなくても、そんなに怒らないのかもしれません。

また「公助」を求めるのは申し訳ないと思ってしまうのでしょう。

朝日新聞によれば、宇和島市で「今回の台風はすごく大きいから」と娘に勧められてホテルに泊まった84歳の女性は、「ぜいたくだと思ったけど、雨風の音が聞こえず、よく眠れた」と答えていました。

コロナによってホテルを含めた分散避難が当たり前になって、ホテルに対する自治体の補助が出るようになれば、ひとつの希望ではないかと思います。ホテル避難は、コロナによって経営難に陥っているホテルに対する振興策になりますからね。

暗いだけじゃくて、コロナで前向きに変わることがあるとホッとします。

―[連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史>]―

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