“最強の絵師“ことキム・ジョンギにインタビュー「韓国Web漫画の勢いは日本以上」

“最強の絵師“ことキム・ジョンギにインタビュー「韓国Web漫画の勢いは日本以上」

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  • 更新日:2017/12/11

筆ペン1本でなんでも生み出すことができる、“現代最強の絵師”と呼ばれる韓国の漫画家がいる。

キム・ジョンギさんが話題となったきっかけは、2011年にソウル近郊で開催された「マンガフェス」でのライブ・ドローイングで4日間にわたって描き続けた映像だった。

その彼が、12月1日から3日まで開催された「東京コミコン2017」にて、映画専門チャンネル「ムービープラス」ブースでライブドローイングを行った。真っ白なキャンバスに、下書きなしで壮大なイラストが描かれる様には、会場を歩く人が思わず足を止めて目を奪われる。

現在も世界中からライブドローイングのオファーがひっきりなし。日本でも、今年だけで寺田克也さんとの画集出版、大友克洋トリビュート展でのライブドローイングなど、活動の場を広げている。

貴重な来日の機会に、キム・ジョンギさんが影響を受けた日本の漫画、そして、韓国漫画を取り巻く現状への懸念と期待について語った。

漫画家目指すきっかけは鳥山明『Dr.スランプ』

キム・ジョンギさんが絵を描くキッカケは、日本では知らない人のいない巨匠の作品だった。

「幼稚園の時、親が買ってくれた子供用スケッチブックに『Dr.スランプ』のイラストが描かれていました。その絵がとても素敵で、自分もこういう絵を描きたいと言ったら、漫画家になれと教わりました」

言うまでもないが、『Dr.スランプ』は、『ドラゴンボール』で知られる鳥山明さんによる代表的な漫画の一つ。キム・ジョンギさんが目にしたのは、ゴーグルをつけた魚のイラストだったという。

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その場で描いてくださった、当時目にしたイラストのイメージ

『Dr.スランプ』の漫画を読むのはずっと後になってからのことだったが、以来、キム・ジョンギさんは、日本のポップカルチャーから多大な影響を受けながら、イラストの腕を磨き続けた。

一度は美大に進学しながらも、一刻も早く漫画家になりたいという一心から美大を中退。プロの扉を叩きアシスタントから始め、その後、頭角を現していく。

記憶するのではなく、構造を理解する

キム・ジョンギさんが世界的に話題を集めた理由の一つは、下書きなしで行われる驚愕のライブドローイングにある。

まるで、彼にしか見えない実物がすぐ隣に存在しているかのように、精巧な筆致で迷いなくメカや動物、人物たちを生み出していく様は圧巻だ。日本を代表する漫画家の一人である『血界戦線』の内藤泰弘さんをして「魔法みたい」(関連記事)と言わしめるその技は、一体どのように身につけたのか?

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「東京コミコン2017」ステージで、内藤泰弘さん(写真右)とキム・ジョンギさん(写真左)が対談した様子

「好きなもの(対象)を描き続けていたら、気付いたら(下書きなしで)なんでも描けるようになっていた」

自転車がほしいと思ったらひたすら自転車を、スニーカーにハマったらスニーカーをひたすら描いてきた。

「ただ記憶するだけじゃなく、構造を理解することです」

“好きこそものの上手なれ”と言うが、好きなものを描き続けることで構造を理解し、頭の中でより緻密にイメージできるようになったという。

もちろん、単なる模写ではない。キム・ジョンギさん流にアレンジされたあらゆる対象が、次々と白いキャンバスに生まれていく。

下書きなしで描いたきっかけは、必要に迫られて

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下書きをせずに描くようになったきっかけは、美大向け予備校の講師をしていた時だった。

生徒に見本を示すため、次から次に絵を描く必要に迫られたキム・ジョンギさんが編み出したスタイルが、下書きなしでのドローイング。

「試しにやってみたらできたんです」。時間短縮のために、それ以降は下書きなしでその場で絵を描くことで、これまで以上のペースで生徒に教えることができるように。

最も影響を受けた日本の漫画家4名

キム・ジョンギさんは、特にネット上で、「世界一上手いイラストレーター/漫画家」と取りざたされている。

このことについて本人は「本当に辞めてほしい、恥ずかしい」と苦笑まじりに語った。

「スポーツには記録があるから(世界一と)言えるけど、漫画やイラストはアートなので、そういうふうに言うのは嫌いです。外国にいくと『マスター』と言われるのですが、それを一番辞めてほしい。合わない服を着させられているようです……」

もっと自分より偉大なクリエイターはたくさんいる。そう言ってキム・ジョンギさんが名前を挙げたのは4人。

メカニカルな描写は士郎正宗さん。コミカルでおしゃれな絵は鳥山明さん。

日本の漫画のスタイルとは違う、リアルな作風は大友克洋さん。

そして、新世代で、やはり日本のクリエイターとは異なる独特の作風に影響を受けたという寺田克也さん。

いずれも、説明の必要がないほど日本でも知られた漫画家たちだ。「(自分が)最も多大な影響を受けた日本のクリエイター」とした。

さらに若いクリエイターの中にも、注目している人は多いという。村田雄介さん、沙村広明さん、OKAMAさん……「自分だけの作風を持っている人が好きです」。

韓国漫画を取り巻く現状。急成長続ける「WEBTOON」

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常に描き続けるキム・ジョンギさんが持ち歩いているスケッチブック

現在『週刊少年ジャンプ』で連載中の、2017年最注目漫画『Dr.STONE』。原作の稲垣理一郎さんとともに同作を手がけるBoichiさんをはじめ、近年、韓国出身漫画家が日本で活躍する例も増えてきている。

「昔は、韓国では漫画は子供のものという考えでした。でも、今の40代くらいからは漫画を読んで育った世代なので、考え方が変わってきています」

特に現在、韓国で急成長を続けているとされる「WEBTOON」(ウェブトゥーン)。文字通り「Web」と「Cartoon」を組み合わせた造語で、日本で言う「Web漫画」を指す。

「WEBTOON」の盛り上がりを端的に表すエピソードとして、人気になれば、一カ月に1億ウォン(日本円にして1000万円)もの原稿料を受け取っている漫画家もいるという驚愕のエピソードがキム・ジョンギさんの口から語られた。

一方で、韓国でも紙の出版を取り巻く状況は芳しくなく、市場規模が成長し続ける「WEBTOON」業界に読者も漫画家も流れていっている。

「日本は、漫画だけではなく、ゲームやトイ、アニメなど、様々なカルチャーが盛り上がり、バランスがとれています。でも、韓国では、漫画の、それも「WEBTOON」だけが突き抜けて盛り上がっていて、そこが心配でもあります」

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「WEBTOON」隆盛と時を同じくして、漫画がドラマ化や映画化される事例も増えてきている。その点も日本と同じだ。ただし、キム・ジョンギさんは、韓国の漫画は「まだまだ日本と比べてレベルが低い」とも感じている。「まだ、韓国の漫画は日本を追いかける立場にいます」。

「WEBTOON」の盛り上がりは日本以上のため、今後、そこから新しい動きや才能が生まれてくる期待感も抱えているというキム・ジョンギさん。「日本のように、(韓国の漫画も)これからもっとレベルアップして広がっていけば」と期待を込めて語った。

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