覚せい剤を使った自慰行為にハマッてしまった中年男性の末路<薬物裁判556日傍聴記>

覚せい剤を使った自慰行為にハマッてしまった中年男性の末路<薬物裁判556日傍聴記>

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2019/08/20

―[薬物裁判556日傍聴記]―

薬物事案の裁判を556日に渡って傍聴し、法廷劇の全文を書き起こした斉藤総一さんの手記。今回の被告は前川保宏。無職の53歳。彼は男性と同居しており、彼の証言によれば、その同居人男性(家主)は、彼が覚せい剤を摂取していることは知らないという。彼は日常のなかでどのように覚せい剤を摂取していたのか。

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斉藤総一さん

※プライバシー保護の観点から氏名や住所などはすべて変更しております。

◆友人が売人の電話番号を教えてくれて…

例によってまずは起訴状の朗読から見ていきましょう。

検察官「公訴事実。被告人はみだりに平成28年4月14日。中野区南台4-68-27 スカイコート中野313号室、被告人方において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩類を含有する白色結晶状粉末3.74gおよび大麻である乾燥植物片0.668gを所持したものである。罪名および罰条、覚せい剤取締法違反第41条の2第1項。大麻取締法違反第24条の2第1項。以上です」

ついで冒頭陳述。お決まりの流れです。

検察官「検察官が証拠による証明しようとする事実を申し上げます。まず被告人の身上関係ですが、被告人は障害年金を受給しながら生活しており、住居地にて暮らしております。犯行状況につきましては、公訴事実で申し上げた通りであります。被告人は大麻と覚せい剤を自宅で所持しておりました。本件は捜索差押許可状にもとづいて、捜索したところ発覚した事案であります。以上の事実を立証するため、証拠等、関係カード記載の各証拠の取り調べを請求します」

家宅捜査したところ部屋から大麻と覚せい剤が出てきた。被告人質問のなかでも、当然のように手を出したきっかけ、入手先について聞かれます。

弁護人「一番最初のきっかけというのは、どういったものだったんですか?」

被告人「きっかけは知人から覚せい剤とは知らずに勧められたのがきっかけです」

弁護人「最初は知らなかったんですね?」

被告人「はい。気持ちがよくなるものだと知らされただけです」

弁護人「あなたは購入先をどのように知ったのですか?」

被告人「知人から電話番号を教えてもらいました」

一体、どんな知人が薬物の売人の電話番号を教えてくるのでしょうか。ともあれこうして彼は薬物に手を出してしまったということです。

弁護人「最初は何を買ったんですか?」

被告人「大麻です」

弁護人「大麻、覚せい剤それぞれ何回購入しましたか?」

被告人「大麻が1回、覚せい剤が3回ほどだったと思います」

弁護人「大麻は最初だけだったんですか?」

被告人「はい」

弁護人「以降は覚せい剤?」

被告人「はい」

弁護人「どれも同じ売人から買ったんですか?」

被告人「はい。そうです」

弁護人「一番の大麻はあなたの意志で購入したんですか?」

被告人「いえ。売人の方から強く買うように勧められました」

弁護人「そのあと覚せい剤を買ったのはいつ頃ですか?」

被告人「それから数ヶ月くらい経ってからだと思います」

弁護人「それもあなたの意志で購入したんですか?」

被告人「いえ。違います」

弁護人「どういうことですか?」

被告人「売人の方から、執拗に何回も繰り返し連絡がありまして、時間に関係なく夜遅くにも電話がかかってきまして、それで買うことになりました」

被告人の言葉を信じるなら、彼の出会った売人はなかなかタチの悪い人物と言えそうです。この後にも「電話がかなり何回もかかってきて、電源を切っても、またその後も電話がかかってきた。買わないと結局のところ電話が鳴り止まない状態」と、被告は説明します。

弁護人「同居人の方はなんていう名前ですか?」

被告人「尾形さんです」

弁護人「同居人の尾形さんは男性のかたですよね?」

被告人「はい」

弁護人「あなたが違法薬物を所持していたことは知っていたんですか?」

被告人「知っていませんでした」

弁護人「あなたいま保釈中ですけども、保釈のお金を用立ててくれたのは誰ですか?」

被告人「尾形さんであります」

弁護人「その尾形さんに対して、どういうお気持ちですか?」

被告人「大変申し訳ない気持ちでいっぱいです」

◆覚せい剤で自慰行為

今度は検察官による被告人質問に耳を傾けてみましょう。

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イラスト/西舘亜矢子

検察官「覚せい剤をどういうふうに使っていたかは、捜査段階で話しました?」

被告人「はい。話しました」

検察官「話したくなかったら話さないでいいですけど、どういう時に使っていたんですか?」

被告人「先ほどもお話しましたように、覚せい剤を水で溶かしたものを、陰部、陰茎部分に塗りまして、それで自慰行為を行っていました」

検察官「自慰行為のほかに、どういうふうに使っていたか、差し支えなければ……?」

被告人「はい。自慰行為の他には使うことはございませんでした」

検察官「警察には、もっと他の時に使うと話ししていませんでしたか?」

被告人「いえ。室外では一切使ったことはございません」

検察官「性行為?」

被告人「あっ、それは最初知人の方との時に、そういった場面がございまして。性行為の時ではその方と以外は使っておりませんし、その方とも途中で連絡を絶ちましたので」

検察官「覚せい剤が法律に反することは常識として知っていましたか?」

被告人「はい」

「差し支えなければ」という前置きの割に、一言「性行為?」とは随分突っ込んだ質問に思えます。被告の心情を考えれば、あまり答えたくない類の質問ではないかと想像されますが、聞く必要があったのでしょうか。当然これは避妊具を使わず行為に及んでいたことを意味しています。注射器でも炙りでもなく、粘膜による覚せい剤摂取。様々な使用法があるものですが、判決は初犯による使用者の量刑相場通り。すなわち以下です。

裁判官「ここに記載する覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反の事件について判決を言渡します。主文。被告人を懲役1年6ヶ月に処する。この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。懲役1年6ヶ月とありますが、執行猶予つきの判決ということになりますので、直ちに刑務所に行くことはないということになります。

ただし、この執行猶予期間中に再び罪を犯し刑に処せられることがあれば、この執行猶予の言渡しは取り消されます。その場合には今回言渡しがあった懲役1年6ヶ月については実際に服役してもらうことになりますし、新たに犯した罪の刑についても合わせて受けることなりますので、そのようなことがないように十分注意して生活をしてください。

次は刑務所だということを思っていてください。この判決に不服がある場合には控訴の申し立てをすることができます。その場合は明日から14日以内に、その旨を書いた東京高等裁判所宛に控訴申立書をこの裁判所に提出してください。以上で判決の言い渡しを終わりにします」

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本法廷の被告はいわゆる“シャブセックス”による末路と言っていいだろう。「女がシャブセックスを覚えたら、オーガズムとの相乗効果で絶対にやめられない」と、かつて取材で聞いたことがある。今回の被告は男性同士で使用していたのだが、“シャブセックス”の快感の度合いに性差はあるのだろうか。どうあれ検察官の質問を読む限り、罪を犯してしまった人間にセンシティブな配慮は不要ということらしい。

<取材・文/斉藤総一 構成/山田文大 イラスト/西舘亜矢子>

―[薬物裁判556日傍聴記]―

【斉藤総一】

自然食品の営業マン。妻と子と暮らす、ごく普通の36歳。温泉めぐりの趣味が高じて、アイスランドに行くほど凝り性の一面を持つ。ある日、寝耳に水のガサ入れを受けてから一念発起し、営業を言い訳に全国津々浦々の裁判所に薬物事案の裁判に計556日通いつめ、法廷劇の模様全文を書き残す

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