日活ロマンポルノ傑作選 行定勲、宇多丸、城定秀夫、瀬々敬久の「この1作」

日活ロマンポルノ傑作選 行定勲、宇多丸、城定秀夫、瀬々敬久の「この1作」

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  • 更新日:2021/11/25
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行定勲氏らが日活ロマンポルノ「この1作」を挙げる

今年で50周年を迎える日活ロマンポルノは多くのクリエイターたちに影響を与えた。映画を愛してやまない行定勲(映画監督)、ライムスター・宇多丸(ラッパー)、城定秀夫(映画監督)、瀬々敬久(映画監督)の各氏が、それぞれ「この1作」を挙げた。

【写真】日活ロマンポルノ「この1作」を挙げたライムスター・宇多丸、城定秀夫、瀬々敬久

『悶絶!!どんでん返し』

【1977年公開 監督/神代辰巳 出演/谷ナオミ、鶴岡修、遠藤征慈、結城マミほか】

ある日、東大卒のエリートサラリーマン・北山はホステス・あけみの部屋へ。しかし、そこにいた情夫のヤクザ・川崎に犯されてしまう。それを境に北山は、徐々に女装に目覚め、男女3人のいびつな三角関係が展開していく……。

「壮絶なラストシーンはロマンポルノ史の中でも最も秀逸な場面」と語るのが行定勲氏(映画監督)だ。

「10分に一度のセックス描写、実制作費750万円という限られた中から性愛をテーマに突出した映画群を生み出したにっかつロマンポルノの中でも、神代辰巳監督の作品は一際、輝いて見えた。『赫い髪の女』『赤線玉の井 ぬけられます』『四畳半襖の裏張り』などの傑作は言わずもがなだが、『悶絶!!どんでん返し』が最もエキセントリックな映画として私の記憶に残っている。

サラリーマンの男がホステスの家に上がり込み関係を結んでいるところにヤクザ風情の同居人の男が帰ってくる。驚愕するサラリーマンはそのヤクザの男に無理矢理犯される。その時、サラリーマンの男は女性の悦びを知り、ヤクザの男を女と奪い合うような歪な三角関係が生まれていく。そこには性別を超越した感情が浮き彫りにされ、滑稽さと悲哀を込めて描かれる。すっかり女性化した男が棄てられる壮絶なラストシーンはロマンポルノ史の中でも最も秀逸な場面だったと私は思う」

『ピンクカット 太く愛して深く愛して』

【1983年公開 監督/森田芳光 出演/寺島まゆみ、山口千枝、井上麻衣、山地美貴ほか】

女性従業員がミニスカートで働く大繁盛の床屋を舞台に、男性客の要望がエスカレートし、徐々に風俗店と化していく様を描いた青春エロティック・コメディ。森田芳光監督による軽妙なタッチが光る。

ライムスター・宇多丸(ラッパー、ラジオパーソナリティ)はこの作品を「まさしく森田芳光にしか作り得ないロマンポルノの快作」と位置付ける。

「1982年の『噂のストリッパー』と翌1983年の『ピンクカット 太く愛して深く愛して』は、自主制作映画出身の森田芳光が、プロとして必要な撮影技術を急速に身につけた、という点でも非常に重要な2作で、仮にもしこのプロセスを経ていなければ、続く商業映画第5作目『家族ゲーム』があそこまでの歴史的傑作となることも、恐らくなかったのではないでしょうか。

特に『ピンクカット』は、初のセット撮影、ほぼ全編移動ショットなど、スタジオならではのテクニックを存分に駆使出来る喜び、ポップな人工美とオフビートな遊び心に満ちた、まさしく『森田芳光にしか作り得ないロマンポルノ』の快作。いささか強引な音楽劇としても、楽しい!」

『キャバレー日記』

【1982年公開 監督/根岸吉太郎 出演/竹井みどり、伊藤克信、森村陽子、早野久美子ほか】

舞台は新宿・歌舞伎町のキャバレー。チェーン店同士で熾烈に競争する「ミスニッポン・新宿グラマー店」では軍隊式の厳しい人間管理のもと、濃厚サービスで売り上げ日本一を目指すも、男女模様が入り乱れ様々な事件が起きる。

「このみっともなさ、泥臭さこそが僕の知っている青春だ」と評するのが城定秀夫(映画監督)。

「キャバレー(というかピンサロ……いや、本サロ?)を舞台に各々の事情を抱えながらも逞しく生きる女性たちと、体育会系(というか軍隊)ノリで管理された男性従業員たちが繰り広げる笑いと涙の群像劇。何度見てもこれだけの数のキャラクターを生き生きと動かし80分にまとめ上げる荒井晴彦の脚本と、軽やかで無駄がなく、かつパワフルな根岸吉太郎監督の演出に舌を巻き、恋に破れひとり社歌を口ずさみながら眩しい朝日を見上げる伊藤克信の背中に涙してしまう。

この猥雑さの中から立ちのぼる人間賛歌こそがロマンポルノだ。このみっともなさ、泥臭さこそが僕の知っている青春だ。自分がピンク映画の世界に身を投じる契機にもなった大傑作です!」

『天使のはらわた 赤い教室』

【1979年公開 監督/曽根中生 出演/水原ゆう紀、蟹江敬三、あきじゅん、水島美奈子 脚本/石井隆、曽根中生】

石井隆が原作の「天使のはらわた」シリーズ第2弾。暴行現場が収録されたブルーフィルムを巡って、運命に翻弄される女性の人生を描く。主演の水原ゆう紀は本作の大胆演技で第1回ヨコハマ映画祭主演女優賞を受賞した。

瀬々敬久(映画監督)は、「石井隆の紡ぐ物語の数々はシンプルにして力強く僕たちの心を打ち続けてくれた」と言う。

「1970年代後半からのロマンポルノを牽引し続けたのは石井隆原作あるいは脚本の、名美と村木のシリーズだと個人的には思っている。どれも大好きな作品なのだが敢えて挙げればこの映画。煉獄を生き続ける名美を追う村木が『もう俺にはそこまでは行けない』と追うことを諦める、ラストシーンの蟹江敬三の悲哀。水原ゆう紀の堕ちっぷりも素晴らしく、もはや神々しい。

黄泉の国に行ったイザナミノミコトを追いかけてきたイザナギノミコトがイザナミのあまりの変わりように恐れをなして逃げ帰ってしまうという神話を思い出す。神話の物語の強さに引けを取らない強度で石井隆の紡ぐ物語の数々はシンプルにして力強く僕たちの心を打ち続けてくれた」

※週刊ポスト2021年12月3日号

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