トヨタが匠の技とデジタルを融合させたクルマづくりを公開!
トヨタは2023年9月に、「人中心のモノづくりで、工場の景色を変え、クルマの未来を変えていく」というモノづくりにおけるトヨタらしさの継承と進化のワークショップを行いました。
創業以来磨かれたトヨタの技能・技術とはどのようなものなのでしょうか。

最新のクルマ開発に長年の技術が採用されている? 匠の技とは?
今回の「トヨタモノづくりワークショップ」では、愛知県内にあるトヨタの貞宝工場、明知工場、元町工場で取り組む様々なモノづくり技術が公開されました。
【画像】これが最強のセンチュリー!? 匠の技が凄い… 写真を見る!(44枚)
トヨタのモノづくりとなる「TPS(Toyota Production System/トヨタ生産方式)」の原点は、トヨタ創業者の豊田喜一郎やトヨタグループ創始者で
ある豊田佐吉にまでさかのぼると言います。
TPSとは、人が作業をしやすい、人の力を最大限活かせる「人中心のモノづくり」を行うことで生産ラインのムダを効率化するものです。
では、人中心で培われた技能と技術はどのように継承されているのでしょうか。
今回の貞宝工場、明知工場、元町工場では、異なる展開を行っています。
まず貞宝工場では、従来の工場で見られるプロダクトが生産される風景と異なる様子が伺えます。
これまでトヨタでは、創業以来、同じ想いを共有した仲間が現場に集まり、知恵を出し合い、創意工夫を重ね、高い技能を通じて新たなモノづくりを生み出し、量産化してきたと言います。
そして、2021年に貞宝工場の一角にスタートアップスタジオを開設しました。
トヨタはモビリティカンパニーに変革を図る中で、高まる新たなモノづくりニーズに素早く対応するため、アイデアをスピーディに具現化し、試作開発、量産技術開発に取り組める環境を整備。
実際にはメンバー同士が闊達に意見交換を行えるラウンジと、そのすぐ横にモノづくり工房を設置しています。
ここでは、近隣の小学生からのアイデアを具現化するチームも存在。実際にカタチにしたものをプレゼントすることで、子供達に「モノづくりの楽しさ」を伝えていきたいと言います。
またトヨタには「匠」と呼ばれる高い技能を持つモノづくりのプロフェッショナルが多数在籍。
この貞宝工場では、匠の技能継承がデジタルを活用して行われている様子も公開。
トヨタに限らずモノづくり現場において、匠が持つ技能の伝承は、多くの企業が共通で抱える課題となっています。
多くの技能は、言葉で伝えるだけではコツを掴むことが難しいです。さらに技能者の育成には時間を要する他、指導できる技能者の数も限られているなどの課題も存在。
そこでトヨタは、言葉だけでは伝わりづらかった技能をデジタルを使って見える化し、匠の技能を「わかりやすく」「簡単に」「広く」次世代に継承するツールを開発し、人材育成に活用していくと言います。
さらには匠の技能をデジタル解析することで、将来の自動化も視野に入れていると説明。
現地ではこれまで熟練者の技術で行っていた「シーラ塗布」を継承するためにAR技術などを活用して短時間で取得する事例がお披露目されました。

熟練した技をデジタル上で表現することで従来よりも短く取得出来る
次に訪れた明知工場では、匠の技が披露されました。
匠の技能は、ロボットではできない繊細な作業や高品質な製品仕上げでその真価を発揮します。
今回、ひとつの例として、レースで勝つために求められる厳しい性能要求に応える匠の技として、匠のアルミ鋳造技術が公開されました。
現地ではアルミ鋳造技術の一例として木型技術を披露。まるで複雑なパズルのような部品を構成していく様子は圧巻です。
なお細かな技術以外にも過去に培われた知見により、ゼロから設計図起こし、実物を作って測定するという工程を少なくすることが出来ると言います。
今回のこの技術は、とくに超高性能が求められるモータースポーツ向けのエンジンに用いられています。
そしてレースの現場で鍛え上げられ、そこで得られた知見は、その後の登場する量産車にも反映され、トヨタが提唱する「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」に繋がっているのです。

執行役員・Chief Production Officerの新郷 和晃氏
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これらのものづくりについて、執行役員・Chief Production Officerの新郷 和晃氏は、次のように述べています。
「CPOに就任して半年、トヨタのどこの現場にいっても感じたのは『誰か
の仕事を楽にしたい』、『みんなの笑顔のために』という創業期から
変わらぬ精神が現場に息づいているということです。
かつて豊田佐吉が自動織機を発明したように、今も『無』から『有』を生み出して改善を積み重ね、魅力ある製品を世に出していく、スタートアップの力は健在です。
もうひとつは、モノづくりの『高い技能と技術』がしっかり受け継がれているということです。
自動化についても、人がロボットに教えることで高い品質と生産性を両立すると共に、人の技能もさらに高め、またその高めた技能をロボットにさらに教え高めていく。こういったサイクルを回し続けて、技能と技術を磨き続けています」
元町工場では、クルマの個性を高める匠の加飾技術がお披露目された
元町工場では、匠の技・加工技術の進化により、これまで困難とされてきた高い意匠性と機能性が実現できるようになった事例として、いくつかの事例が公開されました。
1つ目は、2023年秋に発売される新型「クラウンスポーツ」に採用される「ピアノブラック調バンパーの塗装レス化技術」です。
従来のピアノブラックは塗装によって作られていましたが、今回の塗装レス技術は、匠の技で鏡のように傷ひとつなく均一に金型を磨き上げることで、塗装なしの素材本来の色で、艶感のあるピアノブラックを実現しました。
この技術は、塗装が不要になることで、塗装作業で発生するCO2排出を削減できるため、工場のカーボンニュートラルにも貢献。さらに多少のキズはふき取りで落ちるなど、キズ補修性も向上しています。
なお新型クラウンスポーツでは、リアコンビネーションランプの付近とリアバンパーにこの技術が採用されました。

匠の技で鏡のように傷ひとつなく均一に金型を磨き上げることで実現した塗装レス技術
さらには2023年9月6日に発表された新型「センチュリー」に採用された「シャープなキャラクターラインを成形するレーザー加工技術」もお披露目されました。
クルマのボディには、デザインの魅力を高めるためのキャラクターラインと呼ばれる線があり、プレス成形で造られますが、形状・部位によってプレス成形でシャープな線を造ることが困難な場合があります。
それを解決するためにプレス成形後に追加でレーザー加工をすることにより、シャープなキャラクターラインを成形する技術を開発。
より線の通りや消え方の細部まで拘り抜いたキャラクターラインを実現しました。
新型センチュリーのAピラーからルーフに繋がるエッジの効いたキャラクターラインが採用された部分です。
同じく新型センチュリーには、試作車づくりを通じて継承し続けてきたハンマーによる板金技能を活かした「柾目」の「スカッフプレート」も採用されています。

センチュリーにオプション設定される「スカッフプレート」にはハンマーによる板金技能を活かした「柾目」が採用される
クルマの開発と言えば、新しい技術が注目されがちですが、長年培われた匠の技が最新のクルマづくりに活かされています。
前出の新郷氏は次のように述べています。
「技術の進化やロボットの導入が進んでも、更なる改善を考えることができるのは TPS を身につけた人財です。
もっと良いモノづくりに向けて、トヨタは、人を鍛え、匠の技を次の世代にも継承し、モノづくりを進化させ続けていくことが重要だと考えています。
トヨタの『技』で、モノづくりの未来を変える。そしてクルマの未来を変えていきます」
くるまのニュース編集部