「今年はインフルエンザに要注意」って本当? W感染で医療破たんの危機

「今年はインフルエンザに要注意」って本当? W感染で医療破たんの危機

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  • 更新日:2021/11/25
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※写真はイメージです (GettyImages)

例年ならば、間もなくインフルエンザの季節だ。ただし書きが付くのは、去年は流行しなかったから。「マスク生活だし、今年も大丈夫でしょ」と油断するなかれ。医師たちが「去年流行しなかったからこそ心配」と口々に言う理由とは──。

【定点当たりのインフルエンザ患者報告数はこちら】*  *  *

厚生労働省の専門家組織は11月17日、新型コロナウイルスの感染状況について、「1人の感染者が何人に感染を広めるかを示す実効再生産数が右肩上がりになっている」との見解を示した。

このまま推移すれば、12月には再び感染者数の増加が見込まれるという。

しかし現場の医師たちは「第6波」と同様に、インフルエンザの流行にも警戒が必要だと言う。ナビタスクリニックの久住英二医師もその一人だ。

「インフルエンザのワクチン接種の出足が例年より遅いのが気がかりです。コロナの感染対策のおかげもあって、去年インフルが流行しなかったことで、油断している人も多いように感じられる」

実際、「今年もインフルは大丈夫でしょう」「コロナワクチンを打ったから大丈夫だと思っていた」という患者が多く見受けられると久住医師は指摘する。

確かに昨シーズン、国内でインフルエンザは流行しなかった。これは1999年に現行方式で記録を取り始めて以来、初めてのことだった。

国立感染症研究所の「季節性インフルエンザ受診患者数」の推計データでは、2017年シーズン(以下同)には約1458万人、18年は約1170万人、19年は約729万人。ところが昨20年は1万数千人台で、なんと例年の約1千分の1にまで激減した。

久住医師は「昨年、流行しなかったからこそ心配だ」と言う。

「インフルエンザウイルスとの接触がなかったため、インフルへの私たちの抵抗力や抗体レベルが下がっている可能性がある。つまり、かかりやすくなっているわけです」

同様の懸念を訴えるのは名古屋市の北医療生協北病院の近藤知己院長(小児科)だ。

「例年は毎週数十人、1シーズンで数百人の感染者が受診しますが、昨シーズンは1~2人でした。今年もそうなってほしいですが、流行しなかった分だけ、社会全体の免疫が下がっていると考えられるのが懸念材料です」

受診した人以外にも、感染しても症状が表れない人がいる。要するに、例年ならインフルに感染、受診した人を上回る人がウイルスに曝露されることで免疫が強化される現象が起こっているが、去年は「流行ナシ」だったために、多くの人の免疫が下がっている可能性が高いというのだ。

インフルは主に「A香港型」「B型」など4種あり、毎年入れ替わるように流行してきたが、「それは抗体が弱まった型のインフルが交代で流行しているから。現場の実感としては19年シーズンも流行は小規模だったので、2年間免疫が休んでいる人も多く、いったん流行すればかかりやすい状態になっている」(久住医師)という。

また近藤院長は、今夏に大流行した小児のRSウイルス感染症の例を引き合いに出した。

「昨年はまったく流行せず、前年比で9割減だったのに、今年は過去数年で一番の感染者が出てしまった。これも流行しなかったために免疫が弱まっていたからという指摘がある」

特に注意が必要なのは、インフルエンザ脳症など重症化リスクが高いとされる5歳未満の小児で、両医師とも「ぜひワクチン接種をしてほしい」と訴えた。

だが、そのインフルワクチン接種が思うように進んでいない現状がある。

「例年ならインフルエンザのワクチン接種は10月から12月ごろですが、今年は入荷が遅れ気味で、接種時期が後ろにずれこんでいます」(久住医師)

厚労省は9月、インフルのワクチンについて「今シーズンの供給が遅れる」との通知を各都道府県に出した。理由は新型コロナワクチンだ。ワクチン製造に使う部品などが新型コロナ用に使われ、インフル用のものについて確保が難しくなっていたのだ。

「子供たちの間で、12月以降は普通の風邪がはやる時期になります。風邪がはやっている中で病院に行き、2回に分けてインフルエンザワクチンの接種をするだけでも子供にとっては感染のリスクとなる」(久住医師)

新型コロナのワクチン接種もインフルのワクチン接種の遅れと関係している。国の大号令もあって、コロナのワクチン接種は11月になっても続くが、「インフルワクチンを打つためには、コロナワクチン接種から2週間空けないといけないので、インフルワクチンの接種も遅れ気味になっている可能性があります」(近藤院長)

コロナワクチンの「ブースター接種」がこれから始まると、インフルのワクチン接種はさらに遅れる可能性がある。

「欧米ではコロナとインフルのワクチンの同時接種をしているところもありますが、日本ではできません。そうこうしているうちに正月で人が動き、ウイルスがシャッフルされるリスクも出てくる」(久住医師)

空港で水際対策が緩和されたのも懸念材料だ。

毎年のインフル流行の目安とされる、オーストラリアなど南半球では流行していないとはいえ、インドやバングラデシュといった亜熱帯では小流行が伝えられている。欧州クロアチアでもA香港型が小流行するなど、決して楽観はできない。

近藤院長は「最悪のケースは新型コロナの第6波とインフルの同時流行で、外来診療の現場は混乱し、ひっ迫も深刻になる」と言う。

両者の症状は似ているので、検査ひとつとっても、診断するには抗原検査でコロナなのかインフルなのか鑑別する必要があり、外来診療の負荷は強まる。仮に新型コロナとインフルに同時感染した場合、それぞれの単独感染よりも肺炎の重症化と回復の遅れにつながる可能性がある、との長崎大学の研究もある。

「同時流行を抑える特別な手段はありません。これまでどおり3密を避け、マスクや手洗い、うがいなどの予防対策を続けることと、ワクチン接種しかありません。お子さんは保育園や家庭での感染が多くなるので、大人が予防してあげるしかありません」(近藤院長)

油断大敵。コロナ対策だけでなく、インフルへの注意も怠りなく!(本誌・鈴木裕也)

※週刊朝日  2021年12月3日号

鈴木裕也

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