佐藤タイジ&KenKen「ComplianS」 互いの生き方に共鳴「振り切らないと生きられない」

佐藤タイジ&KenKen「ComplianS」 互いの生き方に共鳴「振り切らないと生きられない」

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  • 更新日:2022/09/23
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「ComplianS」の佐藤タイジ(左)とKenKen【写真:ENCOUNT編集部】

YMOやプリンスをカバーしたアルバムを制作

ギタリストの佐藤タイジ(55)とベーシストのKenKen(35)が結成した音楽ユニット「ComplianS」がYMOやプリンスなどのカバー曲や、オリジナル作を収録したアルバム「GLOBAL COMPLIANCE」を10月12日にリリースする。ロック・スターと、ベース・ヒーローが、その才能をぶつけ合い生み出した1枚は、自由な発想であふれている。「振り切らないと生きられない」と語る佐藤らに新作について聞いた。(取材・文=西村綾乃)

互いに知った存在だった両者が、ユニットを結成したのは2020年。佐藤が19年11月にリリースしたソロアルバム「My Hero」にKenKenがベーシストとして参加したことが、きっかけだった。

KenKen「初めて会ったのはいつか、もう覚えていないですね。堂本剛くんの現場(ソロの制作)などでも一緒でしたし」

佐藤「そうだね。印象に残っているのは、『中津川THE SOLAR BUDOKAN』(13年から佐藤が主宰する野外ロックフェス)のとき。ライブが終わった後に、出演者を集めて打ち上げをするのですが、これがひどくて……。本番が終わって疲れているのに、ずっと演奏させられるんだよね」

KenKen「そう。(佐藤が)ずっと演奏しているのを見て、かわいそうだなと助っ人でベースを弾いたんです」

佐藤「もうクタクタだったから、KenKenが来てくれたとき、『分かっているな。こいつ』って思いました。先輩がピンチだと悟って、助けに来てくれた。技術的に優れていることはもちろんですが、ノリの部分で一緒になれる。何も言わなくても分かり合えるところは、35歳とは思えない安定感があるんだよね」

「2人でファンキーなものを作ろう」と始まった制作では、持てる力を最大限に出そうとアイデアを出し合った。マイケル・ジャクソンやエリック・クラプトンもカバーしたYMOの「BEHIND THE MASK」は多幸感あふれる極上のロックに仕上げた。

佐藤「YMOの『BEHIND THE MASK』、プリンスの『I Would Die 4 U』は元々、ソロのライブでやっていた曲でした。プリンスは、ベースが入って進化したなと思います。僕がループマシンで1個の音のパターンを録って、それを聴きながら2人で演奏をしたのですが、KenKenは全然ズレない。おそらくいま日本でそれができるのは、KenKenだけだと思う。これって普通のことちゃうからね」

KenKen「タイジさんとは、一緒にジャンプをした後、着地をするまでを共にすることができる。ジャムりまくって、場数踏んできたミュージシャン同士だから出来ること。プリンスは元々100だったものを、200に成長させることができた珍しい曲だったよね。お互いの技術ややりたいこととかを押し付けることはしていないけれど、自然にそれぞれの色が出ている。楽器の演奏がうまい人とやると、本当に楽しいんだなということを再確認できたなと思います」

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ユニット名のアイデアは「洒落がきいたもの」、「振り切らないと生きられないから」と佐藤タイジは語った

2013年からは野外ロックフェス「中津川THE SOLAR BUDOKAN」を主宰

挑戦的なユニット名のアイデアはどこから生まれたのだろうか。

KenKen「オレは、小学校3年生くらいのときにベースを始めたんですけど、当時周りにいたのは(人気キャラクターの)ポケモンとかが好きな子ばかりで、レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)を聴いている(同世代の)子はいなかった。誰もやっていないから、ベースを続けようと思ってやって来たけれど、音楽をやっている人間が市民権を得られるようになったのは、まだこの15年ぐらいの話で。認知される前と同じ感覚で行動していると、社会の中ではまだ目立つんだなと感じるんです。タイジさんと動き始めた頃、オレ自身が世の中に不満を持っていた時期でもあったので、そんなオレが『ComplianS』を名乗るのは面白いんじゃないかと思って」

佐藤「『ザ・タイマーズ』のように洒落がきいたものにしようと。カッコつけずに、ユーモアがあるものと考えていました。いまの日本の中には、独特の同調圧力があると感じていて、それは日本の社会で残念だなと思っている部分。そこをタイマーズのように、笑いながら皮肉りたい。コンプライアンスとは真逆かもしれないけれど、振り切らないと生きられないから」

先行リリースした「Funky Messiah」には、ザ・スパイダースの名フレーズをオマージュする遊び心も。キラキラとした光を放つ音。地を這うようにうごめく音。収録した10曲はアイデアでいっぱいだ。

KenKen「自分は1990年代の意識が強い『板の上至上主義』。今のようにSNSなどがなかった時代は、ステージでやる以外、人前で演奏をする方法はありませんでした。技術を学ぶ方法も、今はYouTubeとかで簡単に知ることが出来てしまうけれど。そうやって簡単に届いちゃだめだなって」

佐藤「YouTubeとかがない時代は、音を聴いてチューニングがどうなっているのか。音を鳴らして必死になって、探したんだよね」

KenKen「そう。その過程が楽しかった。楽器は10年ぐらいやっていれば、誰でもうまくなれる。タイジさんはそういう空気を肌で知っている人。ムッシュ(かまやつ)と一緒にいると、60年代の空気を感じることができたように、タイジさんの側にいると90年代を感じることが出来る。(聴き手にも)風を感じてもらえれば」

佐藤は、東日本大震災の被災者を支援することを目的に、2013年からはイベントで使用する電気をソーラーだけでまかなう野外ロックフェス「中津川THE SOLAR BUDOKAN」(岐阜県中津川市)を主宰。9月23日から、25日まで同地で開くフェスで、ComplianSの新譜を先行発売する。

佐藤「(震災で臨界事故を起こした)福島第一原子力発電所について、過去の出来事のようになっているけれど、まだ終わっていないことが多い。一方で原子力発電所を再稼働させようという動きもあります。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻も続いているし、世の中が見通しにくくなっている。原発、気候変動、戦争など色々な問題が世界で起きているように感じるけれど、根っこはすべて同じだと思っています。戦争は次の世代に残してはいけないこと。戦争を選択しなくても良い社会に変わらなくてはいけない。問題を解決していく人たちを、音楽はひとつに出来る力があると信じています。中津川では、トークライブなども行います。国の力ではなく、音楽のもとに集まった市民が、抱えている問題について考えることで、平和な社会に近づけば」

□佐藤タイジ(さとう・たいじ)1967年1月26日、徳島県生まれ。「ロックスター」、「ファンキー最高責任者」が代名詞。太陽光発電システムによるロックフェス「THE SOLAR BUDOKAN(since 2012)」を主宰。

□KenKen(ケンケン)1985年12月30日、東京都生まれ。たぐいまれなベースセンスが様々なアーティストに愛され、多方面で活躍している。2006年4月に兄の金子ノブアキがドラマーを務めているロックバンド「RIZE」に加入。ギタリストのSUGIZOと結成したバンド「SHAG」などでも、その技術を生かし新しい扉を開き続けている。

西村綾乃

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