
イチロー選抜対高校女子野球選抜 試合を終え、観客からの声援に応えグラウンドを後にするイチロー氏(撮影・横山健太)
イチロー氏が待望の初安打を放った。マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(50)が率いる草野球チーム「イチロー選抜KOBE CHIBEN」と「高校野球女子選抜」が21日、東京ドームで真剣勝負。
イチロー氏は第2打席で右中間二塁打を放ち、対戦3年目の通算9打席目で初安打をマークした。この時の走塁で右足を痛めるも、9回5安打9三振で完封。投打で貫禄を見せた。五十路(いそじ)のイチロー氏もまだまだ若い。
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日米通算4367安打の製造機として、3年目の面目躍如となった。5回先頭の第2打席。イチロー氏は91キロの外角低めカーブに反応し、体をためて右中間へはじき返した。「僕ね、プロでそこそこヒット打ってきたんですよ。もちろん投手としてもそうなんですが、打者としても何としても1本という目標を今回は掲げていた」。9打席目の初安打に「めちゃうれしかったです」と喜んだ。
ところが、好事魔多し。走り始めて一塁へ向かったところ、様子がおかしい。右足を痛めてスピードダウン。どうにか二塁まで到達した。「あれで左足もいかれたらアウトなんですけど、ぎりぎり持ってくれて」。負傷しても交代することはなかった。8回の第4打席でも二塁塁審を直撃する安打を放った。「投げる、走る、打つ。いろんな練習をしてきた。でも打ってから走る練習をしてなかった。また鍛えたい」と反省を口にした。
投げてはマウンドを最後まで譲ることなく、9回116球で5安打完封した。これで3年連続の完投勝利。最速は40代だった昨年より4キロ増して138キロだった。7学年下の松坂氏が「(右足太もも裏が)肉離れなのか、つったのか分からなかった。きつそうだった。ベンチでは一切(表情に)出さなかった。着く足(左足)だったら投げられないと思う。イチローさんの身体能力を感じた」と脱帽する状況だった。
悔しさが51歳を迎える来年へのバネになる。7回に打者として見逃し三振。「嫌な予感がしてました。僕、三振が少ない選手なんですよ。しかも、3球三振なんだから(投手は)誇っていいと思う」。毎年、現役高校生とは1年ごとに年齢が離れていく。どこまでも肉体を鍛え、投打で女子高生の壁となり続ける。【斎藤直樹】
○…高校野球女子選抜は4番谷川萌季内野手(3年=神戸弘陵学園)が、7回先頭でイチロー氏から中前打を放った。試合前の打撃練習後、イチロー氏から「打撃自信ある子おる?」と声をかけられ、周りの後押しもあり前に出た。股関節と下半身の使い方を教わり、「こういう風に体を使えば女子でも長打やホームランを打てるよ」と助言された。谷川は「イチローさんからヒットを打ててうれしい。大学でも野球を続けるので、中学生以来のホームランを打ちたい」と金言を胸に次のステージへ羽ばたく。
▽堂前凌那投手(3年=岡山学芸館)(イチロー氏から7回に3球三振で見逃し三振を奪う)「小学校からやってきた野球人生で一番の思い出。(イチロー氏からクレメンスより打ちづらかったと言われ)ちょっとわからないんですけどめっちゃうれしいです。帰ってすぐに調べます(笑い)」