橋本聖子新体制で浮かび上がった「森vs.菅」の対立 首相が「川淵氏へ禅譲」に激怒した理由

橋本聖子新体制で浮かび上がった「森vs.菅」の対立 首相が「川淵氏へ禅譲」に激怒した理由

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  • 更新日:2021/02/22
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昨年9月、笑顔でガッツポーズを見せた橋本氏(右)と森氏(中)。2人は互いを政界での「娘」「父」と呼び合う関係だ/2020年9月17日、東京都中央区(代表撮影)

女性蔑視発言をきっかけに辞任した森喜朗前会長の後任が、橋本聖子氏に決まった。この人事には後がない菅政権の思惑や、森氏との関係性が透けて見える。AERA 2021年3月1日号の記事を紹介する。

【写真】森氏辞任でほくそ笑んでいたのは…

※【“キス報道”ですねにキズもつ橋本聖子新会長の苦悩 迫られる「二つの決断」と「最大の課題」】より続く

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森氏の女性蔑視発言に端を発する一連の騒動を政権はどうみているのか。菅義偉首相に近い自民党関係者は、橋本氏の起用は本人を含め、官邸、五輪関係者、ジェンダーに対する世論など「誰も傷つくことがないベストシナリオだ」と語る。

「菅首相の頭の中にあるのは、無観客であっても、例え外国選手団が数十カ国になったとしても、今年、絶対に東京大会を開催することです。国際オリンピック委員会(IOC)との協議で、そんな官邸の意向を汲み、足並みを揃えて対応できる人材が絶対条件でした」

安倍晋三前首相が森氏に絶大な信頼を寄せていたのに対し、菅首相と森氏の「距離」を指摘する声は多い。安倍前首相と森氏は同じ派閥の出身で、国家観や上意下達の「体育会系」の価値観を共有していた。

一方、実務派で調整型の菅首相と森氏の間柄は、至って冷めた関係だった。「俺に全権を預けろ」という考え方の森氏と、「まずは相談と根回しを」という菅首相は、最初から馬が合わなかったのだ。そんな2人の調整役が、五輪担当相の橋本氏だった。

「組織委員会の決定事項は、官邸にはすべて事後報告で、官邸は森氏の独断専行を快く思っていなかった。橋本氏を五輪担当相として起用したのは、それを見越した菅さんの人事だった。その意味では森氏よりも、むしろ橋本新会長のほうが、官邸にとっては好都合なのです」(前出の自民党関係者)

菅首相の「意中の人」だった橋本氏は、新会長への期待が高まる中でも就任に難色を示し続けていた。だが、最終的には菅首相が説き伏せたという。

実は、森氏が盟友である川淵三郎氏に会長職を禅譲しようとしたにもかかわらず果たせなかったのは、菅官邸による介入があったからだ。

辞任必至の状況に追い込まれた森氏が川淵氏と面会して後任を依頼した際、森氏から官邸に事前相談はなかった。報道でこの動きを知った菅首相は、激怒したという。これまで、人事を駆使して内外に自らの影響力を見せつけてきた菅首相としては当然のことだろう。

■開催に政権浮揚を託す

もちろん、これまで五輪組織委員会の人事は永田町、霞が関の「外」にあったが、そう言ってもいられない状況に菅政権は追い込まれている。

相次ぐ自民党国会議員による「政治とカネ、夜の不祥事」に加え、「コロナ対応の失敗」「菅首相長男による総務官僚の接待」などで政権の支持率は低迷。この状況で、4月25日には三つの補欠選挙(衆議院北海道2区、参議院長野選挙区、参議院広島選挙区)を迎える。自民党幹部は危機感を口にする。

「もし、三つの補欠選挙を全て落としたら、五輪前に菅降ろしが加速する。しかし、都議会議員選挙もあり政治日程がタイトなため、総裁選の前倒しは難しい。これに加えて、オリンピックの開催が不可となれば、支持率を好転させる要素がひとつもなくなる。ワクチン接種の見通しも不透明だ。そうなると、総選挙で自民党は目も当てられない状況になる可能性がある」

橋本新会長の誕生によって、官邸主導の東京五輪という体制ができあがった。早速、橋本氏は森氏を役職に就けない方針を固めた。国威発揚によって政権支持率のV字回復を狙う菅首相だが、五輪開催実現までの道のりは前途多難であることには変わりがない。

当の橋本氏は2月18日、会長就任が決まった組織委の理事会後に記者会見し、「立場が変わっても、東京大会の開催に向けて前に進めて行くには、私自身が(会長職を)受けるというのは重要だと思いまして、決断しました」と述べた。政権の思惑を背負いつつ火中の栗を拾った結果は、どう出るだろうか。(編集部・小田健司、中原一歩)

※AERA 2021年3月1日号より抜粋

小田健司,中原一歩

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