
(イラストbyただのカツオ)
今回のお悩み人「娘が生みの母を結婚式に呼びました。複雑な気持ちが消えません」
結婚20年。私は初婚で夫には連れ子がおり今年28歳になります。私と夫の間には子供ができなかったこともあり、娘のことは20年間わが子だと思って育ててきました。
その娘が結婚することになりました。お相手の男性もとてもいい方でほっと一安心、私も結婚式をとても楽しみにしていたのですが、突然の娘からの一言ですべてを台無しにされたような気持ちになりました。それは、「生んでくれたお母さんも結婚式に呼びたい。お母さんも参加したいと言っている」という一言でした。
生みの母親は、離婚後、娘との面会も数年に一度、新たな男性と結婚をしており、そちらとの間に子供もおります。娘に対して責任を果たしてきたとはとても思えません。それなのに結婚式の晴れ舞台には重要人物として出席しようという了見が私には許せません。そして、生みの母親に声をかける前に私になぜ相談してくれなかったのか、そのことにも複雑な気持ちです。夫に言ったところ、「娘が呼びたいと言っているんだから、尊重してあげなさい。数時間の式と披露宴ぐらいのことなんだから、我慢すればいい」と、私の気持ちを理解しようとしてくれません。
もちろん心が狭いと言われるような悩みであることは理解しています。それでももやもやとした気持ちが消えません。楽しみだった結婚式の日が来るのが憂鬱です。
どうしたらこの気持ちを楽にすることができるでしょうか。もしそのような神仏がいたら、ご紹介ください。
(ゆうこ 55歳)
器の大きいところを見せて、「真の称賛」を手にしましょう
ゆうこさんのお気持ちはわかります。
しかし結婚も結婚式も、する当人同士のものですから、娘さんが「生みの母を呼びたい」と希望しているのであればそれを受け入れるしかない、受け入れられないのであれば、ご自身が出席を辞退するしかないのではないでしょうか。
ところで、ゆうこさんは生みの母が結婚式に参加することの、具体的にどこが嫌だと感じるのでしょう?
自分の心を細かく覗いて考えるのもつらいかもしれませんが、「嫌」と一言で言っても、いろんな理由が考えられると思います。そこをよく見つめてみることで、「もやもや」が消えてくれる可能性があるのです。
そのヒントは、ゆうこさんがお書きになっている「娘に対して責任を果たしてきたとはとても思えません。それなのに」の部分にあると思います。
つまり、ゆうこさんは、娘さんに対して子育ての責任を果たしていると自負していらっしゃる。確かに子供を育て上げるのは並大抵の苦労ではありません。その重責をやり遂げたゆうこさんだけが、結婚式の参列者たちに母親として認められ、育て上げた功労を称賛されるべきなのに、生みの母親が参列してしまうとその手柄を彼女に横取りされたような気持ちになってしまう、そのことが「嫌だ」、ということなのではないかと思います。
確かに、今のゆうこさんにとって、結婚式の場で、生みの母がちやほやされたり、娘から「生んでくれた感謝の手紙」などを読み上げられたりしたら耐えられなさそうです。
では、どのように考えたら、ゆうこさんは楽になれるのでしょうか。
あくまでも一つの案ですが、こういう考え方をしてみてはいかがでしょうか。それは、「物事の勝ち負けや優劣は、当事者同士ではなく、第三者が決める」というものです。
まず、結婚式に生みの母と育ての母が参席していたら、周囲の人間はまず間違いなく、いろんな好奇心を持って両者を観察すると思います。特に腹の中で何かを考えるわけでもなくただ隣り合わせて黙ってぼんやりつっ立っているだけでも、周囲は「犬猿の仲」だと断じたり、いろんなストーリーを作ったりするものです。
生みの母の出席を断り、当日不参加になった場合でも、「育ての母に娘が遠慮したのだろう、かわいそうだ」とか、いろんな想像力を働かせる人たちは数多くいるのです。
昔、知人の裏社会の住人がこんなことを言っていました。「喧嘩の勝ち負けは見物人が決める」と。当事者同士の喧嘩(ゆうこさんの場合は、生みの母親に参加を断念させる)に勝ったとしても、「汚い勝ち方」とか「了見が狭い」と思われたら、それは試合に勝って勝負に負けているのと同じことです。
ゆうこさんにとって真に必要なのは、結婚式の場「だけ」気分良く過ごすことではなく、「真の称賛を得ること」だと私は思います。「血がつながらない娘を育て上げた、器の大きな母親」と周囲に認めてもらうチャンスです。器の大きな母は、娘が生みの母を呼びたいと言ったらどう振舞うでしょうか。ぜひご自身の心の底力を周囲に見せてあげてください。
今回ご紹介するのは神功皇后です。応神天皇の母としても知られる戦いの女神で、神託に従って三韓討伐を成功させたとされています。武装して朝鮮に渡った時は応神天皇をお腹に宿していたとも言われています。つまり最強の肝っ玉母ちゃんです。
もやもやが晴れないようでしたら、ゆうこさんも彼女の勝負強さ、心の強さにあやかってみてはいかがでしょうか。そして、ぜひとも本当の称賛を勝ち取ってください。
岡映里