今後10年間で、日本経済を襲う「本当にヤバい事態」...中国資本が進出し、格差はさらに拡大するか

今後10年間で、日本経済を襲う「本当にヤバい事態」...中国資本が進出し、格差はさらに拡大するか

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/04/08
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2030年までに格差はさらに広がり、ますます中国資本が進出してくる…経済アナリストの中原圭介氏は、そう分析します。これから訪れる「日本の国難」をリアルに分析した『その後の日本の国難』から、衝撃の未来予測をご紹介します。

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2030年までの日本で起こる「最悪のシナリオ」その全貌をマンガで読む!

東京五輪の損失は2兆円超え

これから起きる最悪のシナリオは、どんなふうに始まるのか? ワクチンができたとはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大が続く世界で、あくまでも可能性として「ここまであり得る」という“最悪”を考えてみます。

足元で見れば、大きく予測が狂ったオリンピックの問題があります。現在、可能性が高い海外客受け入れナシ+観客数制限などによる小規模開催の場合でも2.4兆円(関西大学名誉教授・宮本勝浩氏試算)もの損失が発生するとされ、日本経済には大きなツケが回ってくることになります。

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東京湾にある五輪のモニュメント[Photo by gettyimages]

まして中止となれば、その影響は限定的とみるアナリストはいるものの、コロナ禍がとても収束したとは言えない状況では、インバウンドの見込みは大きく狂います。新型コロナ以前の予測で建てたホテルや、各種競技開催拠点の近場で新たに開発された新築物件・商業施設などは、目標値を達成することはできなくなるでしょう。

加えて、企業経営の現場では、コロナ禍を境に、「全社員が毎日顔を揃える」という業務形態には、当面戻りそうにないことがわかってきています。国内最大手の総合化学メーカーである三菱ケミカルは、2021年4月に、現在、中央区日本橋、品川区大崎、千代田区丸の内と都内3ヵ所に分散している本社機能を、丸の内オフィスに集約すると発表しています。

また住宅資材、住設機器の最大手、LIXILグループは、2021年度に、東京23区内に分散しているグループの23拠点を、江東区の本社に集約していく方針を固めています。

こうして商業地の地価下落が始まります。テナント収益を見込んできた一部の富裕層や、銀行からの借り入れで不動産投資を行ってきた中流層にも影響は及び、不動産投資ローンの不良債権化が進んでいきます。これに伴い、地銀やメガバンクで収益悪化が表面化し、貸し渋りが発生。経済活動へ流れる資金が減少していきます。

実際には、東京圏、なかでも都心部では、まだ物件が空くと問い合わせが即入る状況が続いていて、大幅な下落は起きていませんが、後述する倒産企業数を見ると、これからの地価下落は十分に考えられる事態です。

1人700万円以上の借金を背負う

ワクチン接種が進む中でも収束させられない、COVID-19。これまで雇用調整助成金や特別定額給付金(一律10万円の給付金)などで支援策を打ち出してきた政府は、途方もなく巨大化し続ける“ワニの口”(国の単年度収支の差。「国の借金」に例えられる)をどうすることもできず、コロナに対応するため国債を発行し続けることになるでしょう。

今回のコロナショックでは、2007年のサブプライムローン危機に端を発した2008年のリーマン・ショックの際の約2倍となる、6.1兆ドル規模(約665兆円)の経済対策が世界で行われました。日本では総額約234兆円規模の対策が組まれましたが、いわゆる“真水”と呼ばれる財政出動の総額は約121兆円で、これらすべてを国債発行で賄いました。

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ニューヨークにあったリーマン・ブラザーズの本社[Photo by gettyimages]

既に日本は世界一の借金大国で、国の借金にあたる国債残高は1000兆円を超えつつあります(『その後の日本の国難』P32も参照)。2020年度末の見込み値では、国民1人あたり約723万円もの負債を背負っている状態です。

コロナショックだけが原因でバランスが崩れたものとは到底言えませんが、特別定額給付金、持続化給付金や、雇用調整助成金支給などの対策は、国のお金の「入り(歳入)」と「出(歳出)」の差を、単年度で100兆円を超えるまでに広げてしまいました。

歳出は増えるが、税収は下ブレし、「ワニの口」の拡大が止まらない状態です。今回の財政出動は必須のもので、その是非は問うまでもありませんが、結果として財政に与えるダメージは残りました。

国の社会保障や公共事業など、さまざまな政策を実現するための経費(政策経費。国債の元本返済や利払いに充てられる国債費という費目は除きます ※1)が、税収や税外収入などで賄えているかどうかを示す指標は、プライマリーバランス(PB)と呼ばれます。

家計に例えるなら、給料収入(税収等)で、ちゃんと生活費(政策経費)が賄えているかどうか、という目安で、生活費のやりくりのために借金をしている場合は、PBは赤字、ということになります。PBがゼロに近づくのが、これまで言われてきた健全な財政運営なのですが、前述の通り、いまの日本は「健康とは程遠い状況」に陥っているわけです。

もし、今回のコロナショックからほどなく、次なるパンデミックが発生するような事態に陥るなら、日本も世界も対策の財源を賄いきれなくなる可能性が高まります。

格差が広がり、「大倒産時代」へ

就任直後に、増税は「10年はない」と明言した菅義偉首相の手前、増大した国債残高をやりくりするため、社会保障費の削減と社会保険料の引き上げが待ったナシで始まり、あらゆる所得層で可処分所得の縮小が始まっています。

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菅義偉首相[Photo by gettyimages]

一方で、国の施策では持ちこたえられなくなった業種で、中小企業から順に経営破綻や人員整理が続出し、対照的に“勝ち組”の伸長が極端に目立ちはじめ、いよいよ二極化が深まっていくでしょう。

業種では飲食、宿泊などのサービス業が低迷し、DX(デジタルトランスフォーメーション。組織のデジタル変革)関連、ゲーム産業などの好調ぶりとくっきりと差がついていきますが、同じ業種のなかでもコロナ禍以降の変化にどう対応しているか、その違いによって企業ごとに勝ち組と負け組の差が生じ始めるでしょう。

東京商工リサーチによれば、2020年の全国の企業倒産件数は7773件で、過去50年間で4番目の低さとされています。しかし、これは「会社更生法に基づいて、裁判所が関わり法的に整理した件数」だけを表したものです。私的な整理や解散、経営者が夜逃げしてしまったような事例などは「倒産件数」には含まれていません。実態を把握するには、倒産件数のほかに、休廃業・解散件数をあわせて見る必要があります。

倒産の実情を示す「倒産件数+休廃業・解散件数」の合計推移では、2015年が4万6360件だったのに対して、2020年は5万7471件へと24%も増加しています(東京商工リサーチ推計)。コロナショックで痛手を受けた飲食業・小売業・宿泊業などの実質的な倒産が多く含まれていることが予想されます(図1-1)。

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図1-1 休廃業・解散件数と倒産件数の推移 2015年以降で見ると、2020年の倒産件数は最少となったが、休廃業・解散件数との合計では最も多くなっている。

一方で、巣ごもり需要で世界的なヒットとなったオンラインゲーム『あつまれ どうぶつの森』の販売元、任天堂の2021年3月期第3四半期の決算を見てみると、売上高が前年同期比37.3%増の1兆4044億6300万円、営業利益は同98.2%増の5211億800万円、経常利益は同92.9%増の5282億3000万円という圧倒的な数字を計上しています。

政府支援では止めようのない、極端で急速な二極化が進み始めます。

世界中で「超格差社会」が始まる?

既に“コロナ以前”から、所得水準を語るにあたって、日本でも「平均所得」ではなく、所得金額の「中央値」(対象となるすべてのデータを大きさの順に並べたときに、ちょうど中央にくる値のこと)が、より重要な指標となっています。

その理由は、長らく続いたアベノミクスの結果、株高により富裕層が激増し、圧倒的多数の低〜中所得者層との所得額の差が増大したからです。単純平均では実情が見えないほどの貧富の差が生じているのです。

2020年、前年の2019年からミリオネア(資産100万ドル超の層)は世界で570万人ほど増えましたが、そのうち日本は18万7000人で、米国(225万1000人)・中国(128万1000人)・スイス(24万6000人)・カナダ(20万人)に次ぐ5位を占めています(クレディ・スイス グローバル・ウェルス・レポート2020より)。

また、野村総合研究所の調査によれば、2019年の日本における超富裕層(金融資産5億円以上)は8万7000世帯(2011年比で74%増)、富裕層(金融資産1億円以上5億円未満)は124万世帯(同63%増)と増加しました。

その一方で、金融広報中央委員会の調査によれば、2019年の時点で単身世帯の38%、2人以上世帯の23.6%が貯蓄がない、いわゆる無資産層です。給与の面でも、厚生労働省の『賃金構造基本統計調査』(2019年調査2020年9月訂正)をもとにした推計では、平均賃金は約410万円なのに対して、中央値は357万円と、平均値と中央値の差は、日本でも広がり始めました。 ※2

2020年の時点で、世界に2200人ほどいるビリオネア(資産10億ドル以上の人)のうち、30%以上にあたる700人以上が住む米国では、平均賃金が5万1916ドル(約566万円。2019年の平均TTB換算 ※3)なのに対して、中央値は3万4248ドル(約373万円。同前)と、1.5倍以上の開きが生じています(数値は2019年実績値。2019年米・社会保障局)。

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4年連続でフォーブス誌の世界長者番付1位に輝いた、Amazon創設者のジェフ・ベゾス氏[Photo by gettyimages]

2012年、既に世界の格差が広がりつつあることを示した「エレファント・カーブ」は、1988年から2008年までの20年間で、先進国の高所得者層と、新興国の中所得者層が大きく所得を伸ばしている一方で、先進国の中所得者層が所得を減らしている、という現実を示して大きな注目を集めました(※4、『その後の日本の国難』P127〜参照)。

新興国中間層が、象の背中にあたる盛り上がりを、また先進国富裕層が、高く上げられた象の鼻を示すとされました。これからは、新興国、先進国、おしなべて世界の中所得者層の所得の伸びにはブレーキがかかり、更に所得を伸ばす富裕層の高まりが、コブラの頭のように見える曲線へと変わりつつあります。負け組が8割近くを占め、“中流”は消失し、日本の中央値が200万円台半ばに迫るような深刻な二極化が進んでいく可能性さえあるのです。

そして世界を動かす二大国=米中、それぞれで溜まりに溜まった民間債務が弾け飛び、破産者が続出する、というシナリオにさえ現実味があります。既に5年ほど前から、家計でも企業でも、民間債務は前記2国で過去最高を更新し続けてきました。それがこのタイミングで、本稿冒頭にあるように銀行が苦境に陥るようなことになれば、あり得ないこととは言えません。こうして世界的に決定的な超格差社会が始まるのです。

金利の変動が「最悪の事態」を招く

国の借金にたとえられる国債は、発行残高が既に1000兆円に迫っていますが(図1−2)、これだけの財政悪化にもかかわらず破綻しないのは、極端に単純化すると、それが自国通貨建ての借金であり、国の借金は、民間の黒字と考えられることによります。

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図1-2 国債発行残高の推移 2021年1月、財務省は2022年度の国債発行残高が、前年度比24.4兆円増となり、1009.1兆円となる見込みを発表した。前年の試算では、1000兆円超えは2026年度末とされていたのが、4年、前倒しになった。財務省資料より。

国の借金の総額が、民間の資金=企業の現預金(現金と預貯金)と、家計の預貯金の総和を下回っている限りは、担保されている、と考えられるからです。2020年の時点で、その差は100兆円以上。これが、半世紀以上の期間で10兆円程度しか減っていないことから、すぐには深刻な事態には至らない、とされてきたのがこれまでの状況でした。

しかし、新型コロナの感染の波が、今後も数年続くようなことがあれば、財政支出増と税収減のダブルパンチから、最悪のシナリオを引き寄せる可能性があります。

そのうえ、気候危機とパンデミック…

度重なる異常気象で誰の目にも明らかになってきた温暖化の影響が、いよいよ新たなパンデミックを招くことになります。世界は気候危機にまともに取り組まないまま、温暖化ガスの削減目標は、到底クリアされそうにありません。

加速度的に進んだ気温上昇で氷解したロシアやアルプスなどの永久凍土から、未知のウイルス感染症の報告がもたらされ、新型コロナウイルスと合わせて、新たなパンデミック対策強化が必要になります。

しかし、既に各国とも第3波、第4波のコロナ対策で、財政は逼迫し始めており、十分な予算による効果的な対策を取ることが徐々に困難になってきます。前述の通り、これまでのようなペースでの国債発行が難しくなった日本の状況も同様で、医療体制の強化は望むべくもありません。

有効なワクチンが完成する可能性もありますが、新型コロナウイルスには5000とも6000ともいわれる変異株が現れ、将来的には効果は極めて不安定で限られたものになってしまい、収束の目処は立たない状況が続くかもしれません。

収まらないパンデミックに加えて、毎年繰り返される自然災害を目の当たりにして、ようやく国は気候変動対策への取り組みに本腰を入れ始めます。ITを喧伝しても、より本質的でまさにこれから必須とされるET(Energy & Environmental Technology)を意識した取り組みをまったく行ってこなかった焦りからも、急速に温暖化対策と経済成長を共存させる仕組みづくりを進めようとはするものの、取り組もうにも、決定的な問題に直面してしまいます。

人材不足です。

ここ10年以上の間、進行してきた人口減少のペースは、コロナ禍で急激に加速し、2022年にも出生数が70万人台に落ち込む可能性さえあります。少子化や、育児環境の整備に加えて、生産年齢人口の減少などの問題解決を先延ばしにしてきたツケが回って、技術者、教育者など現場の専門職の不足がカバーできないレベルに達してしまっているのです。それなのに、これまで誰も直面したことがない予測不能な事態の集積という現実に対応しなければなりません。

求められるのはETを意識したデジタルシフトを進めながら、気候変動を抑え、なおかつ普通の生活を守る、という想像を絶する難題なのです。

最悪のシナリオを列挙すると、このように悲惨としか言いようのない状況が、この国(と世界)に訪れます。確かに、あくまで可能性として考えられる「最悪」のシナリオではありますが、どれもが、その端緒と考えられるような状況に立ち至っているのは事実なのです。

これらの国難をなるべく和らげるにはどうするべきなのか? また、たとえこれから、これらの国難がやって来たとしても、自分らしく生活していくためには、何ができるのか? 何をすべきなのか?『その後の日本の国難』では、そのヒントを探っています。

これからの日本をリアルに分析した『その後の日本の国難』冒頭部分を試し読み!

【注釈】
※1 日本以外の先進国では、プライマリーバランスは国債の利払いも含めて算出されます。日本だけがその原則を外していますが、外してもなお世界一の残高があります。
※2 『賃金構造基本統計調査』の数値から、平均値×12を平均賃金として、中位数×12を中央値としています。賞与等を含まないため、実勢よりもそれぞれ30万円程度少ない数値となります。
※3 TTBは、Telegraphic Transfer Buying Rateの略で、銀行が顧客から外貨を買い取る(顧客は売る)ときのレートを表します。銀行が顧客へ外貨を売る(顧客が買う)場合のレートは、TTS(Telegraphic Transfer Selling Rate)と表記します。
※4 2012年に、セルビア系アメリカ人の経済学者、ブランコ・ミラノヴィッチが国民1人あたりの所得の伸びを縦軸に、所得分布を横軸にとり、世界の格差を示すものとして提示しました。

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