はしかが世界各国で「驚異的」復活 コロナ禍で予防接種率が低下

はしかが世界各国で「驚異的」復活 コロナ禍で予防接種率が低下

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2023/11/20

麻疹(はしか)の復活が世界各国で懸念すべき水準となっていると、世界保健機関(WHO)と米疾病対策センター(CDC)が警鐘を鳴らしている。感染者の急増の背景にはワクチン接種率の低下がある。

先週発表されたCDCとWHOの報告書によると、昨年の世界の麻疹感染者は前年から18%増え、死者も43%増加。感染者は900万人、死者は13万6000人だったと推定されている。死者の圧倒的多数は子どもだ。

昨年、麻疹の大規模な集団発生(人口100万人当たりの感染者が20人以上)が起きた国は37カ国で、前年の22カ国から増加した。麻疹は特に子どもにとって大きな脅威だとCDCとWHOは指摘している。発展途上国などでの麻疹の発生は主に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で子どもへのワクチンの定期接種が滞ったため。麻疹だけでなく、ポリオやジフテリア、百日咳などのワクチン接種もコロナ禍により大きく後退した。

麻疹ウイルスは極めて感染力が強く、せきやくしゃみで簡単に広がる。感染者がその場を離れた後も空気中に2時間ほどウイルスが残ることがある。

麻疹に感染すると、せきや高熱、鼻水といった風邪に似た症状と、数日後に発疹が現れる。ウイルスにさらされてから1~2週間後に発症することが多い。発疹が現れる5日前から、発疹が消えて4日後までの期間にわたり、周囲にうつす可能性がある。

重症化すると死に至ることもあり、米国では麻疹にかかった人の5人に1人が入院している。重度の呼吸障害や失明、脳症など重い合併症を引き起こす可能性があり、乳幼児や妊婦は重症化するリスクが特に高い。

特別な治療法はなく、症状を和らげ、合併症を予防するために、脱水予防と解熱などの対処療法が治療の基本となる。

麻疹は、安全で効果の高いワクチンを2回接種することで予防可能だ。麻疹単独で接種することもできるが、おたふくかぜや風疹などのワクチンと混合して接種することが多い。

麻疹の発生を抑制するには、ワクチン接種率を95%まで高める必要がある。米国は2000年に麻疹の「排除」(伝播の継続が12カ月以上ない状態)を達成したが、近年はこの接種率に届いていない。

ワクチンが登場する前は、ほとんどの子どもが15歳になるまでに麻疹にかかっていた。CDCの推定によると、米国では毎年400万人が感染し、5万人近くが入院、500人が死亡。WHOによると、世界全体での麻疹の死者は毎年約260万人で、2、3年ごとに大流行を引き起こしていた。

1963年にワクチンが登場し、普及したことで状況は一変した。ワクチン接種の推進に成功した先進国などでは、数十年で麻疹がほぼ消滅。天然痘や牛疫のように、麻疹ウイルスの根絶を期待する医療専門家もいた。だがワクチン接種をためらう人が増え、接種率が低下したことで、英国やアルバニア、ギリシャなどは麻疹排除国の認定を取り消されている。

米国も最近の集団発生により、排除国認定を失う可能性がある。専門家は、ワクチンが普及し始めて以来、麻疹の存在感が薄れているため、麻疹がもたらすリスクに対して人々が無関心になっていると指摘。ワクチンを接種していない場合、麻疹ウイルスにさらされると100人中90人が感染すると考えられており、ワクチンを接種しない人が少なくても、感染拡大を防ぐ上で妨げとなると懸念を示している。

CDCのワクチン接種部門トップは「麻疹の患者と死者の増加は驚異的だが、残念ながら、ここ数年のワクチン接種率の低下を考えると、思いがけないことではない。どの国や地域社会においても、ワクチン接種が不十分であれば麻疹患者の発生はリスクとなる」と警告している。

forbes.com 原文

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