北朝鮮が五輪不参加、アテが外れた菅と二階

北朝鮮が五輪不参加、アテが外れた菅と二階

  • JBpress
  • 更新日:2021/04/08
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2018年の平昌オリンピックのアイスホッケー女子では韓国と北朝鮮の合同チームが参加した。写真は合同チームのメンバーと話をする北朝鮮の金与正・朝鮮労働党第一副部長(右)、金永南・北朝鮮最高人民会議常任委員会委員長(右から2人目)、トーマス・バッハIOC会長(右から3人目)(写真:AP/アフロ)

4月5日、北朝鮮体育省の機関紙『朝鮮体育』が、注目の記事を掲載した。タイトルは、「主体110(2021)年 朝鮮民主主義人民共和国オリンピック委員会総会開催」。全文は、以下の通りだ。

<主体110(2021)年 朝鮮民主主義人民共和国オリンピック委員会総会が、3月25日、平壌で開かれ、オリンピック委員会の委員たち、スポーツ関連部門幹部たちが参加した。オンライン方式で行われた総会では、朝鮮民主主義人民共和国オリンピック委員会が、主体109(2020)年の事業総括と、主体110(2021)年の事業の方向について討議した。朝鮮民主主義人民共和国オリンピック委員会委員長であるキム・イルグク体育相の報告に続いて討論した。

報告者と討論者たちは、朝鮮労働党第8回大会と党中央委員会第8期第2回全員会議で、朝鮮をスポーツ先進国の隊列に入れるための課業と方途とが、具体的に明らかになるような話をした。彼らは、新たな5カ年計画の期間、国際競技などでメダル獲得数を持続的に増やしながら、全国にスポーツの熱気を高潮させていかねばならないと強調した。

総会では、今年、専門スポーツ技術発展のための土台を準備し、国民スポーツ活動を活発に、組織的に進行していくにあたり、起こってくる実務的問題が討論された。朝鮮民主主義人民共和国オリンピック委員会は総会で、悪性ウイルス感染症のための世界的な保健危機の状況から選手たちを保護するため、委員たちの提議により、第32回オリンピック競技大会に、参加しないことを、討議決定した>

以上である。文面を見る限り、北朝鮮のオリンピック委員たちは、さも真剣に討論したように思えるが、これほどの国家の重大事を、一委員たちが決められるはずなど、当然ながらない。決められるのはただ一人、金正恩総書記だけである。

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東京五輪で金与正氏との会談を目論んでいた菅首相

北朝鮮がオリンピックに参加しだしたのは、1964年の冬季インスブルック大会からで、これまで夏冬合わせて19回、参加している。1988年の夏季ソウル大会は、ボイコットした。

記憶に新しいのは、3年前の冬季平昌(ピョンチャン)大会だろう。金正恩総書記の妹・金与正氏が韓国入りしたことで、その後のドナルド・トランプ大統領と金総書記との米朝首脳会談のきっかけを作った。

日本政府関係者が語る。

「菅義偉政権が狙っていたのが、まさに『平昌の再現』だった。金与正氏(宣伝扇動部副部長)を東京に招いて、拉致問題解決に向けて前進を図ろうということだ。7月に東京で、菅・金与正会談が実現すれば、菅首相の9月の自民党総裁選での再選と、総選挙での勝利が見えてくる」

だが、北朝鮮は「不参加」と、自ら宣言してしまった。それでも、菅政権はまだ諦めていないという。

「2018年2月の平昌オリンピックの時も、2017年の年末まで、北朝鮮は『不参加』と言っていた。もしも、今月16日に行われる日米首脳会談で、バイデン大統領が『アメリカも参加するので、北朝鮮も参加しよう』と呼びかけたら、北朝鮮は一転して『参加』を表明するかもしれない。

日本としては『最後の一手』として、二階俊博幹事長を、菅首相の特使で訪朝させることも考えている」

「金丸訪朝団」の再現を狙う二階幹事長

実際、二階幹事長は先月10日、日朝国交正常化推進議員連盟の役員会で、こうブチ上げている。

「結果的に無駄でも、各党の協力をいただき、訪朝を考えてみるということも。1回では駄目かもしれないが、何回も繰り返すくらいのことをしなければ。行動を起こしていかなければならない。何もしないで無為に時間を過ごしていたら、結果的には何ら効果、実績が上がっていない。皆が『拉致問題が一番大事』と言うが、言っているだけでは向こうの人には通じない」

このように、自らの訪朝に意欲満々なのである。

二階幹事長の脳裏には、1990年の「金丸訪朝団」があるのだろう。同年9月28日、北朝鮮を訪問した金丸信元副総理と田辺誠社会党副委員長(当時)が、朝鮮労働党との間で、「三党共同宣言」を発表。翌年から、日朝国交正常化交渉が始まった。

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1990年9月の「金丸訪朝団」のメンバーらと金日成氏。前列中央が金日成国家主席、その左隣が金丸信元副総理、右隣が田辺誠日本社会党副委員長(写真:Fujifotos/アフロ)

当時、「自民党のドン」と呼ばれた金丸氏と、現在の二階氏は、その立場から容貌まで、瓜二つである。もしも「二階訪朝団」によって、北朝鮮のオリンピック参加が決まれば、たしかに「2つの選挙」(9月の自民党総裁選と10月までの衆院選)を有利に進められるだろう。

だが、長年にわたって平壌に駐在経験がある中国の北朝鮮専門家に聞くと、「北朝鮮の『不参加』の意志は固い」という。

誰よりもコロナを警戒する金正恩総書記

「北朝鮮は昨年1月以来、貿易の大半を担う中国との国境さえ閉ざしている。それによって極度の経済危機に陥っているが、それでも国境を開けない。

それは金正恩総書記が、新型コロナウイルスの海外からの流入を、極端に警戒しているからだ。何せ『海からもコロナウイルスは入ってくる』と言って、漁業さえ禁止してしまったのだ。

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『ファクトで読む米中新冷戦とアフター・コロナ』(近藤大介著、講談社現代新書)

おそらく本人は、アメリカからの空爆よりも、コロナウイルスを恐れているだろう。表向きは『国内の感染者ゼロ』と宣言しているため、WHO(国際保健機関)も救いの手を差し伸べてくれない。

実際には、まともな検疫設備もない中で、昨年来、コロナは北朝鮮で蔓延している。中国が助けなければ、今後もコロナ禍は収まらないだろう。

そんな中で、金総書記にとって『東京オリンピックに参加する』などという選択肢はないのだ。参加したことで万一、選手たちが変異種のコロナウイルスを北朝鮮国内に持ち込んだら、彼らは処刑されるだろう。だから選手たちも、命懸けのオリンピックなどには行きたくない」

そんな状態では、そもそも日本からの訪問団など受け入れないだろう。結論として、北朝鮮の東京オリンピック参加は、諦めた方がよさそうだ。

近藤 大介

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