ブランドロゴ一新で売上V字回復 「MOW」を救った大リニューアルの裏側

ブランドロゴ一新で売上V字回復 「MOW」を救った大リニューアルの裏側

  • ITmedia ビジネスオンライン
  • 更新日:2016/11/30

家庭用アイス市場が好調だ。2004年ごろから伸び悩み期を脱し、年々成長。15年には4600億円を突破し、過去最高の市場規模となっている。

市場の拡大をけん引しているのは“大人需要”だ。かつて子どもが食べるものだったアイスは、今や大人のデザートとしての地位を築きつつある。おやつ、食後、風呂上がり、朝食代わりなど、さまざまなシーンで食べられるようになったほか、ちょっとしたぜいたく品として、高単価・高付加価値路線のアイスも多数登場している。

また、「冬アイス」という新しい需要も生まれた。アイス業界の繁忙期は圧倒的に夏だ。しかし、じわじわと秋冬の売り上げが広がっているのだという。冬アイスは“ごほうび”として買われることが多く、高単価の限定商品を各社が出すようになっている

元気のいいアイス業界にあって、苦戦していたブランドがある。森永乳業の「MOW(モウ)」だ。

森永乳業の商品といえば、40周年を迎えた「ピノ」や“日々のぜいたく”を打ち出した「パルム」などの商品がよく知られている。アイス業界の中でも、ピノは4位、パルムは3位という高位置についている。MOWは現在トップ20に入る健闘ぶりを見せているが、道のりは簡単ではなかった。

03年に生まれたMOW。当初は「アイス戦争勃発」と報じられるほど市場に受け入れられたが、売り上げは徐々に下がり、14年には過去最低に。しかし15年、ブランドの存続をかけて行ったリニューアルで、V字回復したのだ。MOWの歩んできた道のりと、リニューアル施策について、森永乳業冷菓マーケティンググループで「MOW」を担当する蓮沼裕二氏に聞いた。

「バニラカップアイスで強いブランドを」で生み出されたMOW。しかし……

アイスといえば、パニラ味のカップ商品を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。アイスの定番であり花形であるバニラカップアイスで、強いブランドを生み出したい――そんな思いから開発されたのがMOWだった。

当時から存在感のあったブランドは「明治エッセルスーパーカップ」(明治)や「爽」(ロッテ)で、どちらもカスタード系のバニラ味。これらの商品に対して、MOWはミルクの味をアピールした。

「目指したのは、牧場で食べるソフトクリームの濃厚さと、後味のさっぱりさ。森永乳業の強みである“乳の力”を生かしたブランドにしたいと、ブランド名も牛の鳴き声にちなみました。乳化剤と安定剤を使わず、設備を整えて製法にこだわった商品です」(蓮沼氏)

新商品「MOW ミルクバニラ」は100円というリーズナブルな価格設定もあり市場に受け入れられ、森永乳業の看板アイスの1つとなった。フレーバーを増やし、ラインアップを拡大。「ミルクいちご」などの通期フレーバーの他、数多くの期間限定商品を出していった。

09年の「クリーミーチーズ」は、当時はチーズアイス商品が珍しかったのもあり大ヒットに。期間限定商品ではいまだに打ち破られていない売り上げレコードを出した。

ブランド知名度は上がり、ラインアップも増えていったが、次第に消費者の反応は鈍っていった。13年にMOWを担当していた同冷菓マーケティンググループの宇田川史郎氏は、当時をこう振り返る。

「挽回するべく、パッケージ変更やフレーバーの味を充実させていき、ミルクの味もさらにおいしくクオリティーを上げていました。食べた時のゆったりした安らぎの気持ちとブランド感を、MOWを通じて約束している気持ちでした。しかし、あまりその変化が消費者に伝わっていなかったようです」(宇田川氏)

社内の反発も強かった大リニューアル

そして迎えた13年目。15年に、MOWは大々的なリニューアルに踏み切った。

「味もパッケージも変えました。世の中の価値観も変わっている。消費者の商品を見極める力も上がっています。MOWが価格以上においしく、消費者にとっての“いいもの”であることをアピールすると決めました」(蓮沼氏)

マダガスカル産のバニラを採用し、MOWの持ち味であるミルクをベースにしながら、バニラの味がより強く感じられるようにした。他の人気フレーバーも、生チョコとエクアドル産のカカオマスを使用した「生チョコ仕立て」や宇治抹茶を採用した「抹茶」など、さらにおいしく消費者に好まれる味づくりをしたという。

最も大きな変化はパッケージだ。10年以上使われていた丸くて可愛らしいブランドロゴを、シンプルで大人なイメージのものに刷新した。

「従来の親しみのあるものから、おいしさと品質が伝わるものにしました。大人の女性が『これは自分向けの商品だ』と思ってもらえるように。アイスの写真も、03〜12年のパッケージはソフトクリームをイメージしたもの、13年はアイスをスプーンですくっているものですが、15年は丸型のシズル感が強いものに切り替えました」(蓮沼氏)

10年以上も親しまれてきたロゴとイメージを変えるのは、かなり大胆な変化だ。社内での反発はなかったのだろうか。

「もちろんありました。でも、お客様が付いてきていないなら、思い切って生まれ変わるべき。本質価値を守りながら、それ以外は自在に対応していく必要があります」(蓮沼氏)

MOWの本質は、素材本来のおいしさ、コク、くつろぎ感にある。この“本質価値を守る”は、森永乳業の他ブランドでも同様だ。蓮沼氏はリニューアルを行った15年当時はピノのマーケティングを担当していたが、「ピノはあの独特の形が変わらないことが価値。実は味を少しずつ変えているのですが、形が変わらないことで支持していただける」という。

この15年のリニューアルで、売り上げはV字回復した。

「トライアルやリピーターも増え、売上伸長率も非常に高く勢いが出ています。まだデータは取り切れてはいないのですが、一過性のものではなく、お客様が付いてきてくれていると実感しています。『おいしくなった』という評価も得ています」(蓮沼氏)

リニューアル後は、期間限定品を定期的にリリース。16年冬は、12月12日から期間限定・コンビニエンスストア限定で「MOW イタリアンマロン」を売り出す。“イタリア産の栗粒”や“隠し味の洋酒”で、リッチ感を出したアイスだ。価格は165円(税別)とやや高価格帯で、大人の冬アイス需要を狙う。

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