「ミニスカートが性犯罪誘発」「これもセクハラ?」女性を不快にする表現がなくならないワケ

「ミニスカートが性犯罪誘発」「これもセクハラ?」女性を不快にする表現がなくならないワケ

  • サイゾーウーマン
  • 更新日:2019/02/22
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1月中旬、スクールウェアなど各種衣料の製造販売をしている菅公学生服株式会社の「防犯啓蒙ポスター」がネット上で炎上を巻き起こした。ポスターには制服姿の女子生徒の下半身がイラストで描かれ、「痴漢に気をつけて!」「自分が『カワイイ』と思った短いスカートによって性犯罪を誘発してしまいます」というメッセージが添えられていたのだが、「性犯罪は被害者にも非があると言っているようなものだ」「女性蔑視ではないか」との批判が飛び交い、同社は謝罪とともにポスターの回収を決定した。

近年このように、女性への痴漢やセクハラ防止のポスターが“ズレている”と炎上する事案が後を絶たない。また、女性の描き方が物議を呼ぶ企業CMも枚挙にいとまがない状況だ。なぜ今、女性をめぐる“表現”は問題視されるのか。今回、「メディア文化論」「ジェンダー論」を研究する、大妻女子大学准教授・田中東子先生に、最近の炎上事例の問題点を解説いただくとともに、その背景を考察してもらった。

「ミニスカート」の意味に男女間ギャップがある

――菅公学生服の防犯啓蒙ポスターが炎上しました。この騒動をどのように見ていましたか。

田中東子先生(以下、田中) 痴漢の責任の所在を、加害者から被害者にずらしているから、炎上したということでしょう。現在「りぼん」(集英社)で連載中の『さよならミニスカート』という作品があるのですが、痴漢に怯える女子生徒に対し、男子生徒が「お前らもさー変質者恐がってるくせに なんでそんなスカート短けーの?」「結局さぁー男に媚び売るために履いてんだろ?」「そんなの触られて当たり前…」と言うシーンがあります。そこですかさず主人公の女の子がキレて、「スカートはあんたらみたいな男のために履いてんじゃねえよ」とつかみかかるのです。あのポスターに怒りを覚えた女性たちの気持ちを、まさに“代弁”してますよね。

――これまでも、「性犯罪の責任を被害者に負わせるな」という声を上げる人は多かっただけに、「なぜいまだに、こうしたポスターが作られるのか」と驚く人もいました。

田中 時代時代によって、ミニスカートの意味するものは違うと思います。もともと1960年代にミニスカートが流行した際、ミニスカートは、「女性の身体所作やパフォーマンスを拘束するロングスカートからの脱却」を意味していました。女性たちが、動きやすさや活発さを手に入れ、自由にふるまえるようになる……ミニスカートの意味とは、元来そういったものであり、「エロい」「誘ってる」などというのは、男性が勝手に付与した意味なんです。

いかつい肩パットと尖ったヒールをミニスカートを合わせていたバブル期の女性のファッション も同様です。彼女たちは、男性たちを「メッシーくん」「アッシーくん」にするなど、その行為 が良かったか悪かったかは別として、女性に勢いがあり、元気な時代だったと感じるんです。 ところが一転して2000年代に入ると、ファッションが「モテ」の文脈で語られだし、ミニスカートにも「モテるため」「選ばれるため」「可愛がられるため」というような意味が強まったように感じます。不況による就職氷河期の影響もあって、「実入りのいい男に選ばれるために……」というサバイバル戦略の一つだったのかもしれませんが。

――現在はまた、女性がミニスカートに別の意味を見いだしているように思います。

田中 「モテるために」ではなく、「可愛い自分が好き」「私の可愛さは私が決める」といった自分本位の考えによってファッションを選ぶようになり、ミニスカートも「可愛い自分になるためのもの」という意味のアイテムになった印象。ただ男性側の認識が遅れていて、ミニスカートに付与されている現在の意味に、男女間でギャップが生じている気がします。

――そのギャップがめぐりめぐって、菅公学生服の防犯啓蒙ポスターを生み出したのでしょうか。

田中 大学でジェンダー教育を受けることのなかった世代が古い認識のまま偉くなり、こうしたポスターの最終決定を担う役職にいるのかなとも感じますね。それから、今回の「性犯罪の責任を加害者ではなく被害者に転嫁している」という炎上では、被害者側である女性が、加害者側である男性に何が間違っているのか説明しなくてはならない、という構図も気になりました。アメリカの文学研究者イブ・コゾフスキー・セジウィック氏が、著書『クローゼットの認識論―セクシュアリティの20世紀』(青土社)の中で、コミュニケーションや言語にまつわる権力の非対称性について指摘しています。差別する側は「差別するつもりはなかった」「差別的だと気づかなかった」などと知識の不足や無知であることを示しているにもかかわらず、そういう知識の幅の狭い側、もしくは狭いふりをする側の方が、コミュニケーションや対話の条件を決定する権力をもっているがゆえに非難されることがなくなり、反対に、差別される側に「なぜ差別なのか」を説明する義務、それに伴う学習が発生している。このこと自体が差別する側と差別される側との間の対等ではない関係を示しているのではないか……ということです。これは、男子学生を擁する共学の大学より、女子大の方がジェンダー教育に熱心であることにも通じていて、なぜ被害に遭う女性側が一生懸命勉強をして知識を蓄え、加害者である男性側が勉強をしないで無知なままでいるのかと、学生間での性犯罪や性暴力のニュースを見るたびに不満を覚えますね。

――防犯啓蒙ポスターの炎上は、まさに「弱い立場の人が説明をする」という構図でした。

田中 「『ミニスカートをはいてると痴漢されますよ』と言うこと自体が間違っている」、そこまで説明しなければいけないのは正直言って面倒くさいですし、やはりまだまだ日本は男性優位の社会で、女性が弱い立場に置かれていると実感させられます。

――昨年11月には、俳優・東幹久さんが起用された内閣府の「セクハラ防止啓発ポスター」が炎上しました。「痩せてきれいになったんじゃない?」「今日の服かわいいね。俺、好みだな」といった言葉に不快感を示す女性のイラストとともに、困り顔の東さんの顔写真が掲載され、大きく「これもセクハラ?」というメッセージが掲載されています。「セクハラする男性側の『これじゃ何も言えない』『俺が悪いの?』という声が聞こえる」「セクハラを軽く扱いすぎている」などの批判が飛び交いました。

田中 このポスターが炎上した理由の一つとして、東さんが“表現力のある優秀な俳優である”ことが挙げられると私は思っています。東さんの表情について「俺が悪いの?」といっているように見えるとの指摘がありましたが、彼はこれまで、女性を狙うギラギラした役を演じる機会が多かったような印象があり、そういった役のイメージを、写真1枚で見る人に想起させてしまったのではないかな……と。このポスターは、見る人が“ここに描かれていない意味”を読み取れてしまうつくりになっているように思うんです。

もちろん、ポスターのつくり自体にも問題はあります。「これもセクハラ?」の文字が大きすぎて、「セクハラを決めるのは、あなたではない!」というその下のメッセージがあまり目立たない。それから、東さんが「これもセクハラ?」と発言しているように見えてしまうデザインも、加害者を擁護していると誤解されてしまう原因になってしまったのではないでしょうか。例えば、「これもセクハラ?」を「これもセクハラ!」に変えて、「セクハラを決めるのは、あなたではない!」というメッセージを添えていたなら、炎上しなかったのかなと思いますね。

――「?」(クエスチョンマーク)を「!」(エクスクラメーションマーク)に変えるだけで、かなり印象が違います。

田中 「これもセクハラ!」にすると、東さんではなく、セクハラを受けた女性側の台詞という印象になるんです。「?」を選んでしまった時点で、このポスターは男性に寄り添いすぎているんですよね。だからこそ、「?」をつけてしまったのかもしれません。

――男性側に対する過剰な配慮を感じるというか、一種の甘やかしではないかとさえ思ってしまいます。

田中 「男性に甘い」風潮と言うと、日本の男の子は、とにかくお母さんから甘やかされている傾向がありますよね。娘には家事の手伝いをさせるけど、息子にはさせないといったお母さんは結構いて、そこが「男性に甘い」の根っこになっているような気がします。ただし最近は、娘にも息子にも平等に手伝わせているという家庭が増えているとは聞いています。特に共働き家庭なのに夫が家事をしないことに不満を抱き、「この悪の連鎖を断ち切る!」との思いで、息子にもしっかり手伝いをさせるという人もいるそうです。これからは“子どもの性別問わず”という育て方が重要になると感じています。

(後編につづく)

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