「座れる通勤列車」急増。鉄道会社の真の狙いは?

「座れる通勤列車」急増。鉄道会社の真の狙いは?

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2017/12/06
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東横線区間を走る西武鉄道の「S-TRAIN」 写真/HAYABUSA / PIXTA(ピクスタ)

ここ数年、大手私鉄で急増している「座れる通勤列車」。数百円の特急料金を払えば指定席に座れるというサービスで、11月20日には西武鉄道が西武新宿~拝島間で有料座席指定列車「拝島ライナー」を運行(‘18年春から)すると発表した。実際に利用している路線以外では、なかなか増えていることが実感しにくいが、首都圏を走る「座れる通勤列車」は、かなりの数になっている。

◆通勤とレジャー、両方に対応する車両も

西武鉄道では今年3月より、「S-TRAIN」が運行を開始。平日は有楽町線直通で所沢~豊洲間、土休日は副都心・東横線直通で西武秩父~元町・中華街間を走っており、平日は通勤、休日はレジャー・観光路線の色が強い。

東武鉄道では‘08年より、東上線の通勤ライナー「TJライナー」が登場。森林公園~池袋間で運行されている、首都圏着席サービス列車のパイオニアとも言うべき存在だ。また、同じ東武鉄道では今春より、浅草~春日部間を結ぶ「スカイツリーライナー」、春日部から先は東武アーバンパークライン(野田線)に入って大宮へと向かう「アーバンパークライナー」も運行中。新型特急車両500系(リバティ)が投入された。

京急電鉄は上大岡~品川間をノンストップで走る「ウィング号」(朝はモーニングウィング号)を運行中。京成電鉄では、‘80年代から伝統的な通勤ライナー「イブニングライナー」「モーニングライナー」が運転されてきた。現在は成田空港行き「特急スカイライナー」に使われるAE形車両を用いて、朝夕に京成本線経由で上野~日暮里~成田空港を結んでいる。「スカイライナー」は成田スカイアクセス線(北総線)経由で、空港輸送に特化しているのに対して、こちらは本線を通り、通勤列車色が強い。

小田急電鉄では、ロマンスカーの朝時間帯増発に伴って「モーニングウェイ号」「メトロモーニングウェイ号」が誕生。もともと終戦直後に小田原までのノンストップ特急「ロマンスカー」が登場していたが、‘80年代後半からは通勤需要にも対応するようになった。‘00年にはニュータウンのある多摩線直通特急「ホームウェイ」、さらに‘05年からは東京メトロ千代田線への特急乗り入れも開始して、「メトロホームウェイ」として北千住まで運転。来年3月からは朝時間帯にも登場する予定だ。

京王電鉄は新型車両5000系を用いての全車指定列車を来年春から運転予定。ダイヤの詳細などはまだ不明だが、車両自体はすでに運転している。「TJライナー」(東武鉄道)や「S-TRAIN」(西武鉄道)と同様にロングシートからクロスシートに変更できる仕様で、通常時はロングシート、座席指定時にはクロスシートへと様変わり。通勤色が強くなりそうだが、高尾山へのレジャー輸送など、多様な利用法が考えられる。

◆全席コンセント完備、空気清浄機付きの車両も

このように続々と登場している「座れる通勤列車」だが、その歴史は意外と古い。鉄道ライターの鼠入昌史氏に話を聞いた。

「通勤時間帯の着席サービス列車は、‘84年に国鉄が東北本線に走らせた『ホームライナー大宮』が最初とされています。回送の特急列車を流用したもので、それが人気となったおかげで多くの路線で運転されるようになり、私鉄にも広がっていったという見方が正確でしょう。JRのグリーン車も、着席補償こそないものの、快適通勤のサービスに近い部類です。なぜ今になってこれだけ注目されているかというと、これまでやっていなかったところが始めたという部分が大きいのだと思います」

新しいサービスの開始に合わせて、新型車両が導入されていることも、話題になっている理由のひとつ。鉄道会社にとっての「顔」である車両は、ブランドイメージの刷新には最適な存在だ。

では、なぜ各社はこぞって「座れる通勤列車」を取り入れているのか? 鼠入氏はその狙いを次のように分析する。

「当然ですが、まずは快適性の向上です。より乗客に選んでもらえるよう、いかに付加価値を出せるか。最近ではただ着席できるだけでなく、全席コンセント完備、空気清浄機付きの車両なども誕生しています。また、こうした形の通勤列車は観光にも繋げやすい。例えば西武秩父や本川越方面へ向かう西武鉄道の特急『レッドアロー号』です。新幹線のようなクロスシートは、通常の車両のようなロングシートより非日常感が出るので、旅行気分を演出するのにも役立ちます」

◆未来の沿線人口確保への切り札に

多少お金を払ってでも、ゆったり座りたいという乗客の確保、観光への応用といった短期的な効果だけではなく、より長期的なプランも見え隠れする。

「全国的に人口が減少するなか、いかに乗客を確保するかは大きな課題です。ターゲットはこれから郊外に家を買う現役世代。子供がいるとなれば、育っていくうえで自然と沿線に親しみが湧きますし、大きくなったときに次の世代が同じ沿線に住む可能性も高まります。つまり、沿線価値の向上は未来の沿線人口の確保に繋がる。10年、20年先を見据えた戦略なんです」

鼠入氏によれば、「座れる通勤列車」も乗車率はまちまち。新サービスそのもので乗客を増やすというよりは、選択肢を増やすことで、路線全体の魅力を高める効果が期待されているのだ。こうした動きは首都圏だけではなく、関西圏でも見られる。

「例えば、関西国際空港行きの特急『ラピート』を運行する南海電鉄では、なんば~和歌山市間にも特急『サザン』を走らせています。こちらは普通車では特別料金不要、指定席のみ有料という通勤ライナー色の強いもの。南海高野線では泉北高速鉄道に直通する『泉北ライナー』が登場するなど、東京と同じ動きが見られます。さらにこれまで特別料金が不要だった京阪特急にも『プレミアムカー』が導入されました。こちらは1両だけ特別仕様で、専用のアテンダントもついている。付加価値をつけようという動きの代表例と言えるでしょう」

全国に広がる「座れる通勤列車」導入の流れ。混雑緩和や乗車率アップといった効果をイメージしがちだが、その真の効果は未来の沿線人口の数に現れるだろう。

<取材・文/林泰人>

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